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4年ぶりエルニーニョ発生へ 夏の天候に影響必至

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
エルニーニョ現象発生時は梅雨明けが遅れる傾向がある(写真:アフロ)

 気象庁は12日、定例のエルニーニョ監視速報を発表し、夏までにエルニーニョ現象が発生する可能性が非常に高いとの見通しを示しました。エルニーニョ現象の発生は2019年以来4年ぶりのことです。

 日本の天候に影響することは必至で、気温の変化や雨の降り方に、より一層の注意が必要です。

海洋内部に暖水の蓄積

 4月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差はプラス0.5度で、ラニーニャ現象終息後、わずか2か月で基準値を上回りました。当初の見通しを超える水温構造の急激な変動に驚いています。

 現在、太平洋赤道域全体で海洋内部の水温が高く、暖水の蓄積は海面水温に先行することから、今後も海面水温の上昇が続く見通しです。

エルニーニョ監視海域の海面水温の予測(気象庁ホームページより、筆者加工)
エルニーニョ監視海域の海面水温の予測(気象庁ホームページより、筆者加工)

 大気海洋結合モデルによる予測(上図)は今後数か月以内にエルニーニョ現象が発生し、秋にかけて発達する可能性を示しています。

エルニーニョ発生に備えを

 エルニーニョ現象とは南米ペルー沖の海面水温が通常よりも高くなる現象で、世界規模で異常気象を引き起こすことが知られています。同様にラニーニャ現象もありますが、太平洋赤道域の広範囲で海面水温が上昇するエルニーニョ現象は天候に与える影響が大きく、世界的に警戒が呼びかけられています。

 日本では上空の偏西風や太平洋高気圧の張り出しに影響があり、いつもの梅雨や夏から大きく外れた天候になる可能性が高いと思っています。

【降水量の予想図】上図は6月、下図は7月(ウェザーマップ作画、筆者加工)
【降水量の予想図】上図は6月、下図は7月(ウェザーマップ作画、筆者加工)

 今後の降水量の予想によると、6月は沖縄付近で雨が少ない一方で、九州から東北地方にかけての広い範囲で、雨が多くなっています。さらに7月は朝鮮半島から北日本にかけて帯状の降水域が予想されています。

 そして、気になる梅雨ですが、エルニーニョ現象のときは梅雨入りにはっきりとした傾向はないものの、梅雨明けは四国や中国地方などで遅れる傾向があります。毎年、梅雨明けのタイミングは難しいですが、今年は梅雨が長引く可能性がありそうです。

【参考資料】

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.368)、2023年5月12日

気象庁ホームページ:エルニーニョ現象発生時の梅雨の時期の天候の特徴

米海洋大気庁(NOAA):EL NIÑO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO) DIAGNOSTIC DISCUSSION、11 May 2023

オーストラリア気象局(BoM):Climate Driver Update、El Niño WATCH – tropical Pacific warming but little atmospheric response、9 May 2023

世界気象機関(WMO):WMO Update: Prepare for El Niño、3 May 2023

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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