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もしChatGPTがNHKのディレクターだったら「ジャニー喜多川氏のドキュメンタリー」をどう考えるか

亀松太郎記者/編集者
ジャニー喜多川氏について取材したBBCのモビーン・アザー記者(出典・BBC資料)

「ChatGPT」に多くの人が夢中になっている。アメリカのテクノロジー企業OpenAIが開発した対話型AI(人工知能)だ。3月14日には、ChatGPTを支える言語モデルがGPT3.5からGPT4へとバージョンアップし、さらに性能が向上したと評判になっている。

一方、ネットでは、イギリスの公共放送「BBC」が制作・配信したドキュメンタリー番組「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」が注目を集めている。ジャニーズ事務所の創業者であるジャニー喜多川氏の性的加害に関する疑惑をテーマに、日本の関係者に取材し、証言をまとめたドキュメンタリーだ。

なぜ新聞やテレビは報じないのかという疑問

3月18日と19日には、日本でも視聴可能なBBCワールドで番組が配信され、ツイッターなどのSNSに多数の感想や意見が投稿された。

このドキュメンタリーが焦点をあてたのは、ジャニー氏の疑惑が週刊文春の報道などで明らかになっても、彼が日本社会で崇拝され続けているのはなぜか、という疑問だ。背景には、新聞やテレビなどの大手メディアのほとんどがこの問題をきちんと報じていない現実がある、とBBCのモビーン・アザー記者は見ている。

今回、BBCがジャニー氏のドキュメンタリーを放送するにあたって、アザー記者は日本外国特派員協会で記者会見を開いた。以下のような一部のメディアが報道したが、大手メディアの多くは沈黙を続けている。

ジャニー喜多川氏の少年たちへの性加害疑惑 英BBC番組の制作者「沈黙の壁あった」(GLOBE+)

ジャニー氏の性加害問題、沈黙する司法と大手メディア BBC番組制作者が批判(弁護士ドットコムニュース)

日本でも、大手メディアの姿勢に疑問を持つ人は少なくない。たとえば、脳科学者の茂木健一郎氏は3月18日、日本の公共放送であるNHKの姿勢に問題があるとツイッターで指摘した。

この茂木氏のツイートには、1万件以上のいいねがついた。

NHKはBBCと同じ公共放送である。社会的に重要な問題について取材し、報道することが期待されているというべきだろう。そして、ジャニーズ事務所の社会的影響力の大きさを考えれば、その創業者であるジャニー氏の性的加害の疑惑は検証する価値があるテーマなのではないだろうか。

公共放送「NHK」は検証番組を作らないのか?

茂木氏は3月21日にも、次のようなツイートを投稿した。

では、もしNHKがジャニー氏の問題について、検証するドキュメンタリー番組を作るとしたら、どんな内容になるのだろう。

そこで、ChatGPTである。

どんな質問にも、たちどころに答えてくれるAIのアシスタント。この対話型AIにたずねてみることにした。

ChatGPTにたずねた質問(画像キャプチャ・亀松太郎)
ChatGPTにたずねた質問(画像キャプチャ・亀松太郎)

ChatGPTに、この画像のような質問を投げてみた。言語モデルは最新の「GPT-4」を選んだ。

質問では、BBCのドキュメンタリーの概略を簡単に伝えたうえで、まず、どう考えるべきかをたずねた。そして、もしNHKのドキュメンタリー番組を作るとしたら、どんな内容にするかを聞いた。

ChatGPTは10分ほどかけて、以下に紹介するような回答を返してきた。

なお、この回答は、あくまでもアメリカの新興企業が開発した「AI」が生成した内容にすぎず、NHKの監修を受けているわけではない。その点に留意したうえで、読んでいただきたい。

また、ChatGPTが具体的にどんな感じで答えたのかを知ってもらうために、その様子を録画した。質問が難解だったのか、ときどき回答に詰まってしまう場面もあった。記事の最後に動画をはめこんでおいたので、興味がある方はそちらもご覧いただければと思う。

ChatGPTの回答の様子(画像キャプチャ・亀松太郎)
ChatGPTの回答の様子(画像キャプチャ・亀松太郎)

ChatGPTの回答1:BBCのドキュメンタリー番組をどう考えるべきか?

まず、BBCのドキュメンタリー番組に対する賛成と反対の両方の意見について考察します。

【賛成の意見】

このドキュメンタリーは、日本の大手メディアが報道しない問題を取り上げ、国際的な視点から性的加害に対する問題提起を行っているという点で評価できます。また、芸能界とメディアの癒着関係を浮き彫りにし、その背後にある権力構造を批判的に検証している点も重要です。

【反対の意見】

一方で、日本の文化や社会の背景を十分に理解せずに、外国のメディアがこのような問題を取り上げることは、文化的な偏見やステレオタイプが反映される恐れがあります。また、このドキュメンタリーが日本のメディアや芸能界に対して過剰な批判を行っていると感じる人もいるでしょう。

私たちがどのように考えるべきかというと、両方の意見に一定の根拠があると認識し、客観的な視点で問題を捉えることが重要です。BBCのドキュメンタリーが提起した問題を無視することなく、それを機に日本の芸能界やメディアが改善を図るべきです。一方で、外国のメディアが報道する際には、日本の文化や社会の背景を理解し、偏見のない報道が求められます。

ChatGPTの回答の様子(画像キャプチャ・亀松太郎)
ChatGPTの回答の様子(画像キャプチャ・亀松太郎)

ChatGPTの回答2:NHKのドキュメンタリー番組を作るとしたら?

次に、「BBCドキュメンタリーが問題提起した日本の芸能界とメディアの関係」をテーマにしたNHKのドキュメンタリー番組の構想について述べます。

1. 現状の問題点の分析:ジャニー喜多川氏の性的加害疑惑に関する報道が少ない理由や、芸能界とメディアの癒着関係について分析します。

2. 被害者の声の紹介:ジャニー喜多川氏の性的加害疑惑に関する実際の被害者や関係者の声を取り上げ、その実態を浮き彫りにします。匿名性を保護しながら、具体的な証言や証拠を紹介します。

3. メディアと芸能界の関係性:なぜ報道されないのか、権力構造や影響力を持つ人物に焦点を当て、メディアと芸能界の関係性について深掘りします。

4. 他国の事例との比較:同様の問題がどのように扱われているのか、海外の事例と比較し、日本独自の問題点や改善の必要性を明らかにします。

5. 問題解決の道筋:ジャニーズ事務所やメディアが今後どのような対策を講じるべきか、専門家や関係者の意見を取り入れ、問題解決の道筋を探ります。また、芸能界全体の透明性向上や報道機関の独立性確保に向けた取り組みや提案を紹介します。

6. 社会的影響と議論:この問題が日本社会に与える影響や、性的加害問題に対する意識の変化を検証します。さらに、視聴者や専門家からの意見や議論を取り上げ、問題提起を促します。

このような構成でNHKのドキュメンタリー番組を作ることで、日本の芸能界とメディアの問題を客観的に捉え、国内外の視聴者に問題意識を共有させることができると考えます。

また、日本独自の文化や社会背景を踏まえた上で、公正かつ偏見のない報道が実現できるでしょう。この番組を通じて、日本の芸能界やメディアが改善に向けて前進するきっかけとなることを期待します。

最終的に、NHKとしては、この問題が国内外の関心事となっていることを受け、真摯に向き合い、公正で中立的な報道を心がけることが重要です。このドキュメンタリーが、日本の芸能界とメディアの問題を解決するための一歩となり、他のメディアや関係者にも影響を与え、より健全な芸能界と報道の在り方を模索するきっかけとなることを願います。

同時に、視聴者に対しても、自分たちが受ける情報について批判的に考える機会を提供し、社会全体で問題解決に向けた議論が活発化されることを期待します。このような取り組みが、日本の芸能界やメディアにおける透明性の向上、報道機関の独立性の確保、そして性的加害問題に対する意識の変革に繋がることを願っています。

ChatGPTの回答の様子(画像キャプチャ・亀松太郎)
ChatGPTの回答の様子(画像キャプチャ・亀松太郎)

「健全な芸能界や報道」を願うChatGPT

以上が、ジャニー喜多川氏のドキュメンタリー番組について、ChatGPTに質問した回答である。

印象的なのは、ChatGPTがこの問題に対する賛成と反対の両方の意見に一定の根拠があると認識したうえで、「客観的な視点で問題を捉えることが重要」と考えていることだ。

その一方で、NHKがドキュメンタリー番組を作ることによって、「他のメディアや関係者にも影響を与え、より健全な芸能界と報道の在り方を模索するきっかけとなること」をChatGPTが「願って」いるというのは、人間的な回答で興味深かった。

あなたは、このChatGPTの回答を見て、どう考えるだろうか?

記者/編集者

大卒後、朝日新聞記者になるが、3年で退社。法律事務所リサーチャーやJ-CASTニュース記者などを経て、ニコニコ動画のドワンゴへ。ニコニコニュース編集長としてニュースサイトや報道・言論番組を制作した。その後、弁護士ドットコムニュースの編集長として、時事的な話題を法律的な切り口で紹介するニュースコンテンツを制作。さらに、朝日新聞のウェブメディア「DANRO」の創刊編集長を務めた後、同社からメディアを引き取って再び編集長となる。2019年4月〜23年3月、関西大学の特任教授(ネットジャーナリズム論)を担当。現在はフリーランスの記者/編集者として活動しつつ、「あしたメディア研究会」を運営している。

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