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【NHL】初優勝へ導いたのに年俸交渉決裂!ワシントンを去った指揮官はニューヨークで「連覇」を狙う!!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
バリー・トロツ ヘッドコーチ(Courtesy:@EagleStarNET)

 NHLのプレーオフが今日(現地時間)から始まります。

 昨日の筆者の当サイトでは、”優勝候補大本命”と目される「タンパベイ ライトニング」を紹介しました。

 続いて、もう一つ見逃せないチームを紹介しましょう。

 ニューヨーク アイランダーズです。

▼1980年代に4連覇を達成

 レンジャーズとともに、アイランダーズは、ニューヨークをホームとしているチーム。

 しかし、1926年から加盟しているレンジャーズに対し、アイランダーズは1972年のエクスパンション(=リーグ拡大)の際に加盟。

 ホームアリーナも、ニューヨークの玄関口ペンステーションの真上にあるマジソンスクエア ガーデンで試合を戦い、スタンドにはセレブもやってくるレンジャーズに対し、長年にわたって郊外のナッソーコロシアムをホームアリーナにしていたアイランダーズと、チームカラーは異なります。

▼共通点は「優勝から遠ざかっていること」

 その一方で、両チームが共通しているのは、「優勝から遠ざかっていること!」

 

 レンジャーズは、1994年のプレーオフを勝ち抜き、54季ぶりのスタンレーカップを獲得してから、(今季もレギュラーシーズンで敗退したため)25季にわたって、頂点に立つことができずにいます。

 一方のアイランダーズも、1980年から4連覇を達成し黄金期を迎えましたが、その後はファイナルへ一度進んだだけで、優勝から遠ざかっています。

▼今季は明暗がくっきり

 ところが、今季は両チームの明暗がくっきり分かれました。

 レンジャーズが、昨季に続いてプレーオフ進出を逃したのに対し、アイランダーズは3季ぶりのプレーオフ進出を果たしたからです。

 明暗の「明」を生み出したアイランダーズの立役者に挙げられるのは、バリー・トロツヘッドコーチ(HC・55歳/タイトル写真)!

 覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、トロツHCは昨季のプレーオフを勝ち抜き、ワシントン キャピタルズに、創設44季目にして初めてスタンレーカップをもたらせた指揮官です。

▼年俸交渉決裂でライバルチームへ

 しかし、年俸交渉が決裂し、ワシントンはトロツと再契約を結ばず、アソシエイトコーチ(=トップアシスタントコーチ)を務めていた トッド・リアデン(47歳)をHCに指名。

 その一方で、ワシントンと同じディビジョンに属するライバルチームのアイランダーズは、ナッシュビル プレデターズのHC時代から参謀役を務めているレーン・ランバートアソシエイトコーチ(54歳)と、GKの指導に定評があるミッチ・コーンGKディレクターも含めて移籍交渉を進め、トロツを指揮官として招へい。

 1967年のエクスパンションで、NHLが12チームで争われるようになって以降、二人目となる「優勝した年にチームを離れ、翌年に他チームを率いるHC」となったのです。

▼史上二人目のHCになれるか!?

 今季のアイランダーズは、「オリンピック」や「ワールドカップ」のカナダ代表でプレーしたキャプテンのジョン・タバレス(FW・28歳)が、小さい頃からの夢を叶えたいと、FA権を行使して故郷に近いトロント メイプルリーフスへ移籍。

 そのため開幕前は「大きな戦力ダウン」だという評価が、ほとんどでしたが、トロツHCはディフェンス面の強化に注力。

 昨季はリーグ最多の失点(1試合平均3.57)を記録したのから一転、今季はリーグ最少失点(同2.33)に転じ、プレーオフへ勝ち進んだのです。

▼ホームアリーナからスタート

 数字が表すとおり、ディフェンス面の改善に注力した成果から、アイランダーズはメトロポリタン ディビジョンで2位になりました。

 これによって、同じディビジョン3位のピッツバーグ ペンギンズと顔を合わせる「カンファレンス クォーターファイナル(1stラウンド)」を、実に31季ぶりにホームアリーナ(ナッソーコロシアム)からの戦いで臨むことができます。

 ホームアリーナでの戦いは、多くのファンが観戦できるのはもちろん、選手のマッチアップの権利(=相手チームの顔ぶれを見てから、自チームの選手を氷上に送り出せる)を有することから、ピッツバーグの看板選手シドニー・クロスビー(FW・31歳)に対して、守りに長けた選手を起用できるなど、戦術面でも大きなプラスがあり、文字どおり「ホームアドバンテージ」となるはずです。

▼84季ぶりの快挙達成なるか!?

 このようなアドバンテージを活かして、もしトロツHCが、昨季に続いて今季もチームを優勝に導くと、1934年にシカゴ ブラックホークス、続く翌年には、モントリオール マルーンズを、それぞれチャンピオンに導いた 故トミー・ゴーマンHC以来となる、

「異なるチームを率いて2年連続スタンレーカップを獲得するHCが誕生」

します!

 果たしてトロツHCは、アイランダーズにスタンレーカップをもたらせて、「84季ぶり史上二人目の快挙」を達成できるのか!?

 今夜、ナッソーコロシアムで、第1戦が行われます。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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