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アジアリーグアイスホッケー明日開幕!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
アジアリーグアイスホッケー (Rights of Jiro Kato)

アジアリーグアイスホッケーが、明日14度目の開幕を迎えます。

と言っても、読者の皆さんの中で、アジアリーグをご存知の方は、きっと多くはないでしょう。

そこで、レギュラーシーズンの幕開けを前に、アジアリーグのこれまでの歩みを、日本のチーム中心に振り返ります。

▼始まりは日韓リーグから

アジアリーグがスタートしたのは、日本と韓国のアイスホッケー事情によるものでした。

1972年の札幌オリンピック開催決定を受け、サッカーに続く二番目の日本リーグとして、1966年に発足した「日本アイスホッケーリーグ」は、十條製紙(現日本製紙クレインズ)が加盟した1974年以降、長らく6チームによるリーグ戦を行っていました。

しかし、長野オリンピック開催翌年の1999年に、古河電工が活動停止を発表したのに始まって、雪印、そして西武鉄道と、わずか5年の間に3チームが廃部を決定。

古河を引き継ぎ立ち上がった日光アイスバックスだけは(運営体制の変化はあるものの)今も活動を続けていますが、日本リーグのチーム数は4つになってしまったのです。

一方、1995年から始まった「韓国リーグ」では、最も多い年には4つの企業チームが参加していました。しかし、1990年代後半に起こったアジア通貨危機の影響から3チームが消滅し、2003年にはハルラウィニア(現アニャンハルラ)1チームだけに・・・。

このような状況を打開すべく、日本と韓国が手を組んで、5チームが同じステージで戦う「アジアリーグ」が誕生したのです。

▼拡大路線へ舵を切る

初年度こそ、5チームが4回戦総当たりする全16試合のリーグ戦だけで、チャンピオンを決したものの、翌年からは拡大路線へ舵を切りました。

ロシアのトップリーグに加盟しているアムール ハバロフスクが、極東地区をホームタウンとしている地の利を活かし、アジアリーグに参戦するための新たなチームとして、ゴールデン アムールを創設。

また中国からも、アイスホッケーが盛んな黒龍江省のハルビンチチハルのチームが新たに加わり、アジアリーグは創設2季目にして4ヶ国8チームへ拡大しました。

そのため、前年はアジアリーグを挟み、前後期制で開催していた日本リーグも「休止」となり(その後も従来の日本リーグは開催されず、事実上の終了)、半年にわたって42試合のレギュラーシーズンを戦い、上位4チームがプレーオフに進みチャンピオンを決する、本格的なリーグへ変貌。

日本リーグ時代から続いた「オールスターゲーム」や、シーズン終了後には個人賞の表彰などを行うアウォードも開催し、多くのファンが詰め掛けました。

このようにして始まったアジアリーグで、初代チェアマンを務めた冨田正一氏は、

「北米、ヨーロッパに肩を並べるリーグの創設」

「オリンピックでメダル獲得」

という大きな目標を掲げたのと同時に、国際アイスホッケー連盟の副会長も務めていたことから、

「下部リーグを新たに設ける」

とのプランも抱き、アジアでのアイスホッケーの拡がりを目指したのです。

▼首都圏のチームがゼロに

残念ながら下部リーグの新設には至らず、チームの新規参入と脱退や解散を繰り返しながら、アジアリーグは歴史を積み重ねてきましたが、大きな転換期となったのが、首都圏にチームがなくなったことでした。

1971年の日本リーグを最後に、大阪の福徳相互銀行が解散し、リーグが存亡の危機に面した際、東京の品川をホームアリーナにしていた西武鉄道が、チームを二分する形で国土計画(のちのコクド)を新設。その後はともに首都圏をフランチャイズとし、「兄弟対決」と呼ばれた両チームの対戦は、激しい戦いが繰り広げられました。

しかし、アジアリーグが始まる直前の2003年春をもって、西武鉄道は解散し(事実上)コクドへ吸収合併。

その後、コクド(のちにSEIBUプリンスラビッツに改称)はアジアリーグでも2度の優勝に輝きましたが、オーナー企業の再編に伴い、2009年3月末に解散。

日本のアイスホッケー界のシンボルの一つだった「西武」が姿を消し、首都圏のチームがゼロになってしまったのです。

2009年3月に西武が解散(Rights of Jiro Kato)
2009年3月に西武が解散(Rights of Jiro Kato)

▼アジアがステージだ

首都圏をフランチャイズとするチームがなくなったあとも、国内のチームを一同に集めて試合を行ったり、日本のチームと韓国のチームの対戦を組んだりと、東京や横浜で試合を開催し続けています。しかし、前述したオールスターゲームやアウォードなどのイベントは打ち切られ、メディア露出は減少の一途・・・。

また、ライバルチームの対戦数を多くして、ファンが喜ぶような試合を増やすなど、観戦意欲を促すカードを生み出していた以前と異なり、近年は国内外のチームと6回戦総当たりするフォーマットへ移行。

そのため熱心なファンの人でない限り、半年間も続くリーグ戦の中から見どころを探し出すのは、容易ではないでしょう。

これらの要素が観客動員にも及んでいる模様で、昨季のレギュラーシーズンの平均観客数(公式発表数)は、1試合あたり940人。2003年の創設以来、最多観客動員数が(国内開催試合ではありませんが)6000人だったことを考えると、さびしい限りと言わざるを得ません。

しかしながら、アジアリーグの優れた点は、

「長年にわたり日常的に国際リーグが開催し続けられている」

ということです!

たとえば、AFCチャンピオンズリーグのように、一部のチームが参加するけれど、あくまでもメインステージはJリーグとなっている日本のサッカークラブとは異なって、、、

★ 日本製紙クレインズ(ホームタウン=釧路市)

★ 王子イーグルス(苫小牧市)

★ 東北フリーブレイズ(八戸市)

★ 栃木日光アイスバックス(日光市)

★ アニャンハルラ(韓国・アニャン市)

★ High1(=ハイワン 韓国・コヤン市)

★ デミョンキラーホエールズ(韓国・インチョン広域市)

★ チャイナドラゴン(中国・チチハル市)

★ サハリン(ロシア・ユジノサハリンスク市)

このアジアリーグに加盟している4ヶ国9チームは、アジアがメインステージなのです!

それを象徴するルールも設けられ、(世界ランキング2位のロシアだけは、個人技が抜け出ているため対象外ですが)「日本、韓国、中国籍の選手は、外国籍選手枠(最大3人)の対象外」となります。

この規定があることから、当初進む予定だった西武の解散に伴い、法政大学卒業後、チャイナドラゴンでデビュー。その後、韓国のHigh1に4年間所属したあと、28歳になって初めて日本のチームで開幕を迎えた井上光明(日本製紙クレインズ)のような選手も、決してレアケースではありません。

中国のチームでデビューした井上光明 (Rights of Jiro Kato)
中国のチームでデビューした井上光明 (Rights of Jiro Kato)

明日から始まる14季目のアジアリーグで、他の国内スポーツでは味わうことのできない「身近な国際試合」を、パスポートを持たずにご観戦されてみては、いかがでしょう?

尚,試合のスケジュールなどについては、アジアリーグのオフィシャルサイトを、ご参照ください。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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