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【KHL】レギュラーシーズン中盤戦▼王者が独走!▼ミスターKHL負傷!▼初めてロシア勢が優勝を逃す?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
開幕から独走するスカサンクトペテルブルグ(白・Courtesy:@hcSKA)

 ロシアをはじめ7か国から27チームが集うKHL(コンチネンタルホッケーリーグ)は、創設10年目のレギュラーシーズンが中盤に差し掛かりました。

▼独走する王者・スカサンクトペテルブルグ

 開幕から話題の中心となっているチームは、何と言ってもスカサンクトペテルブルグ

 昨季のプレーオフを制して2季ぶりに王座へ返り咲き、二度目のガガーリンカップ(=KHLの優勝カップ)を勝ち取りましたが、今季は”王者”の名に違わぬ圧倒的な強さを発揮。

 3季前に自らが打ち立てた「開幕13連勝」を大きく上回り、「開幕20連勝」のロケットスタート。

 (開幕からに限らず)KHL創設以来の最長記録となる連勝で勢いに乗った王者は、ここまで首位を独走しています。

▼攻撃力で他チームを圧倒

 サンクトペテルブルグの強みは図抜けた攻撃力で、1試合の平均得点は「4.4点」(現地時間昨夜の試合終了時)。

 平均得点が4点を上回っているのは、全27チーム中、サンクトペテルブルグしかありません。

 NHLで得点王に輝いた経歴を持つイリヤ・コバルチャク(FW・34歳)を筆頭に、ポイント(ゴール+アシスト)を量産しているニキタ・グゼフ(FW・25歳)ら、オフェンス力の高いFWがズラリ。

 DFに目を転じても、強力なシュートを武器に(DFでは)最多得点をマークしているパトリック・ハースリー(31歳)らが攻撃の核となり、ケガで戦列を離れているキャプテンのパベル・ダツック(FW・39歳)不在の穴を全く感じさせません。

 NHLの新チーム・ベガスゴールデンナイツと大型契約を結んだワジム・シパチョフ(FW・30歳)も、マイナーチームへの降格を通告されたのを機に、契約解除を申し入れてサンクトペテルブルグに戻ってきたことも手伝って、攻撃力で他チームを圧倒。

 ゴールラッシュで胸がすくような試合を見られるとあって、12300人収容のホームアリーナのスタンドは、常に超満員になっています。(参考:昨季の全チームの平均観客動員数は6305人)

 順位表を見れば明らかなとおり、サンクトペテルブルグは2位のチームに勝点21ポイントもの差(1試合で獲得できる勝点は最大3ポイント)をつけ、独走態勢に入っていることから、交通事故で家族が亡くなった19歳のGKに、先発出場のチャンスを与える試合も見られたほどでした。

▼三強の明暗

 一方、サンクトペテルブルグとともに、レギュラーシーズンで3季続けて全体1位の成績を残しているチェスカモスクワと、昨季までの4季で2回頂点に立ったメタルーグマグニトゴルスク「三強」と呼ばれるチームは、明暗が分かれてしまっています。

 チェスカモスクワは、サンクトペテルブルグには及ばないまでも、1試合平均「3.3得点」とリーグ2位の攻撃力を誇ります。しかし、序盤からウエスタンの上位を走り続けている理由は、二人のGKの働き。

 一昨季のベストGKに輝いたイリヤ・ソロキン(22歳・身長188センチ)と、今季からKHLを活躍の場にしたラルス・ヨハンソン(30歳・同185センチ)という二人の大型GKが、ともに平均失点1点台と抜群の安定感を誇ります。

 それだけに、サンクトペテルブルグとは対照的に、安定したディフェンス力が勝因となっています。

▼ミスターKHLが負傷

 対してマグニトゴルスクは、プレーオフ進出圏内の順位(イースタン5位=カンファレンスの8位までがプレーオフ進出)をキープしているものの、昨季までと違って上位進出には至っていません。

 波に乗れずにいたところに追い討ちをかけたのが、ポイントゲッターのセルゲイ・モジヤキン(FW・36歳)の負傷。

 リーグの歴代最多ポイント記録保持者で”ミスターKHL”とも呼ばれ、昨季のMVPに輝いた頼れるキャプテンの戦線離脱は、11月に入ってアシスタントコーチから昇格したばかりのビクトル・コズロフ ヘッドコーチ(HC)にとっても、頭が痛いはず。

 近年にない苦戦を強いられているマグニトゴルスクは、どのように巻き返していくのか、注目されます。

▼ロシア以外のチームが躍進

 苦戦を強いられているマグニトゴルスクと対照的に、今季はロシア以外のチームの躍進が光っています。

 まずイースタンカンファレンスでは、カザフスタンから唯一参戦しているバリスアスタナ(ウエスタン6位)

 チームの顔は、NHLでプレーしたあと、6季前からアスタナを活躍の場としているナイジェル・ダウズ(FW・32歳)。身長172センチと、サイズに恵まれていないにもかかわらず、ただ一人、30ゴールをマークして(2位のコバルチャクは25ゴール)得点王への期待も高まります。

 ダウズはカナダ出身ながら、国籍を取得してカザフスタン代表としても活躍中。

 今季は1月10日から14日に予定されている「オールスターウィーク(KHLのオールスターゲームとスキルズコンペティション、女子選手とジュニアのオールスターゲームなどが開催される予定)」のホストシティに初めて選ばれるなど、明るい話題の多いカザフスタンのホッケーファンを、さらに沸かせてくれるのでしょうか?

 同じくイースタンでは、NHLとKHLで優勝したキャリアを誇るマイク・キーナンHCを招へいして躍進が期待されながら、低迷が続いているクンルンレッドスター(11位)と好対照なシーズンになっています。

▼初優勝を狙うヨケリトヘルシンキ

 アスタナにも増して、明るい話題が多いのは、フィンランドから唯一参戦しているヨケリトヘルシンキ

 ウェイン・グレツキーとともに、NHLエドモントン オイラーズの黄金時代の中心選手だったヤリ・クリ(57歳・現GM)や、今年アイスホッケー殿堂入りしたティム・セラニ(47歳・元アナハイムダックスFW)ら、多くの名選手が育ったフィンランドの名門チームは、今季が創設50周年のメモリアルイヤー。

 節目の年を初優勝で飾るべく開幕から白星を積み重ね、ここまでサンクトペテルブルグ、チェスカモスクワに続く、ウエスタンの3位と好成績を残しています。

 なかでも多くの視線が集まっているのがエリ・トルバネン(20歳・FW)

ナッシュビルのキャンプにも参加したトルバネン(Courtesy:@TheHockeyNews)
ナッシュビルのキャンプにも参加したトルバネン(Courtesy:@TheHockeyNews)

 フィンランドのジュニア代表や、アメリカのメジャージュニアリーグでのプレーを評価され、6月のNHLドラフトでナッシュビル プレデターズから1巡目指名。

 しかし、若手選手たちのキャンプには参加(上の写真)したものの契約には至らず、祖国へ戻りヨケリトの一員になると、KHLのデビュー戦で、いきなりハットトリックを達成!

 その後もポイントゲッターとして活躍し、得点ランキングで3位につけるルーキー離れした働きを披露。

 オールスターゲームのファン投票では、前述した元NHL得点王のコバルチャクを上回る投票を集め、ここまでボブロフディビジョンのFWで第1位につけています。

▼KHL初のアウトドアゲーム

 「トルバネン」と「コバルチャク」というKHLを代表するポイントゲッターが在籍する「ヨケリト」と「サンクトペテルブルグ」は、今週末にKHL創設史上初のアウトドアゲームを戦います。

 会場となるヘルシンキ中央駅に近いカイサニエミ公園では、今月に入ってから、屋外アリーナの設営が進み、、、

 今夜からOB戦などを催し、明日の夕方に「KHLアイスチャレンジ」と銘打った戦いがフェイスオフ(試合開始)!

 今季のガガーリンカップの行方を占う戦いになるかもしれない「KHLアイスチャレンジ」は、どちらのチームが勝利を収めるのか!?

 当日は雨の降る時間帯もある予報のようですが、ヘルシンキの夜は大いに沸き上がりそうです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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