人手不足の深刻な業界を対象に、外国人労働者を最長5年で受け入れるプランが政府内で検討されています。従来は対象外だった単純労働も含まれることから大きな方針転換と言っていいでしょう。

確かに、コンビニや外食チェーンを見ても明らかなように、もはや日本は彼ら外国人労働者抜きではやっていけない状況です。きちんと制度化して受け入れ態勢を構築した方が双方にとって利便性は高いでしょう。

とはいえ、筆者にはこのままなし崩し的に外国人労働者を受け入れることへの漠然とした不安もあります。日本社会が彼らを受け入れる準備が整っているとはとても思えないためです。良い機会なのでまとめておきましょう。

留学生すら活用しきれない社会

2006年に掲げられた留学生30万人計画以降、日本で学ぶ留学生は26万7千人人まで増加しました(日本学生支援機構調べ、2017年度)。ですが、彼らの卒業後の日本での就職率は36%と必ずしも高いものではありません。

【参考リンク】人手不足なのに「外国人留学生」は就職難だ

その理由は上記調査でも触れられているように、日本企業の側に留学生を採用したいという意欲が乏しいためです。

日本の正社員制度では、新卒採用者は採用時に担当業務や配属先を限定されることなく、会社都合によりその都度柔軟に、必要な業務を必要な事業所で指示されるのが一般的です。給料も初任給から勤続年数に応じて少しずつ上がっていくシステムであり、必ずしも仕事内容に応じた市場価格が支払われるというものではありません。

「入社するまで何の仕事をさせるか約束できないし、その後のキャリアもわからない。年収一千万円?20年くらい真面目に勤続すれば行くかもしれないし行かないかもしれない」

と人事が説明すると、不満を示す学生は少なくありません。でも「みんなそれに従ってきたんだから、そういうものだから」と言えば、少なくとも日本人は納得します。

一方、まず納得しないのが留学生です。たとえその場で人事が説得したように見えても、せいぜい数年でその多くが離職することになります。これが、日本企業が留学生の採用に及び腰になる理由ですね。

「担当する職務に応じて適正な対価を支払う」というのが世界標準なのだから彼らを責めることはできません。「正社員という身分の一員になり、滅私奉公することで将来の出世という対価を得る」という仕組みを採用し続けている日本が特殊なだけです。

さて、こうした状況下で単純労働を含む外国人労働者の受け入れを開始すれば何が起こるでしょうか。彼らは日本人が敬遠する業種に優先的に送り込まれることになります。時給の高いホワイトカラー職は日本人で固められ、高等教育機関に留学しても、そこで働ける外国人は一部に過ぎない……そうした二重構造を見て、彼ら外国人はどう感じるでしょうか。

これが、筆者が外国人労働者の受け入れ拡大に不安を感じる理由です。

一方で、労働市場には明るい兆しも見え始めています。従来は「そういうものだから」と言われて納得していた日本人学生の中にも、留学生同様に納得しない人間が増え始めているのです。たとえば東大生の人気就職先として新・御三家と呼ばれる企業はいずれもIT系の新興企業であり、上記のような日本型雇用を採用する伝統企業とは異なります。

政府が職務内容や処遇を個別に設定するコース別採用の導入を後押しするとすれば、今ほど浸透しやすい時期はないだろうというのが筆者の見方です。