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【NHL】32番目のチームがシアトルに誕生! しかし予定より1年遅れてしまいそうな「二つの理由」は?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
NHL32番目のチームがシアトルに!(Courtesy:@BrodieNBCS)

 レギュラーシーズンが中盤に入ったNHLでは、リーグと各チームのGMらが集まる代表者会議を開催しています。

 これは毎年恒例で、オフシーズンのみならず、レギュラーシーズン中にも行われ、昨日(現地時間)は、来季のサラリーキャップ(チーム年俸総額上限)が、概ね「8300万USドル(およそ94億円)」にアップする(今季は7950万USドル)見込みになったことを、現地のメディアが報じました

▼最大の注目はシアトルの新規加盟

 この決定に関しては、31チームのうち、24チームがホームタウンを置くアメリカの好景気が続いていることから、サラリーキャップがアップすると、事前に多くのメディアが報じていただけに、「予想どおり」の結果と言えます。

 その一方で、今回の代表者会議で最も注目を集めた議題は、「シアトルの新規加盟」です。

▼NHL32番目のチームへ名乗り

 NBAのスーパーソニックスが、オクラホマシティへ移転したあと、本拠地だったキーアリーナでは、ジュニアのアイスホッケーや、WNBA(女子バスケットボール)の試合しか(定期的に)観戦することができなくなってしまいました。

 しかし、近年になって、キーアリーナのリノベーションなどを含めた、再開発プランが提案され、「再びトップスポーツチームをキーアリーナへ」との気運が一気にアップ!

 NHLで32番目のチームのホームタウンに、名乗りを上げたのです。

【参照記事】

「キーアリーナ改修へ! シアトルにNHLチーム誕生? NBAチーム復活か?」 <前編><後編>

▼NHL加盟への道のりは順風満帆

 当初はホームアリーナの場所や、新設orリノベーションなどについて複数のプランが示されましたが、それを一本化して、NHLへ新規チームの加盟申請を行ったところ、昨年の代表者会議で承認されました。

 その知らせを受けたシアトルは、新チームの骨格を作るべく、ダラス スターズやアリゾナ コヨーテスのヘッドコーチを務めてきたデイブ・ティペット(57才)を、シニアアドバイザーに招へい

 新チームの舵取り役を決めたあとは、着々と準備を進めるとともに、チケット販売(デポジット)を早々に開始。

 ファンの期待は大きいようで、1万席のシーズンチケットが12分で完売するなど、シアトルのNHL加盟への道のりは順風満帆だと、誰もが疑いを持ちませんでした。

▼新規加盟は1年先送り!?

 ところが、ここへ来てシアトルの意向が変わってきた模様。

 なぜなら、当初から示してきた「2020年秋からの新規加盟」としていたプランを、「2021年秋から新規加盟」へ、1年先送りにする見通しであることが、カナダのメディアによって明らかになったからです!

▼着々と準備を進めてきたのに・・・

 前述したシニアアドバイザーの人選のみならず、加盟申請が認められてから、着々と準備が進んでいく報道に接していたシアトルのファンは、少なからず衝撃を受けた様子。

 もっとも、それもそのはずで、シアトルはアリーナのリノベーションプランも絞り込みを進め、他のチームのホームアリーナに引けをとらない、新・キーアリーナの完成予想図を発表。

新キーアリーナの完成予想図(Courtesy:@KING5Seattle)
新キーアリーナの完成予想図(Courtesy:@KING5Seattle)

 

 さらには、シーズンチケットの予約に、既に30000人以上の申し込みがあったとの報道も見られただけに、新チームの試合を心待ちにしているシアトルのファンにとって、1年の先送りは衝撃的なニュースだと言わざるを得ないでしょう。

▼1年先送りする二つの理由は?

 既定路線と思われていた「2020年秋からのシアトルの新規加盟」の青写真を修正するのには、二つの理由があるようです。

 一つは、「新しいホームアリーナの完成が、間に合わないかもしれないこと」

 前述したティペット シニアアドバイザーは「我々が行っているのは、2020年の秋からのシーズンに向けた準備だ」と話していました。

 しかし、現地のメディアによると、新しいホームアリーナの完成は、早くても2020年11月にずれ込むのが濃厚なため、拙速な始動をするよりも、準備万端整えて、翌年の開幕から臨んだほうが良いという声も聞こえている様子。

▼ロックアウトの悪夢が再び・・・

 そして、もう一つは、「NHL側(チームの運営側も含む)と選手会側が結んだ現在の労使協定が、2021-22シーズンをもって終了すること」

 現在の労使協定は、3季後の2021-22シーズン終了後に満了となりますが、細則として、NHL側、選手会側の双方が、1季早く(2020-21シーズン終了後)、それぞれ労使協定から脱退することが許されています。

 記憶に新しいところでは、年明けまでNHLと選手会の交渉が難航した6季前や、シーズンフルキャンセル(1試合も開催されなかった)14季前のロックアウト(チーム運営側の施設封鎖)の悪夢が再び繰り返されないか? と、心配するファンも、少なくないかもしれません。

 このような背景があるだけに、シアトルに誕生する予定の新チームの試合を見られるのは、予定よりも1年遅れてしまうかもしれません。

<12月5日付追記>

 本文で紹介したとおり、シアトルが当初の目標としていた再来季(2020-21シーズン)からではなく、3季後(2021-22シーズン)に新規加盟すると発表。

 これに伴い、シアトルがパシフィックディビジョンに所属し、アリゾナ コヨーテスが、パシフィック ディビジョンから、セントラル ディビジョンへ移行。

 32チームが8チームずつ4つのディビジョンに別れて戦うことになる見込みだと、現地メディアが伝えています

 

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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