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ロシア屈指のハードシューター アレクサンダー・セミン(33歳)が引退を決意。第二の人生は大学生!!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
アレクサンダー・セミン(Photo : Jiro Kato)

 NHLをはじめ世界のアイスホッケー界は、ほとんどのプロリーグがオフシーズンの真っ只中。

 大型契約を結び、新たなチームで迎える開幕に備えている選手が見られる一方で、現役生活にピリオドを打つ選手も見られます。

 昨日配信したついにヤーガも現役続行を断念!? <仕事にあぶれるアラフォーたち・NHLの場合>では、チェコ出身の ヤロミール・ヤーガ が、引退の危機に直面している現状を紹介しましたが、今日紹介するのは、ロシア生まれのFW アレクサンダー・セミン(ショーミン・33歳)の話題です。

▼屈指のハードシューター

 シベリアの中部にあるクラスノヤルスクで生まれたセミンは、2002年のNHLドラフトで、ワシントン キャピタルズから1巡目(全体13位)指名を受け、2003年秋にNHLデビュー。

 低迷が続いていたチーム事情も幸いして、多くのプレータイムを与えられ、ルーキーシーズンから二ケタ得点をマークしました。

 そんなセミンの魅力は、何と言っても「強烈なシュート」!

 スティックを大きく振りかぶって放つスラップシュートや、

 手首の強さを武器にしたリストシュートなどを武器に、次々とチームに得点をもたらせました。

▼オベチキンとの二枚看板

 ワシントンは、セミンを指名した3年後のドラフトでも、同じくロシア人FWのアレックス・オベチキン(31歳)を全体1位で指名。

 世代交代期に差し掛かっていたワシントンで、セミンとオベチキンは「オフェンスの二枚看板」として得点を量産。

 チーム創設35季目にして、初めてプレジデンツトロフィー(レギュラーシーズン最高成績)を勝ち取る原動力になりました。

 

オフェンスの二枚看板となっていたセミン(左)とオベチキン(Photo:Jiro Kato)
オフェンスの二枚看板となっていたセミン(左)とオベチキン(Photo:Jiro Kato)

▼カロライナへ移籍

 しかし、2011年11月にチームが失速したため、ワシントンは指揮官を交代

 新たに就任したデイル・ハンター ヘッドコーチ(HC)は、これまでと異なり、セミンやオベチキンにも、ディフェンス面での働き強く要求。これがセミンにとっては “ケチのつけ始め” となってしまい、成績がダウン・・・。

 シーズン終了後、ハンターHCは再契約の要請を断って、ワシントンを離れましたが、制限なしFA権を手にしたセミンも、カロライナ ハリケーンズへ移籍しました。

▼バイアウト→マイナー降格→ロシアへ帰国

 ワシントン在籍時には40ゴールを記録したこともあるだけに、新天地でセミンのゴールラッシュに、カロライナのファンは大きな期待を寄せました。

 ところが、チームのシステムにフィットしきれず、ゴールラッシュは見られずじまい。移籍3季目に至っては、わずか6ゴールしかマークできず、シーズン終了後にバイアウト(残りの契約をチームが買い取って放出)されてしまう羽目に。

 翌年はトライアウトを受けて、モントリオール カナディアンズと契約したものの、15試合に出場して1ゴールしか決められず、マイナーリーグ(AHL)への降格を告げられたセミンは、契約解除を要求。

 これにモントリオールも同意したことから、セミンはロシアへ帰国し、今度は「KHLの三強」の一つに数えられるメタルーグ マグニトゴルスクと契約を結びました。

▼ガガーリンカップ獲得が最後の晴れ姿に!

 祖国へ戻って強豪チームの一員となってからも、しばらくの間は本来のプレーが見られなかったセミンでしたが、プレーオフに入ると本来の働きを披露。

 全盛期に見られた強烈なシュートを見せつけて、決勝点をマークするなど、ガガーリンカップ(KHLの優勝トロフィー)獲得に大きく貢献しました。

 しかし、これがセミンの最後の晴れ姿に・・・。

 今季のプレーオフでは無得点(18試合出場)と、目立った働きが見られず、連覇を逃したメタルーグだけでなく、他のチームからもオファーが届かなかったため、現役引退を決意したようです。

▼第二の人生は大学生

 ロシアのニュースサイトによると、セミンは故郷に近いシベリア連邦大学への入学を志願し、非鉄金属材料研究を専攻したい考えだとのこと。

 その一方で、大学側はインスタグラムを通じて、「私たちの大学はアイスホッケーチームを強化します」とコメントしているだけに、アマチュアながら ”大学生・セミン” のプレー姿は、これからも見ることができるかもしれません。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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