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「あつ森」35年ぶり快挙?「スーパーマリオ」の売り上げ記録日本一を抜けるか

河村鳴紘サブカル専門ライター
任天堂のゲーム「あつまれ どうぶつの森」(c)2020 Nintendo

 大ヒットして社会現象になり、いまだに売れ続けている任天堂の人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」(ニンテンドースイッチ)ですが、「スーパーマリオブラザーズ」(ファミコン)の打ち立てた日本国内の最高出荷数「681万本」を更新する可能性があることはご存じでしょうか。

◇35年破られないスーパーマリオの記録

 ゲーム業界団体「コンピュータエンターテインメント協会(CESA)」が年1回発行する書籍「CESAゲーム白書」に「国内歴代ミリオン出荷タイトル」というデータがあります。任天堂の家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」が発売された1983年から2019年までのゲームソフトを対象にしており、CESAがゲーム会社からデータ提供を受けて作成しています。ダウンロード版も含んだ数で、ハードが違うと別カウントになります。100万本以上のソフトがずらりと並んでおり、なかなか壮観です。

 トップに輝くのは「スーパーマリオブラザーズ」(ファミコン、1985年)の681万本です。実に34年間首位を死守していることになります。

 2位は「Newスーパーマリオブラザーズ」(DS、2006年)の649万本で、「マリオ」のワン・ツー・フィニッシュです。3位は「妖怪ウォッチ2 元祖/本家/真打」(3DS、2014年)の610万本です。4位は2作品あって「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」(DS、2006年)と「とびだせ どうぶつの森」(3DS、2012年)の各585万本です。

 ちなみに「モンスターハンター」シリーズの最高順位は「モンスターハンターポータブル 3rd」(PSP、2010年)の10位で490万本、「ドラゴンクエスト」シリーズは「ドラゴンクエスト9」(DS、2009年)の13位で440万本、「ファイナルファンタジー」シリーズは「ファイナルファンタジー7」(PS、1997年)の18位で410万本になります。

◇「あつ森」パッケージ販売数だけで500万本突破

 さて、今年3月に発売された「あつ森」(スイッチ)についてです。同作は、5月7日に発表された任天堂2020年3月期連結決算で、国内出荷数がたった2週間足らずで384万本だったことが判明しています。同時に「あつ森」の売れ行きは爆発的で、3DS版(とびだせ どうぶつの森)の累計数に、発売日からゴールデンウィーク直前までのわずか6週間で達したことも明かされています。

【参考】「あつ森」6週間で世界販売数1341万本 “化け物”級の売れ行き!

 決算の後、任天堂は「あつ森」の累計出荷数を発表していません。そこで参考として、ゲーム雑誌「ファミ通」の販売データを見てみます。「あつ森」のパッケージ版のみの日本国内累計販売数は6月28日時点で約500万本。7月26日時点では、約528万本と順調に積み増しており、いまだに売れ続けていることが分かります。

 販売数は「店で売れた数」を意味し、出荷数は「店に並んだ数」を指しますから、「販売数<出荷数」となるわけで上ぶれするのです。そこにダウンロード数を加えると、600万本に届いているかもしれません。そこまでくれば681万本は意識しますし、さらに前人未踏の700万本も見えます。もしかして、ゲーム史に残る快挙を見ることができるかもしれません。

上半期ソフトランキング1位は、『あつまれ どうぶつの森』で、500.5万本を販売。本作は、Nintendo Switch向けタイトル歴代最高の販売本数を更新し、10年ぶりにパッケージ版単独で累計500万本を達成している。

(筆者注:2010年発売の『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』以来)

出典:【参考】2020年上半期の国内家庭用ゲーム市場は1748.1億円。ハード・ソフト市場ともに前年比増で2012年以降最大の規模に。500万本突破の『あつ森』などが牽引(ファミ通)

◇緊急事態宣言解除後も「プレー時間増えた」4割超

 「あつ森」はどの層が買い、どのような遊ばれ方をしているのでしょうか。動向について、ネットリサーチ会社のTesTee(テスティー)が、10代、20代、30代の男女5212人を対象に、5月5日~7日に調査した結果を発表しています。

 調査でゲーム機を所有する率は、10代は8割を超えますが、20代は58.7%、30代は54.0%と一気に減ります。ただしゲーム所有者の「あつ森」の認知率はいずれも9割前後です。そしてソフトの所有者率は、10代が32.4%、20代が36.7%、30代が26.0%となります。男女比は意外かもしれませんが、女性優位ではなく、男女ほぼ同じ傾向にあります。

 そして、新型コロナウイルスの感染拡大を受けての、緊急事態宣言発令中と解除された現在のプレー時間の変化を尋ねると、「発令中より解除後が増えた」と答えた人が、10代と20代のいずれも46.6%、30代が43.4%でした。解除後も不要不急の外出を控えることが推奨されているからでしょうか。言い換えると、人気が持続しているのですね。ファミ通の販売データで、数字がいまだに伸びているのも納得できます。

【参考】「あつまれ どうぶつの森」に関する調査【10~30代対象】

◇記録達成なるか すべて追い風に

 「あつ森」の快進撃の理由は、性別年齢問わずどの層にもフィットする間口の広さはもちろんですが、新型コロナウイルスの感染拡大によって在宅した人が増え「巣ごもり需要」が追い風になったこと。さらに、島を本格的に作るためには1人でソフトを1本持つ必要のある仕様になっているからでしょう。私も最初は家族で1本でしたが、「自分だけの島を作りたい」という家族の要望(抗議)に抵抗できず、ゲーム機とソフトを購入させられました。似た状況の家庭もあるのではないでしょうか。

 また世界のファッションブランドや美術館が、コーデや絵画データを提供するなどの話題性もありました。これらは、普段はゲームをしない人の興味を引いたでしょう。定期的なバージョンアップもあるので、中古市場に流れづらいでしょうし、結果として出荷数増加に貢献しているでしょう。何から何まで追い風になっている状況です。

 現在のゲーム市場は、原則無料で気軽に遊べるスマホゲームがメインであることは間違いありません。その逆境下で見せた「あつ森」の大ヒットに、任天堂の底力を改めて見せつけられた気がします。

 8月6日、任天堂の2021年3月期の第1四半期決算があります。そこで「あつ森」の国内出荷数の発表があるでしょうから、どんな数字が出るかですね。もし今年の年末までに国内の累計出荷数が「681万本」を超えれば、来年の「CESAゲーム白書」の「国内歴代ミリオン出荷タイトル」で1位のゲームの名前が替わるわけです。「スーパーマリオ」の記録はそう簡単に届くものでありませんが、可能性だけでも非常に楽しみです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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