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【パラアイスホッケー】韓国が強豪カナダに善戦! 韓国の躍進は日本代表のピョンチャン出場への追い風に!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
韓国代表のエースFWチョン・スンファンPhoto : Jiro Kato)

下肢に障害を持つ者が、スレッジ(そり)に乗り、両手に持ったスティックを扱いながら戦い、冬季パラリンピックの正式競技にもなっているのが、「アイススレッジホッケー」です。

▼「パラアイスホッケー」に改称

昨年5月にモスクワで開催された国際パラリンピック(IPC)の競技総会で、従来のアイススレッジホッケーから、2018年以降は「パラアイスホッケー」名称を改めることが決定。

今季(2016-17シーズン)は名称移行期間と位置づけ、来季以降「パラアイスホッケー」へ統一するとの指針が発表されていましたが、韓国のカンヌン(江陵)で開催中の世界選手権(Aプール)では、既に大会名をはじめとする表記が、「パラアイスホッケー」に統一されて行われています。

▼ロシアの出場が認められず7か国の戦いに

世界選手権には、アメリカのバッファローが舞台となった前回のAプール(2015年4月末~5月初旬開催)で優勝したアメリカと準優勝のカナダ。さらに、銅メダルのロシアノルウェー(4位)、イタリア(5位)、ドイツ(6位)に加え、Bプールから昇格した韓国(優勝)、スウェーデン(準優勝)の8か国が参加する予定でした。

しかし、ドーピング違反によってロシアの出場が認められず、7か国による大会となって、今月12日から熱戦がスタート。

各国が1試合ずつ総当たりするリーグ戦を行い、リーグ戦の結果に基づいて、

★優勝決定戦(リーグ戦1位チーム vs 2位チーム)

★3位決定戦(同3位 vs 4位)

★5位決定戦(同5位 vs 6位)

を戦い最終順位が決定します。

▼アメリカ、カナダの二強が金メダルを争う

優勝の行方を占うと、アメリカカナダが、金メダル争いを繰り広げるのは間違いなし!

バンクーバー、ソチと二大会続けてパラリンピックを制しただけでなく、前回の世界選手権で史上初の開催国優勝を果たすなど、近年のパラアイスホッケーを牽引するアメリカは、紛争地に赴き負傷した者へのケアの一環として、ほとんどのNHLチームが、傘下にパラアイスホッケーチームも有し、選手たちのプレー環境を提供しているのが大きな強みに。

対するカナダも、「アイスホッケーが国技」だと自負する “ホッケー大国” とあって、アメリカと同様に垣根を設けず、パラアイスホッケーの強化や普及に注力しているだけに、選手層の厚さが武器。

4季前に世界選手権が韓国で開催された際は見事に優勝。縁起の良い国で再び世界一に輝き、ピョンチャン(平昌)パラリンピックでの金メダル獲得へ弾みをつけたいところです。

4季前の世界選手権で優勝したカナダ(Rights of Jiro Kato)
4季前の世界選手権で優勝したカナダ(Rights of Jiro Kato)

▼地元韓国が二強に続く

カナダと対照的に、韓国にとって4季前に開催した自国での「世界選手権」は、喜べない結果に終わりました。

なぜならホームアドバンテージを活かせず、前年の準優勝から一転、7位(8か国参加)に終わり、Bプールへ降格してしまったからです。

しかし、その後、海外遠征を増やすなどして強化に注力。2季前の世界選手権で優勝し、Aプールに再昇格したのはもちろん、今大会ではメダル争いの一角に名を連ねるほどのチーム力を誇ります。

初戦と2戦目で白星を収めて迎えた今日のカナダ戦こそ、0-2 のスコアで敗れはしたものの、大会4日目を終えた順位は「3位」

まだリーグ戦が続き、スウェーデン、イタリア、アメリカとの試合が残っていますが、アメリカを除けば、十分勝機が見い出せる相手だけに、4季前と打って変わって、自国開催の世界選手権での躍進が見込まれます。

▼韓国の躍進は日本代表への追い風に!

ところで、このまま韓国の躍進が続けば、「日本代表への追い風」になることを、ご存知でしょうか?

現在行われている世界選手権では、「8か国」が出場するピョンチャン パラリンピックの出場権うち、「5つの国」が決まります。

上位5か国に与えられるピョンチャン パラリンピックの出場権に対し、このまま韓国が5位以上の成績を残せば、開催国出場権が行使されず、最終予選で争うピョンチャンへの出場権が、1枠増えて「3つ」に。

昨年に苫小牧市で開催された「世界選手権Bプール」で準優勝し、ピョンチャン パラリンピック出場権を懸けた最終予選(開催地、開催時期は未発表)に臨む日本代表にとって追い風になるのです !!

そうと知ったら、日本のスポーツファンの中に、韓国を応援する方が増えてくるかもしれませんが、大会の模様が、IPCの You Tube チャンネルで、全試合ライブ配信されています。

この機会にパラアイスホッケーを、一度ご覧になられてみては、いかがでしょう?

また、筆者のオフィシャルサイトでは、ここ10年間にわたっての話題を、日本代表を中心に掲載してありますので、併せてご覧ください。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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