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「虚偽の記事で人間でないような扱いを受けた」仲本工事さん妻・三代純歌さんが大手出版社3社を提訴

亀松太郎記者/編集者
大手出版社を名誉毀損で提訴した仲本工事さんの妻・三代純歌さん(撮影・亀松太郎)

2022年に交通事故で亡くなったザ・ドリフターズの仲本工事さんの妻で、歌手の三代純歌(みだい・じゅんか)さんが2月27日、週刊誌の記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の大手出版社3社(新潮社、光文社、主婦と生活社)を相手取って、計約8250万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

三代さんは提訴後、東京都内で記者会見を開き、「週刊誌が収益のために事実と全然違うことを書くというのは許せない」と訴えた。また、原告代理人を務める喜田村洋一弁護士は「週刊誌の虚偽の記事によって、原告は人間でないような扱いを受けたので提訴した」と説明した。

提訴後の記者会見にのぞむ三代純歌さん(右)と代理人の喜田村洋一弁護士(撮影・亀松太郎)
提訴後の記者会見にのぞむ三代純歌さん(右)と代理人の喜田村洋一弁護士(撮影・亀松太郎)

「週刊新潮」などに計8250万円を請求

提訴の対象としたのは、2022年10月から23年5月までに「週刊新潮」「女性自身」「週刊女性」に掲載された計8本の記事。三代さんについて「モンスター妻」「鬼妻」「ネコババ」「策謀」といった表現で、批判的な内容の記事を掲載した。

三代さんは「これらの記載は事実無根で、原告の名誉を著しく毀損した」と主張して、被告である出版社に次のような金額の損害賠償を請求した。

  • 新潮社(週刊新潮)2200万円
  • 光文社(女性自身)4400万円
  • 主婦と生活社(週刊女性)1650万円

これらの記事は紙の雑誌に掲載されただけでなく、インターネットで今も公開されている。喜田村弁護士は「ネット記事の削除についても、追加で請求する予定だ」と語った。

「記事が載らなければ、まだ元気でいると思う」

一連の報道のきっかけとなったのは、2022年10月13日発売の週刊新潮の記事だ。

<ドリフ「仲本工事」を虐げる27歳下「モンスター妻」>

こんなタイトルで、三代さんが夫の仲本さん(当時81歳)を虐待しているという記事を掲載した。

三代さんは記者会見で「仲本は記事を見て、本当に心を痛めていました」と語り、こう続けた。

「私の自宅に記者が来ていたので、それを伝えると『俺が(記者に)言ってやるよ』と言ってくれました。そして、私の家に向かっている途中で事故にあいました。週刊新潮の記事が載らなければ、まだ元気でいると思います」

三代さんの代理人の喜田村洋一弁護士は、多数の名誉毀損訴訟を手掛けてきた(撮影・亀松太郎)
三代さんの代理人の喜田村洋一弁護士は、多数の名誉毀損訴訟を手掛けてきた(撮影・亀松太郎)

原告代理人は名誉毀損のプロフェッショナル

その三代さんの代理人を務める喜田村洋一弁護士は、メディア関係の名誉毀損訴訟で広く知られている。

ジャニーズ事務所創業者・ジャニー喜多川氏の性加害問題を告発した記事で、週刊文春が名誉毀損で提訴されたときは、発行元の文藝春秋の代理人として法廷で戦った。

※参考記事:ジャニーズと裁判で戦った文春側・喜田村弁護士「とにかく勝つという一心だった」(弁護士ドットコム)

今回は名誉毀損で出版社を訴える立場だ。ジャニーズ訴訟とは逆の形と言える。その点について「代理人を引き受けるときに躊躇しなかったか?」と問うと、喜田村弁護士は淡々と答えた。

「今までも原告代理人として報道機関を訴えたことはありますから、なんとも思わないです」

記者/編集者

大卒後、朝日新聞記者になるが、3年で退社。法律事務所リサーチャーやJ-CASTニュース記者などを経て、ニコニコ動画のドワンゴへ。ニコニコニュース編集長としてニュースサイトや報道・言論番組を制作した。その後、弁護士ドットコムニュースの編集長として、時事的な話題を法律的な切り口で紹介するニュースコンテンツを制作。さらに、朝日新聞のウェブメディア「DANRO」の創刊編集長を務めた後、同社からメディアを引き取って再び編集長となる。2019年4月〜23年3月、関西大学の特任教授(ネットジャーナリズム論)を担当。現在はフリーランスの記者/編集者として活動しつつ、「あしたメディア研究会」を運営している。

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