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「危険ドラッグ」40万人に。品川区民全員が吸引している規模感

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です。

「脱法ハーブ」が「危険ドラッグ」と呼称名が2014/07/22/TUEに変わり、しかし、それを取り締まる法律は、後追いにしか過ぎず、より危険な配合による「危険ドラッグ」が増え、事件や死亡者が増えているという報道が多く目立っている。「横紋筋融解症」と呼ばれる深刻な合併症を引き起こし、「多臓器不全」「急性腎不全による心肺停止」などのケースもある。

危険ドラッグを使ったドライバーによる交通事故が、東京都内でことし11件発生し、ドラッグの鑑定がすでに終わった6件では、1件を除いていずれも、法律の規制が及んでいなかった成分が検出されていたことが分かりました。人の中枢神経への作用が、大麻より40倍ほど強いとみられる成分もあり、専門家は海外の当局と連携するなどして、迅速に法規制を進めることの必要性を指摘しています。

出典:危険ドラッグ 大麻より40倍強い成分も

やはり、インパクトの大きかったのは、2014年06月24日(火)池袋の脱法ハーブ事件だった。自動車を暴走させ、一般人を多数巻き込み、泡をふいたまま逮捕された吸引者の姿は「危険ドラッグ」が持つ社会への凶器性を圧倒的に露見させた。

そして、現在の問題は日本の薬事法となっている。

現在の日本で「危険ドラッグ」を薬事法で規制するためには…

【1】成分の「分析」 

【2】「審議」 

【3】「意見公募」などの半年間の期間を経てから、初めて

【4】「成分指定」がなされて、

【5】「取り締まり」となる。

米国などでは

【1】成分「分析」で

【2】興奮や幻覚の症状が確認された場合、「暫定規制」となり、

【3】「取り締まり」が行われ

【4】最後は、「裁判」で白か黒を決着つけるという。

NHKクローズアップ現代より

まずは、米国流の、暫定的にでも規制を作り、取り締まりができてから、あとで裁判で決めたほうがよくないだろうか?そうしないと、後手後手に事件が発生し、被害者が増えたり、巻き添えを増やすばかりだ。また、問題となるのが、すでに「脱法ハーブ」の常習患者が多数いることと、高齢化する覚せい剤中毒者などと違って、若年層から平均年齢が、33.8歳に普及していることが問題だ。いわば働きざかりの年代が中毒患者となっている。

すでに国内での「危険ドラッグ」吸引人数は40万人に達している(厚労省推計)。

主要な国の薬物生涯経験率」にも、その危険性を伺い知る興味ぶかいデータがあった。

主要な国の薬物別生涯経験率
主要な国の薬物別生涯経験率

ドイツ  大麻25.6% 覚せい剤 3.7% MDMA2.4% コカイン3.3%

フランス 大麻32.1% 覚せい剤 1.7% MDMA2.4% コカイン3.7%

イタリア 大麻32% 覚せい剤 3.2% MDMA3.0% コカイン7.0%

イギリス  大麻30.2% 覚せい剤 11.9% MDMA7.5% コカイン7.7%

アメリカ  大麻41.9% 覚せい剤 5.1% MDMA6.3% コカイン14.7%

日本    大麻1.2% 覚せい剤 0.4% MDMA0.1% コカイン0%誤差内

つまり、日本は薬物に全く汚染されていない極めてクリーンな国であったことだ。しかし、現在、それが40万人が「危険ドラッグ」に手を染めているということは、知人経由で経験することを考えると、友達3人に勧めて一緒に吸引するだけで一気にそれは、160万人という数字を創りだしてしまう可能性を秘めている。

外国等では、60歳代のオトナを含めても、4人に1人(25%)以上のマリファナ経験(アメリカに関しては12歳以上で41.9%)があるので、あえて「危険ドラッグ」に手を染めてまで、危険な橋を渡ろうとは考えないのではないだろうか?日本はここにきて、一気にドラッグに開眼してしまった状況ともいえる。しかも回りのオトナがドラッグに対しての経験による知見を持ちあわせていない状況だから、いっそう中毒者の厚生手法がない。

麻薬・覚せい剤の検挙人数も、年平均ですべてあわせても、1万5,000人程度だから、今回の「危険ドラッグ」の問題は、裾野が広がり過ぎ、リスクを抱えてしまっていると考えるべきだろう。これは、すべての「ハーブショップ」という店舗形態を薬事法のみで判断し、放置してきたツケが一気に訪れているといっても過言ではない。

嗜好用マリファナが合法化されているオランダでも、禁止薬物に指定されている「マジックマッシュルーム」などが、2002年までは渋谷のセンター街の露天商で堂々と販売され、たったの2,000円程度で誰もが購入できてしまう状況でもあったのがこの日本の「危険ドラッグ」を育んだ環境である。

危険ドラッグ吸引者数40万人!品川区民全員が吸引に匹敵

この状況を「可視化」するために、都道府県人数であえて例えさせていただくとすると、現在の「危険ドラッグ」吸引者は、40万人で「島根県民(59万人)」の67.8%にいたり、「品川区(37万人)」全員が危険ドラッグ吸引者にあたるのだ。

また、知人の3人に勧めた場合の160万人規模の可能性で考えると、「神戸市民(154万人)」「京都市民(147万人)」「山口県民(145万人)」全員が吸引の可能性があり、23区最大区民数のトップの「世田谷区民(89万人)」と2番の「練馬区民(71万人)」をあわせた160万人に及ぶ人口に「危険ドラッグ」が万延する可能性を秘めているのだから、相当なショックな数である。

これは、ニュースなどで、薬事法での薬物指定が後手に回っているから等と、政府は、悠長なことを言っている場合ではない危機であり、パンデミック(感染症)扱いしてもいいくらいだとボクは考えている。

たとえ、米国並みに「暫定規制」を施し、「危険ドラッグ」を扱うハーブ業者を法的に一斉に閉めだしたとしても、常習化している40万人は、地下ルートに流れこみ、ヤミ世界から入手をすることによって、さらに事態を悪化させる可能性もでてくる。

そこで、暴論であることも、現行法では、反社会的であることも含めた上で、「医療用マリファナ」認可という代案を提案してみたい。

救援措置としての医療用マリファナの緊急解禁プラン

先ほどのデータにあるように、欧米では4人に1人以上が「マリファナ」経験者であるというファクトを思いだして欲しい。オトナも経験者なのだ。映画の「SEX AND THE CITY」などでもニューヨークの公道でお周りさんの目を盗んで吸引するシーンが登場し、オバマ大統領やクリントン元大統領の吸引歴も有名な話であるくらい、軽犯罪として扱われているのが現状だ。

しかし、日本では、現在は堂々と、動物実験すらされていない、大麻の約40倍の成分を含んだ人工的でケミカルな「合成カンナビノイド」が、規制が追いつかないだけで、流通し、人体を蝕み続け、クルマを運転し、社会的な損害を生み出している。経済市場として、規制されないまま販売され、流通している日本の現状がおかしい。

指定薬物は、すでに1300種類以上に及ぶが、次々に新たな「危険ドラッグ」が今日も生まれている。指定してもキリがないのだから、この手法は意味がないのも同然だ。罰則も最高3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金と、薬事法違反と同等である。

では、なぜ、そこまでして、「危険ドラッグ」に手を出してしまうのだろうか?それは、日本では精神的に「ハイ」になるための選択肢が「脱法ハーブ」にしかなかったからではないだろうか?

酒類の体(ボディ)が酩酊する心地よさではなく、精神面での酩酊や疲労や躁鬱感を緩和する代替手段がなかったからでもある。日本は世界と比較しても、酒に関しては、寛容すぎる国のひとつだ。24時間どこでも成人であれば、酒を無尽蔵に購入することができる国だ。ヨーロッパなどでは、日曜日の夕方は買えないなどの制限すらある国がある。米国では禁酒法時代(1920-1933年)もあった。しかし、日本では、精神面での「酒(マリファナ)」の販売に関しては無頓着であったのかもしれない。

また、法律の解釈も時代によって大きく変わる。1919年から発売され、第二次世界大戦の特攻隊などで活躍した「メタンフェタミン」こと「ヒロポン」は合法的に疲労回復薬として1951年の「覚せい剤取締法」まで自由に販売され、50万人のヒロポン依存者を生んだという黒歴史もある。

法律がおくれてしまい、社会問題に対応できていないならば、代替案としての危険ドラッグ常習者への「医療用マリファナ」を検討くらいするワーキンググループがあってもいいのではないか?決してマリファナを礼賛するワケではないが、危険ドラッグの普及を歯止めにするためには、中毒者へのセーフティーネットが必要だと感じているからだ。

米国では、すでに医療用だけではなく嗜好目的でのマリファナがコロラド州やワシントン州で2014年1月から1オンス28グラム以下であれば自由に購入できる。また、医療法マリファナは、22州と首都ワシントンで合法化されている。

また、コロラド州は大麻から税収2500万ドル(約25億円)もの歳入があり、大麻は、合法的ビジネスとして10億ドル(約1,000億円)の市場規模になるとコロラド州知事は語る。

あくまでも極論かもしれないが、品川区全員が「危険ドラッグ」吸引者という規模感での「対応」を迅速にかつ、被害を最小に抑えるためには、現行法にとらわれることなく、いろんなアイデアを提起し、あらゆる可能性を考えるべきではないだろうか?法律に縛られて被害者を生み出してしまう法律は、冷静に見直すべきである。日本の薬物を規制する法律が、史上最強の薬物を生み出してしまった…と歴史に刻まれないためにも…。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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