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長野五輪開幕から20年!現役唯一の金メダリスト・ヤーガが46歳の誕生日を前にチェコへ帰国した真相は?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
今季はカルガリーでプレーしたヤーガ(Courtesy:@TSNHockey)

 今季のレギュラーシーズンが開幕した10月4日(現地時間)に、「年俸100万USドル(およそ1億1300万円=契約当時のレート)+(成績によるボーナス)100万ドルの1年契約」をカルガリー フレイムスと結び、NHLで9チーム目のジャージに袖を通した ヤロミール・ヤーガ(45歳・FW)

 20年前の今日(1998年2月7日)開幕した長野オリンピックの金メダリスト(アイスホッケー競技)の中で、ただ一人現役でプレーをし続け、来週(15日)には46歳の誕生日を迎える”氷上のレジェンド”は、NHLでのキャリアにピリオドを打ち、今月初めに祖国のチェコへ帰国しました。

▼ヒザの痛みで年明けは出場なし

 今季のヤーガを振り返ると、なかなか新たなチームが決まらずにいましたが、レギュラーシーズンの開幕日に、ようやくカルガリー フレイムスと1年契約

 「どこのチームでプレーをしても彼を応援し続ける!」という熱狂的なファンにも祝福され、ヤーガは(NHLで)24季目の開幕を迎えました。

 ファンはもちろんのこと、1990年のNHLデビュー以来、初めてカナダのチームと契約を結んだとあって、メディアからも大注目されましたが、コンディション調整のため、開幕から3試合欠場。

 ようやく4試合目のロサンゼルス キングス戦で、カルガリーのジャージを身にまといデビューを飾ったものの、ヒザの痛みなどに悩まされ、12月31日の試合を最後に戦線離脱・・・。

 今季の成績は「22試合出場1ゴール6アシスト」

 全盛期を知るファンからすれば、さびしい限りの成績で、NHLでのプレーにピリオドを打ちました。

▼マイナーリーグ降格でなくチェコへ帰国

 NHLでは試合出場が困難な負傷者が出た場合、負傷者リストに当該選手を公示することにより、サラリーキャップ(チーム年俸総額上限)の対象から外し、空いたキャップスペースを利用して戦力の補充を行います。

 しかし今回のヤーガの戦線離脱は、負傷者による戦力補充のために行ったものではありません。

 その証拠にカルガリーは、契約期間中のヤーガを負傷者リストに掲載したり、傘下のアフィリエイトチーム(NHLの一つ下のリーグに相当するAHLのストックトン ヒート)へ降格させず、ヤーガ自身の希望を汲んで、故郷のチェコにあるクラドノへのレンタル移籍を行ったのです。

▼ヤーガが買い支えている故郷のチーム

 チェコの中部に位置するクラドノは、ヤーガの故郷。

 自らもクラドノのジュニアチームで腕を磨いて、ピッツバーグ ペンギンズにドラフト1巡目指名されるに至っただけにとどまらず、財政難に苦しむ”おらが町のチーム”を自らが買い支え、オーナーを務めています。

▼ヤーガがいても厳しい財政・・・

 しかし、ヤーガのネームバリューがあっても、大きな都市でないクラドノをホームタウンとしているチームは、厳しい財政事情を強いられ続けています。

 そのためヤーガは、3季前から毎年春に開催されている世界選手権への出場をはじめ、チェコ代表でのプレーを辞退

 NHLのシーズン終了後は、自らの知名度の高さを強みにしてオーナー職に就き、クラドノの運営資金集めに尽力し続けています。

▼昇格のチャンスを迎えたクラドノ

 トップの14チームが所属するエクストラリーグ(1部)に次ぐ、2部リーグに所属するクラドノは、ここまで好成績(3位)を残し、地元ではエクストラリーグ復帰への期待が高まっています。

 エクストラリーグに昇格すれば、チケット販売やスポンサー企業の注目度が高まり、チームの運営に大きなプラスをもたらせるのは明らか。

 それだけに、5季ぶりの昇格へのチャンスを逃すわけにはいきません。

 先月30日にクラドノへの移籍が発表され故郷のチームに戻ったヤーガ(下の写真左)は、すぐさま今月3日の試合に出場すると、3つのアシストをマークして勝利の立役者となりました。

▼ヤーガのチームの命運はヤーガ自身が握っている!

 昇格を懸けたプレーオフに出場するには、当該シーズンに15日以上登録された選手でなくてはならないため、クラドノは今月24日の最終戦までヤーガを登録し続けることが確実視されます。

 これからのヤーガはクラドノのオーナーとしてではなく、経験豊富な貴重な戦力として、自らの働きが自らのチームの命運を握る存在に。

 長野オリンピックの開幕から、今日で20年!

 チェコの金メダルメンバーの中で、今も尚、現役選手としてプレーしている唯一の男には、多くの視線と大きな期待が集まります。

自らのチームの命運を握るヤーガ(Courtesy:@RytiriKladno)
自らのチームの命運を握るヤーガ(Courtesy:@RytiriKladno)
フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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