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【アイスホッケー】廃部が決定した日本製紙クレインズの行方を決めるのは、20チームのゴールを守った男!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
ドリュー・マッキンタイア(Courtesy:@MapleLeafs)

 昨年9月1日に開幕した「アジアリーグ アイスホッケー」は、レギュラーシーズンが終了し、明日から王座を争うプレーオフが始まります。

▼プレーオフで王者が決まる

 2003年11月15日に最初の試合が行われたアジアリーグは、初年度こそレギュラーシーズン(各チーム16試合)の1位が優勝チームとなりましたが、翌年からはプレーオフが導入され、(出場チーム数やシリーズの試合数などの変更はあったものの)今季もプレーオフによって優勝チームを決します。

▼5チームによる3つのラウンドで王者が決まる

 昨季から改まった現在のプレーオフのフォーマットは、

レギュラーシーズンの上位5チームが出場。

4位vs5位によるファーストラウンドを、ベストオブ3(3回戦制2勝先勝方式)で開催。

ファーストラウンドの勝者と、レギュラーシーズンの上位3チームによるセミファイナルを、ベストオブ5で開催。

セミファイナルを勝ち上がった2チームが、ベストオブ5ファイナルで王座を決める

となっています。

▼日本製紙クレインズは王子イーグルスと対戦

 注目が集まるのは、やはり日本製紙クレインズ(旧十條製紙)。

 昨年12月19日に今季限りでの廃部を発表したことから、(現在のチーム体制では)最後の戦いとなるからです。

 レギュラーシーズンを4位で戦い終えたクレインズは、5位の王子イーグルスと対戦。

 ファーストラウンドは、上位チームのホームアリーナで全試合開催されることから、クレインズは地元で(釧路市・日本製紙アイスアリーナ)で、イーグルスを迎え撃ちます。

▼釧路で美酒に酔ったチームの対戦!

 2003年11月15日に行われた「アジアリーグ最初の試合」で対戦した両チームは、これまでにプレーオフで6度対戦。

 クレインズが4回。イーグルスは2回シリーズを制していますが、そのうち2008年のファイナルは、釧路で3連勝したイーグルス(当時は王子製紙)が初優勝!

優勝を決め故郷の釧路で胴上げされた城野正樹監督(現副部長/Photo:Jiro Kato)
優勝を決め故郷の釧路で胴上げされた城野正樹監督(現副部長/Photo:Jiro Kato)

 一方のクレインズは、2014年のファイナルでイーグルスを下して、4度目の優勝にして初めて地元での胴上げを達成。美酒に酔いました!

初めて地元で優勝を決め、かつてのホームアリーナ十條リンクでの祝勝会(Photo:Jiro Kato)
初めて地元で優勝を決め、かつてのホームアリーナ十條リンクでの祝勝会(Photo:Jiro Kato)

 両チームには、ホッケーが盛んな釧路出身の選手が多いのはもちろん、釧路のリンクでアジアの王者になった経験を持つ選手も在籍しているのです。

▼プレーオフのカギを握るポジションは?

 アジアリーグでは、10季前に「プレーオフMVP」が表彰項目となりましたが、東日本大震災によりファイナルが開催されず表彰が行われなかった2011年を除く昨季までの9季のうち、優勝チームのGKが4回受賞。

 この事実が示すとおり、プレーオフのカギを握るポジションは「GK」だと言えるでしょう。

▼クレインズの守護神はNHLからドラフト指名された男

 有終の美を飾りたいクレインズの守護神を担うのは、カナダ出身のドリュー・マッキンタイア(35歳/タイトル写真)です。

 2001年のNHLドラフトで(当時は)毎年優勝候補に数えられていたデトロイト レッドウィングスから、4巡目(全体121位)指名。

 ドラフトの指名順だけを比べると、GKなのにゴールを決めたキャリアを持つマイク・スミス(5巡目全体161位)よりも、1つ上のラウンドで指名されています。

 今季もカルガリー フレイムスでプレーしているスミスは、オールスターゲームにも選ばれるなど、NHLファンの誰もが知る選手であるのと対照的に、マッキンタイアのNHLの公式戦出場は「6試合」だけ。しかも先発出場したのは「1試合」のみで、通算成績は「0勝2敗」です。

▼7か国20チームのゴールを守ったジャーニーマン

 だからと言って、マッキンタイアのプレーが、明らかに見劣りしていたわけではありません。

 その証拠に、NHLの一つ下のリーグに相当するAHLでは、チームのMVP(MAN OF THE YEAR)に選出され(タイトル写真)、実力をアピール。

 しかし、GKはレギュラーポジションが一つしかないとあって、なかなか守護神の座を勝ち取ることができず、マッキンタイアは北米のマイナーリーグやKHL、さらにはドイツ、スロバキア、スロベニアなど、ヨーロッパのクラブチームを転々としてきました。

 プロになってからの歩みをスタッツサイトでご覧いただくと、お分かりになるでしょうが、7か国20チーム(公式戦未出場は除く)を渡り歩いてキャリアを積み重ねてきた「ジャーニーマン」なのです!(スタッツサイトへのリンク

▼イーグルス戦はナンバーワンの成績

 今季からアジアリーグでプレーするようになったマッキンタイアの、対戦カード毎の成績を見ると、イーグルス戦は全6試合に先発して、1試合あたりの平均失点「1.32」

 シュートセーブ率(100本のシュートを浴びた際にセーブしたシュートの割合)は、「95.53%」

 この数字は、韓国とロシアのチームも含めた対戦相手7チームの中で、ともにナンバーワン! 

 レギュラーシーズンに続いて、プレーオフでもイーグルス相手に好セーブを披露し、クレインズをセミファイナルへ導くことができるのか!?

 クレインズの最後のシーズンの行方を決めるのは、20チームのゴールを守った男となりそうです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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