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タグ・ホイヤーがスマートウォッチに参戦!バーゼルワールド

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

スイスのバーゼルで開催されている国際時計見本市であるバーゼルワールド(2015年3月19日~26日)で、タグ・ホイヤーのCEOジャン・クロード・ビバー氏は、Android WATCH関連でグーグル、インテルと組むことを発表した。

シリコンバレー・ミーツ・スイッツランド

「タグ・ホイヤーにとって、今までにない最大の発表をしたいと思う。シリコンバレーミーツ、スイッツランド!」何度も絶賛した。確かに、LVMH(ルイ・ヴィトン・モネ・ヘネシー)グループの高級時計グループの「タグ・ホイヤー」がスマートウォッチに参入するということは、単なる機能だけの問題ではなく、高級ブランド時計のスマートウォッチのあり方を提示してくれることになりそうだ。すでに、カジュアルウォッチの「Fossil」がAndroid WATCHの参入を発表しているが、それはカジュアルな時計だからまったく問題ではなかった。それだけタグ・ホイヤーの参入はそれだけ、業界にもインパクトを与えた。

タグ・ホイヤーのLVMHグループ(ファッションブランド1位)以外の、コングロマリット「ケリング(2位)」「リシュモン(3位)」らの時計部門からのAndroidWATCH参入も十分に考えられる。彼らは「時計」を機能としてではなく、ファッションブランドの一つとして位置づけているからだ。Googleの、AndroidWATCHは今まで、AppleWATCHの高級化路線に対応する対戦軸を持っていなかった。しかし、このタグホイヤーとの提携で、時計好きな人が持つ、AndroidWATCHのひとつの回答がでてくると思われる。価格もAppleWATCHを意識したものとなる可能性もでてくる。Fossilブランドでは5万円を超えることも難しいかったからだ。

2015年4月AppleWATCHが牽引する高級スマートウォッチ市場が開花する。

メインとなるAppleWATCHの相場は4万〜10万円クラスだろうが、100万円オーバーも中国などでバカ売れする可能性がある。それは、素材と希少性でプレミアがつくのが高級時計の市場だからだ。AppleもデモイベントでAppleの「Messenger」アプリではなく、中国のメッセンジャーサービスの「WeChat」を披露するなど、中国市場を十二分に意識している。100万円クラスとなれば、オーバーホールメンテナンスの感覚で本体の中身をごっそり交換というプランも考えられるので陳腐化するという噂は否定できる。

SWATCHグループとApple提携の可能性は?

そして、一番気になるのが時計市場のガリバーであるSWATCHグループの動きだ。プレゲ、ブランパン、オメガからハミルトン、ティソ、スウォッチまでのバリエーションを揃えるSWATCHは、世界最大の時計メーカーだ。SWATCHとしてはその他、大勢のAndroideではなく、同じ組むならば、Appleと組みたいはずだ。それぞれのレンジで勝負できる。Appleとしてもトップメーカーと組む意味は非常に大きい。今や、Appleは製造においては世界一の調達コストと製造能力を誇るファブレスメーカーであるが、問題があるとすれば、AppleWATCHの売り場の確保なのである。時計を販売できる人財もSWATCHとならば確保できる。AppleとSWATCHが組むと、スマホで起きたようなSamsungのような競合ライバルを作ることがなく世界中に流通網が作れるのだ。スマートウォッチ産業を早期に制覇する提携としてはありえるのではないだろうか?ROLEXもAppelとだったらありかもしれない。これは今後のAppleがブランド化して侵略していく時のパートナー選びという課題なのかもしれない。今までの孤軍奮闘型の戦略では、初期参入時では、市場を一から創造し、シェアできたが、5年後にはまたシェアを奪われてしまうというくりかえしだったからだ。

クオーツショックの勃発?

1970年代、スイスの高級時計産業は、日本のSEIKOによるクオーツによって壊滅的なまでに打撃を受けた。その後、液晶デジタル時計などのテクノロジーの進化が続いた。狂わない時計がアナログ機械式時計を駆逐し続けたのだ。1980年代に入り、SWATCHの台頭によりスイスブランドの復権と既存メーカーの買収でスイスの時計産業に新たな価値を育んだ。デジタル時計は機能を超えて安物ブランド化したからだ。

今回のAndroidWATCHが秘めている怖さはクオーツショック並の時計業界への影響だ。

AppleWATCHのようにすべてにおいて、時計のハードウェアからソフト、アプリ製作者のネットワークの審査までふくめて一気通貫のメーカーと、ユーザーやメーカーが自由に独自の規格で作ることができるAndroidWATCHの登場だ。玉石混交のパフォーマンスとある程度ガチガチだけど、安定しているAppleとの差が生まれる。

いずれにせよ、時計としての機能はすでにスマート化で完全に超越している。

時計業界そのものがウェアラブル産業へと躍進するのか、機械ゼンマイを元にしたアナログの精度を高めていくブランド神話にとどまるのか、いずれにせよ、大きく変化しそうな2015年のバーゼルワールドの幕開けだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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