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U-19日本代表合宿緊急打ち切り。選手1名に新型コロナウイルス陽性の判定が下る

川端暁彦サッカーライター/編集者
8月1日のJFA夢フィールド。練習開始時間になっても誰も現れなかった(著者撮影)

選手に陽性反応

 1日から5日にかけて千葉県に新設された高円宮記念JFA夢フィールドにおいてU-19日本代表候補合宿が開催される……はずだったが、初日の集合と同時に行われた新型コロナウイルスの検査において選手1名から陽性判定が出たため、合宿自体が打ち切りとなった。

 今年に入ってU-19代表が合宿を行うのは今回が2度目となる。7月11日から15日にかけて行われた前回合宿時は集合時に選手・スタッフ全員にPCR検査を行っており、「陰性」の判定が出るまで選手・スタッフはホテルの各部屋に待機するという徹底ぶりで、当時は全員が無事に陰性となり、合宿に参加していた。

 そして今回は新たにこの事前検査について1時間弱で結果の出る「SmartAmp法検査」を導入。保険適用もされるようになった新型コロナウイルスの迅速検出法で、反町康治技術委員長が「秘密兵器」と評したように、こうした合宿では有用と見られていた。今回は午前中にその検査をまず実施した結果、選手1名に陽性の判定が出ることとなり、急きょ予定されていた1日午後の練習は中止になった。

 ただ、PCR検査と同等の信頼度があるとされる方法とはいえ、新しく導入された方法による判定だったため、今回はPCR検査も同時に実施されており、そちらの結果を待つこととなった。ただ、18時頃にPCR検査でも陽性反応となったため、今度は合宿自体を中止する判断となった。なお当該選手に発熱等の自覚症状はなく、他の選手・スタッフについても体調不良等はないという。また保健所により濃厚接触者はいないことも確認されている。

 反町技術委員長は緊急の記者会見で「日本代表の活動は全員一緒に集合ということではなく、各地から集まってくる形でした。当該選手の住んでいるところからこのホテルまで一人でタクシーを使って移動しています。タクシーで着いてからも、スタッフ等に挨拶することなく部屋に入っています。検体をとることも部屋で行っており、誰とも接触していません」と説明。このため、「(感染予防の)ガイドラインに従うと、陽性の選手を含まずに陰性の選手たちで練習することは不可能ではない」としたものの、「しかし昨今の感染の状況を踏まえて、必要だからやっている活動ではあるものの、選手の健康と関係者の安全を考えた上では慎重に慎重を期さないといけない。やはり中止せざるを得ないと私が判断させていただきました」と、中止決定の判断を下した理由を語っている。

緊急会見を行う反町技術委員長(スクリーンショット)
緊急会見を行う反町技術委員長(スクリーンショット)

 週末のJリーグの試合へ出場予定だった選手たちはそちらの活動を優先しているため、1日に集まった選手は一部となったが、当該選手に関わる情報については「(日本サッカー協会ではなく)大学やJリーグに所属している選手たちである」(反町委員長)点も踏まえ、「プライヴァシーに配慮する必要がある」(同委員長)点を説明した上で、公表を避けた。

 合宿は中止となってしまったが、集合時に選手・スタッフ全員の検査を徹底することにより、合宿を通じて新型コロナウイルスの感染が拡大することを防ぐという枠組み自体は機能していたとも言えるだろう。今は当該選手の症状がないまま収まることを願いたい。U-19日本代表は10月にU-20W杯のアジア最終予選を兼ねるAFC U-19選手権(ウズベキスタン)への出場を予定しているが、そこに向けて強化を進める難しさを再度痛感させられることともなった。

サッカーライター/編集者

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカークリニック』『Footballista』『サッカー批評』『サッカーマガジン』『ゲキサカ』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。著書『2050年W杯日本代表優勝プラン』(ソルメディア)ほか。

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