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【パラアイスホッケー】最終予選の初戦勝利で平昌へ一歩前進! 勝利の立役者はパラリンピックを知らない男

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
昨年の世界選手権で準優勝したパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)日本代表(写真:アフロスポーツ)

 開幕まで、あと5か月となったピョンチャン(平昌)パラリンピックの出場権獲得を目指すパラアイスホッケー(旧アイススレッジホッケー)日本代表は、今月4日にスウェーデンのエステルスンドへ向け、成田空港を出発

 かねてから親交の深いノルウェー代表から5人のメンバーを招き、3日間の直前合宿を行って最終調整を済ませ、昨夜(現地時間)の初戦に挑みました。

▼ドイツ相手に白星スタート!

 5チームが総当たりして、上位3チームが出場権を手にできる今大会で、日本が初戦で顔を合わせたのは、昨季の世界選手権(Aプール)で7位のドイツ

 昨年11月の世界選手権Bプールで準優勝した日本と入れ替わって、Aプールから降格したチームが相手でしたが、6-2 のスコアで快勝!  

 

 2大会ぶりのパラリンピック出場へ向け、幸先の良いスタートを切りました。

(試合の記録は大会の公式サイトを、ご覧ください)

▼女神が微笑んでくれた?

 今大会に先駆けて、キャプテンの須藤悟(46歳・DF 北海道ベアーズ所属)に、対戦国の印象を聞いた際、「良い時と良くない時があるチームで、大会の後半になるとチームの状態を上げてくる」と、ドイツを評していました。

 そのドイツと初戦で顔を合わせたのは、勝利の女神が日本へ微笑んでくれたのかもしれません?

▼FW熊谷昌治が2得点

 日本の選手の中で活躍が際立っていたのは、FWの熊谷昌治(くまがい まさはる 42歳・長野サンダーバーズ)

 試合開始直後の31秒に、流れを引き寄せる先制ゴールを決めたのに続いて、第2ピリオドにもドイツに引導を渡す5点目のゴールを決めて、勝利に大きく貢献。

 熊谷の活躍もあって、6-2のスコアで今後の戦いを左右する大事な初戦で白星を手にしました。(下の動画でゲームハイライトをご覧いただけます)

▼勝利の立役者は銀メダルに誘われた男

 熊谷がパラアイスホッケーに取り組むようになったのは、長野パラリンピックから日本代表の主力として活躍している吉川守(47歳・FW 長野サンダーバーズ)が、新しい選手を勧誘しようと車イスバスケットの会場を訪れた時に、声を掛けられたのがキッカケ。

「(吉川に)銀メダルを見せてもらったのが、パラアイスホッケーをやろうと思った一番の決め手です」

 熊谷の強い意気込みと裏腹に、プレーを始めて間もない頃は、「バランスがとれなくてコケてばかりでした」と苦笑いしていました。

 しかしスケーティングの基本を吉川からマンツーマンで教えてもらった成果が現れ、今では日本代表の主力を担う存在に!

 「常にリンク上でプレーしている日本代表の主力選手になることが目標」だと話していた言葉を、現実のものとしました。

▼ソチ予選の悔しさを晴らすために

 「バイクの事故を起こした時は、目の前が真っ暗になりましたけれど、前向きな気持ちでソチを目指します!」

 日本代表の合宿に招かれるようになって間もない頃に話を聞くと、生き生きした表情で、このように話していた熊谷。

 残念ながら、目指していた「ソチ」の出場権は逃してしまっただけに、悔しさを晴らしたい気持ちは、一際大きいに違いありません。

 誰よりも”パラリンピック出場への想いが強く”、そして”パラリンピックを知らない男”が、勝利の立役者となった日本。

 次はスウェーデン(昨季の世界選手権Aプール6位)と、顔を合わせます。

 尚、日本時間19時開始予定のスウェーデン戦も含めた全試合の模様は、国際パラリンピック委員会の You Tube チャンネルで、ライブストリーミング(生配信)の予定です。

<12日付追記>

 大会3日目を終えた時点で、日本が3位以上になることが確定し、2大会ぶり5度目のパラリンピック出場を決めました。

 障がい者スポーツを長年取材されている「MAスポーツ」によると、国際パラリンピック委員会は、「出場権獲得の3枠すべてが確定してから正式発表の見込み」とのことです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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