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【NHL】4年130日ぶり二度目の先発で初勝利を手にしたGKが師と仰ぐのは、日本代表の元守護神!!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
日本代表のゴールを守ったダスティ・イモオ(Photo:Jiro Kato)

 NHLのレギュラーシーズンは、26日(現地時間)のトレードデッドラインを過ぎて、終盤戦に入りました。

▼地味なトレード(!?)に終わったロサンゼルス

 大物選手の移籍も多く見られた一方で、大きな動きが見られなかったのが、ロサンゼルス キングス

 元得点王のジャローム・イギンラ(FW・40歳/今季は所属チームなし)や、タンパベイ ライトニングの守護神を務めていたベン・ビショップ(GK・31歳/現ダラス スターズ)ら主力選手を補強した昨季から一転、他チームのファンにも名の知られたビッグネームの獲得は、トロント メイプルリーフスでキャプテンを務めたことのあるディオン・ファヌフ(DF・32歳/前オタワ セネターズ)だけ。

 現地のメディアからは、今季から新たにロブ・ブレイク(48歳・元サンノゼ シャークスDF)がGMに就任して、「地味なトレードに終わった」との声も聞かれたそうです。

▼マイナーリーグのメインGK

 しかし、その一方で大物選手の移籍がなかったことでチャンスが巡ってきたのが、 ジャック・キャンベル(26歳)

ジャック・キャンベル(Courtesy:@TheAHL)
ジャック・キャンベル(Courtesy:@TheAHL)

 

 プレー写真を見て気づかれた方も、いらっしゃると思いますが、今季のキャンベルの役割は、NHLの一つ下のリーグに相当するAHLのアフィリエイトチームのオンタリオ レインのメインGKです。

▼ダラスにドラフト1巡目指名

 キャンベルのキャリアを振り返ると、アメリカのジュニア代表でのプレーぶりを評価され、ドラフト1巡目(2010年全体11位)でダラス スターズに指名されながら、なかなか頭角を現すことができずにいました。

 トレードによって、昨季からロサンゼルスの一員になり、心機一転巻き返しを狙ったものの、コンスマイス トロフィー(プレーオフMVP)を獲得した実績を誇るGKの ジョナサン・クイック(32歳)が守護神として君臨していることから、開幕目前にオンタリオへの降格指令・・・。

▼日系人コーチと運命の出会い

 しかし、そこで出会ったのが、 ダスティ・イモオ(日本名・芋生ダスティ)コーチ(左・47歳)でした。

GKの指導にあたるダスティ・イモオ(Courtesy:@ReignInsider)
GKの指導にあたるダスティ・イモオ(Courtesy:@ReignInsider)

 カナダ出身ながら、長野オリンピック日本代表の強化を目的に来日した日系外国人選手の中で、唯一のGKだったイモオは、12季にわたって日本のチーム(西武鉄道と王子製紙)でプレー。

 引退後は北米へ戻ってコーチに転身。4季前からアフィリエイトチームも含めたロサンゼルスのGKコーチを務め、昨季は(一時的ながら)現役に復帰。

 父親と同じGKの息子のジョナとともに、親子でオンタリオの試合に名前を連ねた試合もありました!

 残念ながら息子のジョナは、アフィリエイトも含めたロサンゼルスのチームに残れませんでしたが、キャンベルはイモオコーチから指導を受けたことで才能が開花。

 昨季はAHLのオールスターゲームに出場するほどの活躍を見せました。

▼コーチへの感謝の気持ち

 キャンベルが出場したAHLのオールスターゲームでは、NHLと同様に出場選手が馴染みのある自チームでつけている背番号でプレーします。

 しかし昨季のキャンベルは、辞退した選手の代替出場だったため、オンタリオでつけていた背番号「1」が、既に他の選手のユニフォームに。

 AHLから「代わりの背番号を選んで欲しい」との依頼を受けると、キャンベルは迷わずイモオコーチが現役時代に背負い続けた「70」をリクエスト。

 晴れの舞台で感謝の気持ちを表したのです!

AHLのオールスターゲームで背番号「70」を選んだキャンベル(Courtesy:@InGoalMedia)
AHLのオールスターゲームで背番号「70」を選んだキャンベル(Courtesy:@InGoalMedia)

▼4年130日ぶりの先発で初勝利!!

 今季もオンタリオでのプレーが続いていたキャンベルでしたが、昨夜のベガス ゴールデンナイツ戦で、ダラス在籍時の2013年10月20日以来、実に「4年130日ぶり」となる「NHL2度目の先発マスク」を言い渡されると、高い攻撃力を誇るベガス相手に41セーブ(1失点)の大活躍で、初勝利を飾りました。

 吉報を耳にしたイモオコーチも、自らのツイッターでキャンベルを祝福。

 祝福を受けたキャンベルの背中には、NHLのGKになる夢は叶わなかったイモオ親子の大きな期待が、託され続けていくに違いありません。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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