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【解説】PS5は11月に世界同時期発売 価格は400ドル&4万円切る 次の焦点は出荷数と転売対策

河村鳴紘サブカル専門ライター
ソニーの新型ゲーム機「プレイステーション5」=SIE提供

 ソニーの新型ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」の価格がついに発表されました。ディスクドライブを装備した「スタンダードモデル」が4万9980円(約499ドル、約499ユーロ)、ディスクドライブがない「デジタル・エディション」は3万9980円(約399ドル、約399ユーロ)です。発売日は日本や米国が11月12日、欧州は11月19日で、世界同時期発売となります。ポイントを解説します。

◇価格は“合格”

 最大の注目だったデジタル・エディションの価格は、4万円、400ドルを切り、事前にメディアやアナリストが予想した通りでした。理由は、PS4など400ドルを切ったPSシリーズの据え置き型ゲーム機は、ことごとく1億台を突破しており、普及の“分岐点”になったからです。PS5をPS4と同様に普及させるには、コアユーザー以外のゲームファンに、相応の金額を積んで本体を買ってもらう必要があります。今は無料でも質の高いゲームが遊べるご時世ですから、高性能のゲーム機とはいえども価格の安さは重要です。そう考えると“合格”でしょう。

 安いデジタル・エディションは、パッケージソフトに対応していませんが、新型コロナウイルスの感染拡大が“追い風”になっています。ゲーム各社の決算で明らかになっている通り、全ソフトにおけるダウンロードの販売率は5割以上になっています。デジタル・エディションが売れる土壌はそろっています。

 ただし、PS5にも死角はあります。ライバルのマイクロソフト(MS)が、299ドルの“格安”ゲーム機「Xbox Series S(Xbox SS)」を出したからです。Xbox SSは、MSの新型ゲーム機「Xbox Series X(Xbox SX)」の廉価版です。

 関係者やコアなゲームファンから見ると、性能面で劣るXbox SSは、PS5と同格の商品ではありません。しかし、大多数の消費者が、値段相応のゲーム機の性能の差を実感できなければ、Xbox SSを「お得な新型ゲーム機」とみなして、ゲーム市場の主戦場である欧米でヒットする可能性はゼロではありません。

 日本では、Xboxシリーズのブランディングがうまくいかず、販売は苦戦傾向にあります。しかし、欧米では支持されており、消費者がどう反応するのか注目です。

◇世界同時期発売は自信の表れか

 もう一つのポイントは、発売日が、今年11月の世界同時期発売だったことです。同時期発売の発表は、価格以上に世界のゲームファンには喜ばれたのではないでしょうか。そして今後の焦点は、前評判の高いPS5が慢性的に売り切れにならないか……ということです。

 なおPS4の発売日ですが、北米は2013年11月15日、欧州は11月29日、日本は2014年2月22日でした。初年度の出荷数は、計画の500万台を上回る760万台を出しましたが、欧米では売れて品不足になりました。

 話をPS5に戻します。もう少し詳しく言えば、PS5が品不足にならないかと同時に、転売の危機にさらされないか……です。同時期発売をするのは、まとまった台数を供給できるというソニーの自信の表れでしょう。しかし、任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」が転売の犠牲になっていることからも、何かの策があるのかも含めて、気になるところです。個人的には「初回の出荷台数がそろわなければ、日本などの発売は、年明けもあり得る」と見ていましたので、十分な台数の確保と転売対策の両輪があってこその世界同時期発売でしょう。

 ただしPSシリーズのゲーム機は発売開始直後、品不足になるのが普通で、普及に苦戦したとされるPS3でも“完売”しました。そこは仕方のないところでしょうが……。ともあれ、来年春に発表される決算発表で、驚くような出荷台数が出るのかもしれません。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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