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【KHL】「7か国25チーム」が争う氷上のバトルが始まる! 開幕前に知っておきたい「5つのポイント」

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
開幕カードは「カザニvsサンクトペテルブルグ」(Courtesy:@khl)

 旧ソビエト時代から続いた「スーパーリーグ」を発展解消する形で、2008年9月2日(現地時間)に最初の試合が行われたKHL(コンチネンタル ホッケーリーグ)」は、今日創設11季目の開幕を迎えます。

 ロシアをはじめ7か国から25チームが加盟し王座を争う”氷上のバトル”の開幕戦は、「AKバルス カザニ vs スカ サンクトペテルブルグ」

 「昨季の覇者(カザニ) vs 一昨季の王者」という注目の対戦が、カザニのタテニェフト アリーナで行われます。

 

▼ガガーリンカップを目指す!

 レギュラーシーズンは、オリンピック開催期間中に試合を組まなかった昨季と比べ、今季は各チーム6試合ずつ増えて「62試合」

 逆にチーム数は2つ減って25チームが、ガガーリンカップ(KHLの優勝トロフィー)を目指して戦います。

 昨季までは、勝利チームに対し最大3ポイント(勝点3)が与えられていましたが、今季からは2ポイントへ戻りました

 これによって、試合数は増えましたが、上位チームと下位チームの差が縮まって混戦になるのは必至。

 その中で、創設11季目の王座に輝くのは、どのチームなのか!?

 今季はチューリッヒ(スイス)と、ウィーン(オーストリア)でも公式戦を開催するなどの話題もあって、多くのホッケーファンが期待を高める中、いよいよ始まる11季目の戦いを前に、KHLの知っておきたい「5つのポイント」を紹介しましょう。

<1>呪われたチーム

 ホームアリーナがKHLの定めた基準を満たしていないことが、開幕目前に明らかになった アバンガルド オムスク

 いくつかのプランの中から、2600キロ離れた場所にある、既に解散したチームがホームゲームを行っていたアリーナを利用することで、どうにか一件落着! かと思われました。

 しかし、今度はチーム内で緊急事態発生。

 守護神の座を託そうと契約に至った カリ・ラモ(GK・32歳)が、膝を負傷し6か月もの長期欠場を強いられることに・・・。

 NHLのカルガリー フレイムスでヘッドコーチ(HC)を務めた際にも、守護神に起用していたラモの獲得を進言した ボブ・ハートリー ヘッドコーチ(57歳・前ラトビア代表HC)は、またまた災難に見舞われ、現地のメディアが「呪われたチーム」とまで評したほど。

ボブ・ハートリーHC(Courtesy:@prohockeyrumors)
ボブ・ハートリーHC(Courtesy:@prohockeyrumors)

 ところが、ハートリーHCは精力的!

 NHLのHC時代に培った人脈を利用して、デビット・デーハーネィ(FW・31歳/前ニューヨーク レンジャーズ)、マキシム・タルボ(FW・34歳/前ロコモーティブ ヤロスラブリ)というNHLでの実績が豊富な二人を、すぐさまチームに呼び寄せ契約に至りました

 HCと直接英語でコミュニケーションをとれる大きな利点があることから、来月3日に始まるNHLのレギュラーシーズンを目前に、開幕ロースター入りを逃した選手を、さらに招くことも予想され、むしろ戦力が充実しそうな気配です。 

<2>フューチャースター

 ソビエト時代から、卓越したスキルを持つ選手を多く輩出しているロシアから、またまた新たなスター候補が現れました。

 ワシリー・ポドコルジン(17歳・FW/下の写真左)です。

ワシリー・ポドコルジン(Courtesy:@HlinkaMemorial)
ワシリー・ポドコルジン(Courtesy:@HlinkaMemorial)

 先月に行われたジュニアの国際大会(「フリンカ・グレツキーカップ」)でも、ハットトリックを達成するなど(3ゴール1アシスト)、NHLチームのスカウトの視線を釘付けにするプレーを披露!(赤#19)

 今季からスカ サンクトペテルブルグ傘下のジュニアリーグ(MHL)のチームで、プレーをする見込みですが、頭角を現してKHLデビュー!

 そして来年のNHLドラフトで全体1位指名!との声も聞かれるスター候補です。

<3>帰ってきたポイントゲッター

 将来のスター候補に続いて、かつてNHLのファンから注目を浴びた二人の選手も、お忘れなく!

 まず一人目は、ワシントン キャピタルズ在籍時に40ゴールを記録するなど、NHL屈指のポイントゲッターとして名を馳せた アレクサンダー・セミン(ショーミン/FW・34歳) です。

 カロライナ ハリケーンズへFA移籍をしてからは振るわず、現役引退を表明し、一時は大学生となったものの、再びアイスホッケーの道へ。

 昨季は下部リーグ(VHL)のチームでもプレーをしていましたがKHL復帰を決意してヴィチャス パドロスクのトレーニングキャンプに参加し、2季ぶりのKHL復帰を目指しています。

 さらに、もう一人、今季から祖国のロシアでプレーするのが、ネイル・ヤクポフ(FW・24歳)。

エドモントンからドラフト全体1位指名を受けながら期待に応えられず祖国に帰ってきたネイル・ヤクポフ(Courtesy:@TSNHockey)
エドモントンからドラフト全体1位指名を受けながら期待に応えられず祖国に帰ってきたネイル・ヤクポフ(Courtesy:@TSNHockey)

 ジュニア時代にポイントゲッターとして鳴らし、エドモントン オイラーズからドラフト全体1位指名を受けながら、NHLでは期待に応えられず祖国に帰ってきたとあって、捲土重来を期したいところ。

 NHL復帰を果たした イリヤ・コバルチャク(FW・35歳/ロサンゼルス キングスFW)の穴を埋める働きが求められます。

<4>新天地で開幕

 7か国の25チームが加盟しているKHLでは、国境を越えて異なる国のチームへ移籍する選手も、珍しくはありません。

 カザフスタンからKHLに唯一加盟しているバリス アスタナでキャプテンを務めたのとともに、得点王に3度も輝いた ナイジェル・ダウズ(FW・33歳)は、7季にわたってプレーしたチームに別れを告げ、ロシア中部に本拠を構えるアフトモビリスト エカテリンブルグへ移籍。

 青いアスタナのユニフォームを脱いで、今季から赤いジャージに袖を通した男は、新天地でも得点王に輝けるでしょうか?

 

エカテリブルグへ移籍したナイジェル・ダウズ(Courtesy:@IHCAvtomobilist)
エカテリブルグへ移籍したナイジェル・ダウズ(Courtesy:@IHCAvtomobilist)

 対して、こちらはロシアのチームから、別のロシアのチームへの移籍でしたが、見逃せないのが ユリウス・フダチェク(GK・32歳)

 

勝利した後の「フダショー」でファンを沸かせたユリウス・フダチェク(Courtesy:@Lapparn)
勝利した後の「フダショー」でファンを沸かせたユリウス・フダチェク(Courtesy:@Lapparn)

 昨季までセベスタル チェレポヴェツのゴールを守ったのに加え、「フダショー」と呼ばれ、ファンが楽しみにしていた試合後のショータイムで、ファンを沸かせていた選手です!

 

 ”氷上のエンターテイナー” とも称されるスロバキア生まれの守護神は、このオフにスパルターク モスクワへ移籍。

 「ファンの人たちが求めているのなら、フダショーは続けたい」と、新天地でも話していましたが、1946年に創設した名門チームでも ↓ このような試合後のパフォーマンスを披露するのでしょうか?

<5>親子が一緒にプレーする!?

 メタルーグ マグニトゴルスクのプレシーズンゲームで、大きな話題になったのが ↓ こちらのシーン。

父のデニス(手前)と息子のブラトノフ親子が一緒にプレー(Courtesy:@KHL)
父のデニス(手前)と息子のブラトノフ親子が一緒にプレー(Courtesy:@KHL)

 手前側でプレーしている選手(#39)が、父親の デニス・ブラトノフ(FW・36歳)。奥に写っている選手は、息子の ユーリ・ブラトノフ(FW・18歳)。

 19歳離れた(父のデニスは11月生まれ)親子なのです!

 NHLドラフトで指名され、ロシア代表のプレー歴もある父親に対し、息子のユーリは、まだMHLでのプレーキャリアしかなく、KHLデビューの日へ向けて腕を磨きたいところ。

 マグニトゴルスクには、リーグの通算ポイント記録を持ち「ミスターKHL」と呼ばれる セルゲイ・モジヤキン(FW・37歳)と、息子の アンドレイ・モジヤキン(FW・17歳)の親子も在籍。

 こちらも息子のアンドレイは、まだMHLでレベルアップに勤しんでいる段階ですが、モジヤキン親子が一緒のリンクでプレーする試合を、ファンは待ち望んでいるに違いありません。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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