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ジョエルに続け!Jリーグからカタール後の代表入りが期待される”ネクスト・ジャパン7”

河治良幸スポーツジャーナリスト

日本が優勝したEAFF E-1選手権は多くのフレッシュな選手が活躍した中で、特別な輝きを放ったのが横浜F・マリノスの藤田譲瑠チマだ。

パリ五輪世代の20歳ながら、来月予定される欧州遠征、さらに26人と見込まれるカタールW杯の最終メンバーに滑り込む可能性も出てきている。

しかしながら、9月の活動が欧州組が主体になることを考えれば、おそらく今回のE-1選手権に選ばれなかった”国内組”は酒井宏樹や大迫勇也などの”W杯経験組”を除けば、カタール行きはほぼノーチャンスと言っていい。

今回は少し先の話になるが、カタールW後の日本代表で有力候補になりうるJリーガーを7人ピックアップした。現時点での完成度より個性と筆者なりに感じる伸びしろを重視。なおE-1選手権を含むA代表の経験者は対象外としている。

長沼洋一(サガン鳥栖)

広島ではなかなか出番がないまま、愛媛時代の恩師である川井健太監督が率いる鳥栖に移籍。いきなり清水戦でスタメン起用されて、鮮やかなゴールを決めた。指揮官をして「槍と鞭(むち)を持つ」と評価されるように、鋭い仕掛けから高速クロスを放ったかと思えば、柔らかいボールキープからチャンスの起点にも。左にアンダー代表の同期だった日本代表の岩崎悠人がいるのも頼もしく、切磋琢磨しながら日本を代表する両翼になっていく期待も。

森岡陸(ジュビロ磐田)

ここまで出場機会はそれほど多くないが、湘南戦で町野修斗を抑えたように、相手のエース級を封じる対人戦の高さはJリーグ屈指のものがある。ビルドアップや展開力にも成長が見られる森岡の課題は周りを動かす統率力や、ちょっとしたポジショニングで相手の行動を制限するうまさ。そこは経験のある周りの選手たちに厳しく言われているようだが、類まれな身体能力を大事にしながら、守備のエキスパートに成長していけば、日の丸も見えてくる。

山原怜音(清水エスパルス)

右利きの左サイドバックだが、鋭いドリブル突破からの左足クロスを得意としており、一発で局面をガラリと変えるサイドチェンジや強烈なミドルシュートなど、Jリーグではすでに規格外の輝きを放っている。まだ活躍が流れに左右されるところがあり、押し込まれた時間帯の守備に軽さが見られるところは課題だが、十分に克服していける要素だ。少し先を見越した新体制であれば、来春にいきなりの代表招集があってもおかしくない。

田中聡(湘南ベルマーレ)

アカデミーの大先輩である”遠藤航の正統後継者”として期待されるタレントだ。中盤でボールを奪う能力の高さは特筆に値する。現在は3ー5ー2のアンカーを担うが、カウンターから前に出ていく推進力も売りで、左足のキック力も魅力だ。現時点では持っている才能の半分も出し切れていない印象。本人も自覚する通り、同期のライバルであるジョエルにも負けない評価を得るには、中盤からでもゴールやアシストなど、目に見える結果につながるプレーが求められる。

松木玖生(FC東京)

アルベル監督のもとで、高卒ルーキーにして中盤の主力で起用され続けている。そのベースになっているのが、非凡な身体的な強さはもちろん、継続して起用しても消耗しない持久力だ。左足のパンチ力は目を見張るが、安定感という基準ではまだまだ物足りなさはある。それでも自己分析を怠らず、試合ごとにアップデートを重ねていることが、攻守のポジショニングに表れているようだ。”飛び級”でU−23アジアカップに参加したが、主力のジョエルなどより序列は1つ下にいたことは否めない。しかし、U−20W杯の出場資格もあることから、山根陸(横浜 F・マリノス)などと切磋琢磨しながら、パリ五輪より前にA代表まで駆け上がってきて欲しいタレントだ。

藤井智也(サンフレッチェ広島)

正直、E−1選手権のメンバー発表を見たときに、入っていなくて一番ガッカリした選手だ。あれだけ広島勢がいる中で、なぜ彼がいないのか。スピードはJリーグ全体でも1、2を争うレベルで、90分アップダウンできる。特に攻守の切り替わりで相手の先手を取れるのは強みだ。器用さという部分ではもう少し付けて欲しいが、国際基準でも相手のディフェンスもオフェンスも嫌がる選手だろう。”ネクスト・ジャパン”で有力候補になってくるにはアシストが必要になってくるかもしれない。

佐々木雅士(柏レイソル)

今最も旬なJリーガーではないだろうか。リーグ戦で3試合クリーンシートを続け、柏の新守護神として認められつつあるが、もともと勝ち取ったポジションではない。韓国代表GKキム・スンギュの海外移籍を受けて、佐々木にチャンスが転がり込んできたのだ。これまで期限付き移籍という道を選ばず、高き壁に挑み続ける姿勢を示していた佐々木だが、マリノス戦での屈辱的な4失点なども経験した。それでも前向きなメンタリティとフィールド選手ばりの機動力を発揮して、札幌戦では枠内シュート7本を打たれながら無失点で1−0勝利に導いた。鈴木彩艶(浦和レッズ)や小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)など、史上最もGKがハイレベルな世代かもしれない。その競争に打ち勝っていくポテンシャルとメンタリティが佐々木にはある。

今回はJ1から7人を紹介したが、例えばJ2でも磐田から期限付き移籍している栃木で急成長している鈴木海音や横浜FCでプレー強度を高めている中村拓海、新潟の心臓として昇格争いを支える高宇洋、パリ五輪世代の注目株であるモンテディオ山形の半田陸など、など、”ネクスト・ジャパン”の候補は多くいる。

ジョエルの活躍を良い刺激として、同じパリ五輪世代はもちろん、その上の年代も含めて、競争を活性化して行ってもらいたい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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