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【NHL】現役選手が参加したオリンピックを振り返る

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
「ザ・グレートワン」と呼ばれる ウェイン・グレツキー(@NHL.com)

 東京を舞台に開催されたオリンピックと、パラリンピックが閉幕しましたが、気づけば「北京冬季オリンピック」の開幕まで5か月を切りました。

 開幕への足音が聞こえ始めた北京オリンピックは、NHLの現役選手が祖国の代表として出場するために、「オリンピックブレイク」(レギュラーシーズン休止期間)」を設けたことから、NHLのスーパースターたちが、8年ぶりにオリンピックに戻ってきます!

▼始まりは1920年

 1920年に始まったオリンピックの男子アイスホッケーは、長い間、アマチュア選手のみで試合が行われていました。

 その流れが一変したのが1998年の「長野オリンピック

NHLがレギュラーシーズンを中断し、オリンピック参加を決断。

はるばる日本までやってきて、金メダルを争ったのです。

 長野オリンピックから始まったNHL選手の参加は、2014年のソチオリンピックまで続きましたが、これまでのオリンピックを振り返りましょう。

▼1998年 長野(日本)オリンピック

 長野オリンピック決勝戦 チェコvs.ロシア
 長野オリンピック決勝戦 チェコvs.ロシア写真:アフロスポーツ

 ホッケーが国技と言われるカナダは、ウェイン・グレツキー、スティーブ・アイザーマン、パトリック・ロワといったスター選手をズラリと揃え、国の威信をかけて臨みました。

 ところが、準決勝で、チェコのGKドミニク・ハシェクのスーパーセーブの前にGWS戦(サッカーのPK戦に相当)の末、敗退。

 続く決勝は、準決勝でフィンランドを下したロシアとの対戦。

試合は、ペトル・スヴォボダが、両チームを通じて唯一のゴールを決めると、GKのドミニク・ハシェックがロシアを完封!

 「カナダとアメリカの決勝戦になる」という多くの予想を覆して、チェコが初めてとなるオリンピックで金メダルを勝ち取りました。

▼2002年 ソルトレイク・シティ(アメリカ)オリンピック

金メダルに輝いたカナダ
金メダルに輝いたカナダ写真:ロイター/アフロ

 前回の長野オリンピックでの敗退を受け、ウェイン・グレツキーをGMに起用したカナダは、予選リーグこそ1勝1敗1分と不振だったものの、準々決勝でフィンランドとの接戦を制すと勢いに乗り、アメリカとの決勝戦へ。

 ジャローム・イギンラと、ジョー・サキックが2ゴールを決める働きを披露してアメリカを退け、実に50年ぶりに金メダルを獲得!!

 "ホッケーが国技"だと言われるカナダでは、決勝のアメリカ戦の視聴率が、オリンピックのアイスホッケー中継史上最高の視聴率を記録するほどの"ホッケーフィーバー"となりました。

▼2006年 トリノ(イタリア)オリンピック

スウェーデンのGKヘンリク・ランドクイスト
スウェーデンのGKヘンリク・ランドクイスト写真:アフロ

 準々決勝で前大会金メダルのカナダがロシアに、さらに銀メダルのアメリカがフィンランドに、それぞれ敗退。

 波乱含みの大会の決勝戦は、スウェーデンとフィンランドの「北欧対決」となりましたが、スウェーデンが、ニクラス・リドストロームの勝ち越しゴールを、GKのヘンリク・ランドクイストが守り切り、1994年リレハンメルオリンピック以来の金メダルを獲得しました。

2010年 バンクーバー(カナダ)オリンピック

金メダルを手にしたカナダチーム
金メダルを手にしたカナダチーム写真:ロイター/アフロ

 決勝戦は2002年と同じく、アメリカとカナダの「北米対決」。

カナダが1点をリードして迎えた試合終盤。アメリカが、GKをベンチへ下げ、代わりにFWを送り込む全員攻撃に。

これが功を奏して試合終了25秒前に、ザック・パリズィの得点でアメリカが追いつき、試合は延長戦へ。

 しかし、延長7分過ぎに、カナダの22歳の若きスター選手のシドニー・クロスビーが決勝点を挙げ、カナダが金メダルを獲得!!

 大熱戦となった決勝戦は、アメリカとカナダで多くの国民に視聴され、なかでも"ホッケーが国技"と言われるカナダでは、国民の3分の2が試合を観戦したと報じられたほどだったそうです。

▼2014年 ソチ(ロシア)オリンピック

決勝戦で得点し喜ぶカナダの選手たち
決勝戦で得点し喜ぶカナダの選手たち写真:ロイター/アフロ

 予選ラウンドで顔を合わせたロシアとアメリカの試合は、歴史に残る熱戦に。

 オーバータイムを終えても決着がつかずGWS(ゲームウイニングショット(=サッカーのPK戦に相当)へ進むと、オリンピックのGWS戦のルールでは、最初の3回のショットの後は、同じ選手を続けてGWSに起用し続けて良いため、アメリカはGWSの名手T.J・オシーを続けて起用。

 するとオシーも期待に応えて6回のGWSのうち4度を決め、アメリカに勝利をもたらせました。

 一方で決勝戦は、前回バンクーバーオリンピック金メダルのカナダと、前々回トリノオリンピック金メダルのスウェーデンとの対戦に。

 試合はカナダが3-0のスコアでシャットアウト! 2大会連続の金メダルを手にしました。

 カナダは6試合を戦って、わずか3失点。ゴーリーのキャリー・プライスをはじめとした堅い守りが光りました。

 今大会のMVPに選ばれたのは、フィンランドのティム・セラ二。

当時43歳でのメダル獲得は最年長記録で、また、セラ二のオリンピックにおける通算ポイント「43」は、現在も破られていません。

大会MVPに選ばれたティム・セラ二選手
大会MVPに選ばれたティム・セラ二選手写真:ロイター/アフロ

ソチオリンピック男子アイスホッケー 試合結果

来年2月に開催される北京オリンピックで、NHL選手はどのような試合を見せてくれるのか? 今から楽しみですね。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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