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「テレビ朝日やフジテレビは逃げないで」ジャニーズ性加害問題、NHK番組でコメンテーターが要望

亀松太郎記者/編集者
テレビ朝日の報道姿勢を問う声が、NHKの番組で出た(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏による「性加害問題」について、NHKは5月17日、<“誰も助けてくれなかった” 告白・ジャニーズと性加害問題>と題した番組を放送した。

その中で、番組のコメンテーターが「ジャニーズの性加害問題」を報じてこなかったテレビ局の責任を指摘し、「民放の人たち、テレビ朝日やフジテレビなんかは特にそうですけれども、逃げないで、ちゃんと扱っていただきたい」と発言する場面があった。

NHKクロ現が「ジャニーズと性加害問題」を放送

この問題を約30分間にわたり取り上げたのは、NHKを代表する報道番組「クローズアップ現代」。独自の取材をもとに、元所属タレントで被害にあったという男性の証言やこの問題をめぐる背景などを伝えた。

NHKクローズアップ現代が放送した「ジャニーズと性加害問題」。NHKプラスの配信で放送後1週間、ネット視聴できる(撮影・亀松太郎)
NHKクローズアップ現代が放送した「ジャニーズと性加害問題」。NHKプラスの配信で放送後1週間、ネット視聴できる(撮影・亀松太郎)

番組では、この問題についてまともに報道してこなかった「メディアの責任」についても触れた。

ジャニーズ事務所と週刊文春の訴訟で、ジャニー氏によるセクハラ行為の事実が認定されたにもかかわらず、「NHKなどのメディアが大きく報じることはありませんでした」とした。

「報道機関として、怠慢じゃないですか」

また、週刊文春側の代理人を務めた喜田村洋一弁護士へのインタビュー動画を流し、次のようなメディアへの批判を紹介した。

「報道すべきものは報道していますという自負があるのであれば、それはきっちりすべきだったんじゃないですかね。それは、やっていないでしょ、ということでしかないですよね。報道機関として、言葉は悪いけれども、怠慢じゃないですかと思いました」

一方、NHKの桑子真帆キャスターは番組の冒頭で、「メディアの責任」について次のように発言した。

「3月、イギリスBBCが番組を発信した後、被害を訴える声が相次いでいます。なぜ、この問題を報じてこなかったのか。私たちの取材でも、こうした声を複数いただきました。海外メディアによる報道がきっかけで波紋が広がっていること、私たちは重く受け止めています」

フジテレビの報道姿勢についても、番組で指摘があった
フジテレビの報道姿勢についても、番組で指摘があった写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

「民放やNHKの報道はかなり抑制的」

番組の終盤、コメンテーターとして出演したジャーナリストの松谷創一郎さんがメディアの問題について、こう述べた。

「報道がなかなかされなかったし、今回も民放も含めて、NHKもですが、かなり報道に対して抑制的なんですね。私はこのことが一番大きな問題ではないかと捉えています。さきほど『城壁に小石を投げるような』という言葉がありました。特に民放ですが、今も抑制的であるということは、ある種の『共犯関係』ではないかと考えています」

しかし、桑子キャスターは、松谷さんの指摘に対して特に反応せず、再発防止策の話題に切り替えた。

「民放の人たちは、逃げないでほしい」

その後、松谷さんが「第三者委員会」の設置の必要性などを述べたうえで、メディアを含め、社会全体でこの問題を議論する必要があると指摘した。

それを受けて、桑子キャスターが「社会の空気を作るのは、一人ひとりの積み重ねなんだという考え方も大事でしょうか?」と尋ねると、松谷さんはこう答えた。

「そうですね。それもそうですし、メディアが役割として、『アジェンダセッティングをちゃんとする』『議題設定をちゃんとする』ということがとても大切だと思いますので、民放の人たち、テレビ朝日やフジテレビなんかは特にそうですけれども、逃げないで(ジャニーズの性加害の問題を)ちゃんと扱っていただきたいと思います」

この松谷さんの発言に対して、桑子キャスターは特に意見や感想を述べることなく、「ありがとうございます」と口にしただけで、締めの挨拶に移っていった。

この番組の動画は、NHKプラスでネット配信されており、5月24日夜まで視聴できる。また、ジャニー喜多川氏から性被害にあったという複数の男性の証言をまとめた記事も、NHKのサイトで公開されている。

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記者/編集者

大卒後、朝日新聞記者になるが、3年で退社。法律事務所リサーチャーやJ-CASTニュース記者などを経て、ニコニコ動画のドワンゴへ。ニコニコニュース編集長としてニュースサイトや報道・言論番組を制作した。その後、弁護士ドットコムニュースの編集長として、時事的な話題を法律的な切り口で紹介するニュースコンテンツを制作。さらに、朝日新聞のウェブメディア「DANRO」の創刊編集長を務めた後、同社からメディアを引き取って再び編集長となる。2019年4月〜23年3月、関西大学の特任教授(ネットジャーナリズム論)を担当。現在はフリーランスの記者/編集者として活動しつつ、「あしたメディア研究会」を運営している。

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