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【NHL】「スタンレーカップの世界旅行」は、“悲劇の舞台となった町”でクライマックスを迎える!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
ニクラス・バックストローム ファミリー(Courtesy:@Capitals)

 昨季のNHLを制し、チーム創設44季目にして初優勝を達成した ワシントン キャピタルズ

 チャンピオンに輝いたご褒美として、選手、コーチ、チームスタッフらは、スタンレーカップ(NHLの優勝トロフィー)を、(およそ)24時間独占して過ごすことができるとあって、故郷や育った町などで、思い思いの一日を楽しんでいるようです。

▼史上初めてデンマークに凱旋!

 卓越したプレーメイクが光る ニクラス・バックストローム(FW・30歳/タイトル写真)をはじめ、ワシントンにはヨーロッパ生まれの主力選手が多いことから、スタンレーカップは、文字どおり世界旅行を続けています。

 その中で特筆されるのは、1917年のNHL創設以来、史上初めてスタンレーカップがデンマークへ凱旋したこと!

 デンマーク人で最初にスタンレーカップに名前を刻んだのが、 ラルス・エラー(FW・29歳)です。

デンマーク人で最初にスタンレーカップに名前を刻んだラルス・エラー(Courtesy:@IIHFHockey)
デンマーク人で最初にスタンレーカップに名前を刻んだラルス・エラー(Courtesy:@IIHFHockey)

 実はエラーの父親のオラフ(58歳)も、現役時代はデンマーク代表のFWとしてプレー。

 引退後は指導者に転じ、デンマークのU20(20歳以下)、U18代表チームのヘッドコーチを務めているホッケーファミリーとあって、故郷のメディアに大きく取り上げられていただけでなく、デンマーク駐在のアメリカ大使からも祝福を受けました。

▼ドイツ人GK最後の姿

 一方、同じくヨーロッパでは、ドイツ出身の フィリップ・グルバウワー(GK・26歳)は、これがワシントンの一員として最後の姿になりました。

ワシントンのメンバーでは最後の姿となったフィリップ・グルバウワー(Courtesy:@keeperofthecup)
ワシントンのメンバーでは最後の姿となったフィリップ・グルバウワー(Courtesy:@keeperofthecup)

 というのも、今季終了後、コロラド アバランチへトレードされたからです。

 ドイツ代表のゴールを守り、日本代表の「ピョンチャン(平昌)オリンピック」出場への道を断ちきった働きを見せたこともあるGKは、コロラドの守護神の座を狙います。

▼オフも主役は、やっぱりこの男!

 紹介した他にも、ロシア人最高の選手に選ばれた エフゲニ・クズネツォフ(FW・26歳)や、攻守両面で活躍した ドミトリー・オーロフ(27歳・DF)ら、ロシア出身選手の故郷を回り、スタンレーカップの世界旅行は、北米へ戻りましたが、スポーツファンの視線を再び集めたのは、他ならぬ アレックス・オベチキン(FW・32歳)

 キャプテンとしてチームを頂点に導く働きを評価され、コンスマイス トロフィーを手にした上に、全てのスポーツアスリートの中から、男性の最優秀選手に輝くなど、オフも主役として話題の中心に!

 そんなオベチキンが、またまた話題となっています。

 と言っても、今度はアスリートとしての話題ではなく、、、パパになったのです!

 

▼亡き兄の名前を第一子に

 背番号が「8」だからなのか(?)、2018月18日(現地時間)に生まれた第一子(男の子)のファーストネームを、幼い頃に亡くなった兄と同じ「セルゲイ」と命名。

 今季からレギュラーに定着した ジェイコブ・ブラナ(FW・22歳)も、昨季の途中に亡くなった祖母の墓の前にスタンレーカップを持参して、優勝報告をするなど、選手たちはそれぞれの想いを胸に抱きながら、スタンレーカップを目指して戦っていたようです。

▼悲劇の舞台となった「あの町」でクライマックスを迎える!

 ロシアからヨーロッパ各国を周ったスタンレーカップは、再びカナダへ。

 スタンレーカップの世界旅行も残り少なくなり、西部のブリティッシュ コロンビア州から、東へ向かう予定ですが、このあと悲劇の舞台となってしまった町で、文字どおりのクライマックスを迎えます。

 その町の名は、「ハンボルト」

▼悲劇を乗り越え新生・ハンボルト始動へ !!

 カナダ中部のハンボルト(サスカチュワン州)をホームタウンに、ジュニアリーグ(SJHL)に加盟している ハンボルト ブロンコスの選手たちを乗せたバスが、4月6日に衝突事故に遭い15人が亡くなりました。

 しかし、悲劇を乗り越え、新たなチームを結成。

 そのシンボルとして、GM兼ヘッドコーチ(HC)に、サスカチュワン州の生まれで、NHLやKHLでプレーしたキャリアを有する ネイサン・オイストリック(35歳・前コロラド ハイスクールアカデミーHC)を招き、新生・ハンボルトの舵取りを託しました。

 さらに、新たなトレーナーと選手たちを加え、来月12日にホームアリーナでの開幕戦へ臨みます!

▼NHL優勝メンバーの粋な計らい

 新生・ハンボルトの船出に先駆け、ワシントンの優勝メンバーの チャンドラー・スティーブンソン(24歳・FW/下の写真)は、自らの故郷のサスカトゥーン(サスカチュワン州)ではなく、東に100キロあまり離れたハンボルトへ出向いて、スタンレーカップを披露すると発表。

チャンドラー・スティーブンソン(Courtesy:@globaltvsports)
チャンドラー・スティーブンソン(Courtesy:@globaltvsports)

 この粋な計らいにNHLとNHL選手会も賛同し、ハンボルト ホッケーデーと銘打ったイベントが、大々的に開催されることになりました。

 当日はスティーブンソンも手にしたスタンレーカップが、ハンボルトにもやって来る予定。

 人口6000人弱の小さなホッケータウンは、大きな歓声に包まれるに違いありません。

 悲劇の舞台となってしまった町で、スタンレーカップの世界旅行はクライマックスを迎えます。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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