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暑さは夏だけでは終わらない

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
【気象庁1か月予報】向こう1か月の気温予想:ウェザーマップ作画、筆者加工

 20日(日)は全国的に晴れて、気温が上がりました。東京の最高気温は35.3度と、この夏の猛暑日は21日となり、連日、記録を更新しています。

 例年、お盆を過ぎると徐々に暑さの様子が変わってきますが、今年は全くその気配がありません。気温の高い状態は秋にかけても続く可能性が高くなっています。なぜ記録的な暑さとなっているのか、なぜ続くのか、理由を探ってみました。

「千年猛暑」ふたたび

 これまでにも暑い夏はありました。森田正光さんが「千年猛暑」と称した2010年は何もかもが暑かった記憶があります。ただ、そのときでも東京の猛暑日は13日でしたから、10年あまりで、これを遥かに超える暑さが来るとは思いも寄りませんでした。

【東京の夏(6月~8月)の平均気温グラフ】1876年~2023年:筆者作成
【東京の夏(6月~8月)の平均気温グラフ】1876年~2023年:筆者作成

 上図はこれまでの東京の夏の平均気温をグラフにしたもので、右肩上がりで気温が上昇している様子がわかります。

 夏は暑くて当たり前という声もあるでしょう。暑さが苦手なので、暑く感じてしまうと思ったこともありました。しかし、数字をみると今と昔では気温の差が一目瞭然です。

 東京ではこの100年で、夏の平均気温が約2度高くなりました。100年前の東京は今、避暑地として脚光を浴びる千葉県勝浦市と同じ涼しさだったのです。

なぜ、これほどまで猛暑になったのか

①北半球全体の気温が高い

 これを示しているのがこちらです。北半球層厚換算温度といって、対流圏の平均気温をみたものです。

【北半球層厚換算温度】2013年~2023年:気象庁ホームページより
【北半球層厚換算温度】2013年~2023年:気象庁ホームページより

【北半球層厚換算温度】1993年~2003年:気象庁ホームページより
【北半球層厚換算温度】1993年~2003年:気象庁ホームページより

 上図は最近10年、下図は20年前です。これらは温暖化の進行を表しているわけですが、これまで温暖化といえば少しずつ、気がつかないうちに進む印象がありました。しかし、これをみると、わずか10年、20年で地球全体の気温がガラリと変わってしまったように思います。

②エルニーニョ現象が拍車

 もうひとつは春に発生したエルニーニョ現象の影響です。7月の南米ペルー沖の海面水温は基準値を1.8度上回り、著しく上昇しました。熱帯域の海面水温が広範囲で高くなっていることも猛暑の一因です。

 大気と海洋、両方で温度が高い状況は秋にかけても続く可能性が非常に高いです。

【北半球層厚換算温度】気象庁3か月予報資料(8/19配信)より:筆者加工
【北半球層厚換算温度】気象庁3か月予報資料(8/19配信)より:筆者加工

 この記録的な猛暑はしばらく尾を引き、野菜や果物など秋の味覚に影響するでしょう。ただでさえ物価が上昇しているのに、猛暑が食卓を直撃しそうです。

【参考資料】

気象庁:1か月予報(8/19~9/18)、2023年8月17日発表

気象庁ホームページ:気候系監視速報~気候系の診断情報~

気象庁:エルニーニョ監視速報(No. 371)、2023年8月10日

気象庁:3か月予報資料(9月~11月)、2023年8月19日配信

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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