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酒井高徳選手の代表引退によせて。

河治良幸スポーツジャーナリスト
右サイドハーフとして出場したポーランド戦で奮闘。最初で最後のW杯出場となった。(写真:ロイター/アフロ)

日本代表のメンバーとしてロシアW杯での戦いを支えた酒井高徳選手が4年後のカタールW杯を目指さない意向を明らかにしました。

事実上の代表引退宣言ですが、エルゴラッソの日本代表として10年近く、彼が2010年南アフリカW杯の日本代表に香川真司選手らとサポートメンバーとして参加した当時から取材してきて、ザッケローニ監督時代には追加招集から代表定着にいたる道のりも見届けてきました。

ブラジルW杯では事前合宿で負傷し、その後コンディションを持ち直すも出場機会のないままチームはグループリーグ敗退。「サブとして助けることもできなかった」と悔しさをあらわにしていたことが浮かびます。

ミックスゾーンでは最初の方に出てきて、最後の1人になるぐらいまで記者陣に対応し、囲みの取材だけでレコーダーが15分を超えることもあるほど。それも個人よりもチームの話題が多く、”困ったらゴウトク”ではないですが、本当に多くの記事でコメントを活用させてもらいました。

ただ、公式戦ともなると試合に出ている選手が中心になるのは当たり前。試合後に彼を取材できた回数は実はそれほど多くありません。これまで取材してきた多くは合宿の初日や試合翌日の練習後など。それでも試合に出た時はできるだけ直接話を聞いてきました。

今大会は当初、長年のライバルである酒井宏樹選手が左膝に不安を抱えていたこともあり、ガーナ戦で途中出場、スイス戦とパラグアイ戦でスタメンと出場チャンスを得ましたが、そうした状況でベストを尽くしながらも「クラブで結果を出している2人がいる」と話しており、どうなってもチームを支えるという覚悟はあった様子です。

その高徳選手にとってW杯における最初で最後の出場となったのがグループリーグ3試合目のポーランド戦。セネガル戦から6人が交代し、4-4-2の右サイドハーフという慣れないポジションで、いい守備から何度かゴール前のチャンスに絡むシーンもありましたが、0-1の敗戦に終わりました。それでも他会場の結果により”フェアプレーポイント”の差で日本のベスト16進出が決まった記念するべき試合にもなりました。

「やってやろうという気持ちは強かったし、でもそう簡単に行くもんじゃないというのがサッカーにはあるわけで。ただ、その中で周りがどんな風に言おうと僕は一緒にサブでやってきた日にちを見たら、誰1人として抜いた選手はいなかったし、みんなが何か役に立ちたいと思って、エゴじゃなくてチームのために。チームを次のステップにという気持ちを感じさせてやっている選手ばかりで、それを感じながらやっていたので。(勝利の)結果が出なかったのは残念でしたけど、いつでも強い気持ちで準備しているというのは円陣を組んでいるところでも感じました」

その時の風景については「W杯ってどんなものかなと思ったら、意外に11対11でボールを追っかけている普通のサッカーと一緒だった」という内田篤人選手の話を自分に言い聞かせてやっていたら「そう言われてみたらそうだな」と、それほど緊張はなかったという。それでも本職の守備では絶対に崩れない、頑張って走るという部分は出せたと振り返っていました。その高徳選手の日本代表での日々を見てきた記者として、ここまでの道のりについて聞くと、こんな答えが返ってきました。

「難しいですね。まあ、うーん。どうだったですかね。(ピッチに)立ちたい立ちたいと思っている気持ちがある反面、自分の未熟さも感じている日々を過ごして来て、今大会できる限りのことをやって来たつもりではあるけど、やっぱり僕らは結果主義であって。じゃあ出場したしてないが結果であって、そのために何をして来ても出場がなかったとか、代表の力になれませんでしたといったら結局、何もできないことと一緒なので」

「そうした悔しい気持ちはありながらも、この大会にはそういう欲とかね、自分の個人事情は一切持って来てないし、もうどんな状況でも何分でも、必要とされるところでしっかりできるという準備を100%するという自分の選手として生きる道というか、自分が今までやってきた自分という形を貫いているのはあるので。今日それをできればもっといい形で手助けできればよかったなと思うんですけど、念願じゃないですけど、出場できたというのは少し嬉しいかなと思います」

もちろん、この時点で高徳選手の大会後の意向については全く想像もしていませんでしたが、所属クラブで良い時も悪い時も経験しながら、同時に日本代表という舞台に真摯にチャレンジしてきて、W杯出場を果たし、サポートメンバーを含め3大会に渡り日本代表を支えてきて、1つの区切りをつけたということなのでしょう。

現在27歳。外野的な見方をすれば、まだまだやれると思ってしまう部分はあります。しかし、次により夢と希望を持っている選手がチャンスをもらうべきという思いを受け止め、クラブレベルで”日本の代表”としてのこれからのプレーを観続け、現場で取材できたらという思いです。

酒井高徳選手。(日本代表では)本当にお疲れ様でした。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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