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スペイン戦の勝利につなげた影の転換点。守田英正に聞いた”谷口フォアチェック”の真相。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

カタールW杯の3試合目、スペイン戦で”森保ジャパン”は見事な逆転勝利。E組の首位でノックアウトステージ進出を果たしました。

前半を1失点で耐えて、後半のハイプレスと果敢なラッシュから2ゴールを奪って、終盤を粘り強くクロージングするという流れに導いたのは森保一監督の手腕が見事でしたが、実は非常に危険な状況を乗り切る”ファインプレー”がありました。

左センターバックの谷口彰悟によるフォアチェックです。筆者は試合前に「三笘、久保など。スペイン撃破でカタールW杯16強へ!”森保ジャパン”3試合目のキーマン5人」という展望記事を書きましたが、谷口の名前を入れていませんでした。もともとコスタリカ戦でのスタメンを予想しており、そこでも出番の無かった谷口を森保監督が、ここで抜擢するとは想定できていなかったからです。

立ち上がりは中央の吉田麻也と対応が被ってしまうなど、W杯デビュー戦で不安なところもありましたが、徐々に慣れて90分を通してのパフォーマンスは非常によく、勝利を支えた一人であることは間違いないと思います。その谷口が非常に効いていたのが、最終ラインから前に出て、中盤のガビをチェックするプレーでした。

しかし、立ち上がりはこの動きをしておらず、ガビを起点にしたところから二次攻撃で、アスピリクエタのクロスをFWモラタに合わされる形で、前半11分に失点してしまいます。谷口が流れに応じて中盤のガビをチェックするようになったのはその後からです。

メカニズムを説明すると、日本は5ー4ー1のような形で、スペインの中盤3枚に対して田中碧と守田英正の2枚に両ワイドの久保建英と鎌田大地がハーフポジションでアウトとインを柔軟に見る形でした。しかし、スペインの揺さぶりに対して久保と鎌田はなかなかインの守備には参加できずに、そこで田中がペドリ、守田がアンカーのブスケッツに行くと、ガビが浮いた状態になってしまいます。そこをケアしたのが谷口でした。

右の板倉滉の側でも必要に応じてやっていましたが、主には田中がペドリ、守田がブスケッツに付くことが多い中で、谷口がガビをチェックしたことは前半を最小失点で乗り切れた大きな要因だと思い、谷口がフォアチェックするようになった理由を守田英正に聞きました。

ーー前半の途中から谷口選手がガビを止めたり、右側で板倉がペドリに行ったりというのは、最初からのプランだったのか。相手を見て途中でCBに伝えた?

「言いました。左で特にガビが嫌なポジションをとってきて。アスピリクエタにボールがあまりいかなかったんですけど、行った時は彼もハマるようなボールの置き所はしなかったので、どうしてもかい潜られてしまった」

「僕がプラスワンで斜めのガビを見たり、奥のモラタのところを消していたんですけど、どうしてもブスケツに手が届かなくて。なのでアスピリクエタには(鎌田)大地で、ガビには(谷口)彰悟さんで、(長友)佑都さんにはウインガーの選手(ニコ・ウィリアムズ)についてもらった」

ーーあれが前半の鍵を握っていたように思う。すごく良い対応だったと思います。

「僕も結果的には良かったと思います。何回か奪えましたし、それがショートカウンターに変わって、なかなか最後のシュートまで持っていけなかったですけど、かっさらい方などうまく何回かできたので。それは良かったと思います」

森保監督は細かい対応を選手の個人戦術やコミュニケーションに任せるところが多々あり、約束事が足りないと指摘されることもあります。しかし、戦術が固まっていると、良くも悪くもこうした状況で柔軟に対応できなかったり、監督の指示待ちになってしまう。賛否両論ありますが、選手間である程度、解決を図れるマネージメントをしてきたのは”森保ジャパン”の特徴であり、ここではそれが生かされたと思います。それにしても守田のナイス判断と発信、そして谷口の対応力でした。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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