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「麒麟がくる」の明智光秀ってどんな人物? 「信長の野望」ではスーパー武将の側面も

河村鳴紘サブカル専門ライター
「信長の野望・大志」に登場する明智光秀

 NHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」で、主君・織田信長を殺した裏切者として知られる明智光秀を俳優の長谷川博己さんが熱演しています。平均視聴率は一時期13%台に落ち込みましたが、持ち直しの兆しもあり、染谷将太さんが演じる織田信長や、岩田琉聖さんの竹千代の迫真の演技もネットで話題になっています。濃い登場人物に挟まれ、(今のところ)「普通の人」に見える光秀ですが、実際はどんな人物なの?と興味を持つのではないでしょうか。人気ゲーム「信長の野望」のデータをひもときながら、秀吉以上の出世街道を走った光秀の人となりを紹介したいと思います。

 ◇ゲームの評価は抜群 秀吉と双璧

 光秀のイメージをつかむため、30年以上続いているコーエーテクモゲームスの人気ゲームで、シリーズ最新作「信長の野望・大志」のデータを見てみましょう。

 武将の主要能力は、兵の士気を高める「統率」、兵の攻撃力を意味する「武勇」、防御力の「知略」、内政能力「内政」、外交交渉能力「外交」の5項目があります。それぞれ最低1から最大100の数字で評価されています。

 約2000人の全武将の総合計値(最大値500)のトップは、北条早雲の477、続いて織田信長の462、武田信玄の460、そして光秀と豊臣秀吉が459で並びます。何と天下を取った秀吉と同等、徳川家康(457)より評価が上なのです。要するに光秀は、三英傑(信長、秀吉、家康)並みと評価されるスーパー武将なのです。本木雅弘さんが演じる斎藤道三もドラマではインパクト抜群で、戦国時代を代表する武将の一人ですが、光秀はその道三よりもデータでは格上です。

 ちなみに秀吉と各能力のデータを比べると、二人ともよく似ているのです。光秀も秀吉もよく戦い、領国をしっかり統治したから当然なのですが、有能ぶりが伝わると思います。

光秀(統率95、武勇85、知略94、内政92、外交93)

秀吉(統率95、武勇80、知略97、内政95、外交92)

 また光秀の個性(特殊能力)は「鉄砲配備」「利水上手」「民政家」「名奏者」「築城名人」となります。大河を見て納得できる部分もあるのではないでしょうか。

 ◇謎の多い光秀 外様ながら織田家のトップクラスに

 本能寺の変を起こし、主君・織田信長を裏切った男のため、ダークなイメージがつきまとう光秀ですが、人生の前半は謎に包まれています。歴史百科事典の「国史大辞典」(吉川弘文館)によると、出生年は不明で、「美濃の名門・土岐氏の庶流」とされながらも、素性は明らかでないと書かれています。「朝倉家に仕えたらしい」「足利義昭の家臣であるとともに信長に仕えたらしい」と、推測の説明が多いのです。ただし、義昭や公家との交渉に当たったことから、朝廷の事情にも明るく、相応の能力を持っていたことは確かです。

 記録に残る光秀の活躍はすさまじいものがあります。1571年に近江滋賀郡を与えられ、1572年に惟任(これとう)氏の名字をもらい、日向守に任じられています。信長が最もてこずった石山本願寺との戦いに参加するなど各地を転戦しながら、1576年に丹波(今の京都府北部)を統一し、信長から同国の支配を認められました。

 戦国時代は腕一本で出世できるイメージがありますが、特に重臣クラスになると家柄も重要です。身元の怪しい他国者は裏切るイメージがあるのでしょう。昔ながらの家来の方が大事にされるのが当たり前、出世したらしたで同僚の妬みもあったので(ある意味現代と同じ)、外様の光秀が国持ちになるほどの出世ぶりは異様です。信長の重臣・柴田勝家、一兵卒から出世街道を突き進んだ秀吉並み、いやそれ以上の厚遇ぶりです。信長は現代社会も真っ青なほどの実力至上主義で、働きが足りない家臣は古参でも平気で追放しました。つまり光秀への評価は抜群に高く、それが高額のギャラとして反映されていたわけです。

 しかし、光秀はそんな信長を裏切り、本能寺の変を起こすわけです。「国史大辞典」でも、信長への恨み、秀吉との対立、保身、政権奪取の野心など、さまざまな説が唱えられていますが、どの説も決定打がなく、一方で否定する根拠もなく、同書は「光秀の反逆の真意は今のところ不詳というほかない」と締めています。日本史最大の謎の一つと言ってもいいでしょう。ここをどう描くか「麒麟がくる」最大の見どころといえるかもしれません。

 ◇光秀=天海説 光秀の異色のマンガも

 光秀の話をすると、歴史好きであれば、天海という名前が出てくるはずです。天海は、江戸時代前期に活躍した天台宗の僧で、徳川家康の知恵袋として活躍したといわれています。光秀の死後に入れ替わるように登場し、江戸幕府に光秀とのかかわりを思わせる逸話があることから、光秀=天海説がありますね。客観的に見ればフィクション(空想)ですが、後世のクリエーターの創作意欲を刺激していることは確かなようです。

 また独自の視点では「信長を殺した男」(秋田書店)というマンガがあります。光秀の末裔(まつえい)という明智憲三郎さんの原作で、本能寺の変を違う側面から見た内容です。ある程度この時代に通じてないと少し難しいかもしれませんが、ゾクゾクして読めると思います。

秋田書店「信長を殺した男」試し読みページあり

 大河を見るとき、ゲームのデータや、半生が分からないミステリアスなことを知っておくと、違う側面から楽しめると思います。くせのある人物に振り回される光秀ですが、主人公にふさわしく、彼もくせがあり、かつミステリアスな人物なのですよね。物語も後半になったら、信長、秀吉、家康の迫力に負けない長谷川さんの怪演が見られるかもしれませんね。

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サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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