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「一人会派」が鍵を握る? 波乱含みの「杉並区議会」定例会が始まる

亀松太郎記者/編集者
4月の選挙を経て、多数の会派が拮抗する状態となった杉並区議会(作成:亀松・野村)

4月の選挙で新人の女性議員が数多く誕生し、女性議員の数が半数以上となった東京都の杉並区議会。全国的にも注目される地方議会の定例会が5月31日、スタートした。

選挙を経て、議会の勢力図は大きく変わった。5月19日の臨時会で実施された議長選挙では、最大会派「自民党・無所属」が推した浅井邦夫(くにお)議員ではなく、立憲民主党や共産党などの議員たちが投票した井口かづ子議員が議長に選出された。多くの人が予想しない「波乱」が起きた。

※参考記事:「クーデターが起きた」女性議員半数以上の杉並区議会で「女性議長」選出

特に驚いたのは、最大会派の自民党系の議員たちだ。議長に選ばれた井口議員は、浅井議員と一緒の「自民党・無所属」に属していたからだ。

同会派の議員たちは「なぜ、立憲民主党や共産党の議員たちが井口議員に投票したのか」と疑念を抱き、「事情が掴めず混乱しております」という文書を公表した。

※参考記事:「波乱の幕開け」となった杉並区議会、議長選出めぐり自民「混乱しております」

一人会派の合計人数は、最大会派と同じ「10人」

土日をはさんだ週明けの月曜日。5月22日の午後、井口議員は「自民党・無所属」の会派から離脱し、一人会派「無所属杉並」を作った。

その結果、「自民党・無所属」の人数は10人となった。杉並区議会の最大会派であることには変わりないが、定数48人の5分の1程度を占めているにすぎない。

他の会派は、公明党6人、立憲民主党6人、共産党6人などとなっており、さらに4人や2人の会派が続く。注目すべきは、一人会派が10個もあることだ。その合計人数(10人)は、最大会派の「自民党・無所属」と同じということになる。

いまの杉並区議会は、中小会派が多数存在して、拮抗している状態。5月31日から始まった第2回定例会の行方も不透明だといえる。

一人会派の合計人数は、最大会派「自民党・無所属」と同じ10人(作成:亀松・野村)
一人会派の合計人数は、最大会派「自民党・無所属」と同じ10人(作成:亀松・野村)

議長就任は「信義違反」と批判する自民党の議員たち

前述のように、議長に選ばれた井口議員は「自民党・無所属」を離脱した。だが、その後も、自民党議員団の混乱は続いた。

5月26日には、自民党所属の小宮安里(あんり)東京都議(杉並区選出)が「杉並区議会議員・井口かづ子氏への処分を求める上申書」と題した文書をツイッターで公表した。

文書によると、自民党系の会派として、事前に別の候補(浅井邦夫議員とみられる)の擁立を井口議員を含む全員一致で決定していたが、井口議員が議長に選出された。

そこで、同会派は井口議員に議長就任を辞退することを求めたが、井口議員が固辞したという。

この点について、文書は「党員としておよそ看過することができない重大な信義違反」と、井口議員を非難している。その後の井口議員の態度にも問題があるとして、「除名を含む重い処分」を求めた。

このような自民党の動きに対しては、他の会派の議員から「議長選挙という民主的な手続で選ばれた結果を軽視するものではないか」と批判する声も出ている。

新人の女性議員たちはどう動くのか?

4月の杉並区議選(定数48)では、新人候補が15人当選した。性別は、女性が12人、男性が2人、非公表が1人。多くの女性候補が新たに議員になった結果、杉並区議会の女性議員の人数は24人と半数に達した。

定例会が始まる5月31日の朝。杉並区役所の前で、6人の新人議員を含む12人の議員たちが集まって「共同街宣」を行なった。

所属会派は、立憲民主党4人、共産党4人、生活者ネットワーク2人、れいわを耕す1人、緑の党1人。岸本聡子区長の政策に賛同することが多い「非自民系」の議員たちだ。

共同街宣のあとの写真撮影でポーズをとる杉並区議会の議員たち(撮影・亀松太郎)
共同街宣のあとの写真撮影でポーズをとる杉並区議会の議員たち(撮影・亀松太郎)

新人女性議員の一人、赤坂珠良(たまよ)議員はマイクを持って、「岸本聡子区長に続いて、井口かづ子さんが議長になった。女性の力で、この杉並区をもっと暮らしやすい街に変えていけると思っている」と意気込みを語った。

杉並区議会の定例会は5月31日から6月19日まで開催される。

その模様は、杉並区によってインターネットでライブ配信され、誰でも視聴できる。また、後日、録画中継を視聴することもできる。

記者/編集者

大卒後、朝日新聞記者になるが、3年で退社。法律事務所リサーチャーやJ-CASTニュース記者などを経て、ニコニコ動画のドワンゴへ。ニコニコニュース編集長としてニュースサイトや報道・言論番組を制作した。その後、弁護士ドットコムニュースの編集長として、時事的な話題を法律的な切り口で紹介するニュースコンテンツを制作。さらに、朝日新聞のウェブメディア「DANRO」の創刊編集長を務めた後、同社からメディアを引き取って再び編集長となる。2019年4月〜23年3月、関西大学の特任教授(ネットジャーナリズム論)を担当。現在はフリーランスの記者/編集者として活動しつつ、「あしたメディア研究会」を運営している。

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