Yahoo!ニュース

「誰も取り残さない」若者たちの願うこと・週末にユース・フェスティバル開催

伊藤和子弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長
誰も取り残されないファッションショー

■ 若い世代のパワーがさく裂

 11月17日(土)に、広尾にある聖心女子大学で「世界子どもの日ユース・フェスティバル」をはじめて開催します(2018年11月17日(土) 11: 00~18:00 聖心女子大学 4号館。入場無料・オプショナルのウォークイベントは9:00から)。

 11月20日は国連が定めた世界子どもの日。これにちなんでこのイベントでは、世界と日本の子どもの未来がよりよいものであるように、また、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために自分たちが何ができるかを考えよう、というコンセプトのもとに、ユースや子どもたちに主体的に参加していただくフェスティバルです。

 若者参加型イベントであり、イベントの主体は高校生や大学生からなる実行委員会です。

「参加しませんか?」と呼びかけたところ、たくさんの若い人たちが自発的に参加してくれることになりました。

 そして、企画が進んでいくのを横から眺めていますが、驚いたことに企画がどんどん発展進化し、一日中ビッグゲストをお迎えする結果となりました。ポストミレ二アル世代、いわゆるZ世代の若者たちのパワーがさく裂すると莫大であることを改めて思い知らされています。

■ ミレ二アル世代のあとに続くZ世代とは?

 ポストミレ二アル世代、Z世代とはなんでしょうか。ミレ二アル世代が1981年から1996年までの間に生まれた世代とされることは広く知られています。一番下が大学を卒業するかしないか、という世代で、新しい様々な特徴をもっているとして注目されてきました。

 Z世代はその下の世代であり、社会貢献意識が高く、社会起業などのマインドのある世代として注目され、日経新聞はこの夏に特集記事を出しています。

「誰も取り残されない」「群を抜く社会貢献」などと紹介されていますが、まさにそのようなマインドを垣間見ることができました。

■ 昔では想像できない社会貢献スタイルの広がり

今回のフェスティバルに出展団体を募ったところ学生団体が沢山出展していますが、例えばこんな団体です。

●To2Bagプロジェクト  [学生団体] バングラデシュ原産のトートバッグ、ポーチ、クラッチバッグを販売。

●Magadipita  [学生団体] ファッション、アート、食、雑貨など、身近なものを切り口に、若者が関心を持つべき国内外の社会課題を取り上げている、学生をターゲットにしたフリーマガジンを配布。

●学生団体S.A.L. エシカルジュエリープロジェクトEthical Jewelry LULU  [学生団体]

 エシカルジュエリーブランド”EARTHRISE”とコラボしたブランド、Ethical Jewelry LULUのジュエリー販売。

●T高校生徒会  フェアトレードの麻ひもをもちいたミサンガづくりのワークショップ。

●K高校     シリア紛争の被災女性たちが生活基盤を築き上げるために製作した手芸品、アクセサリーの販売。

●Elephants rescuers  [中高生] タイに行った時、象の扱われ方についての現実を学んだ。その現実を知ってもらえるようなブースを出展する。

 自分が中学生や高校生、大学生の頃にこんなことを考えたか、例えば自らバングラデシュとつながりトートバッグを日本で販売して現地に貢献したい等と考え、行動に移したか、というとそんなことはありえなかったと思います。

 今の若者たちが、着々と前の世代を乗り越えて、社会とのかかわりをみつけだして自分も関わろうとしている、それも型にはまらない個性的なやり方で進めていることがわかります。

  

画像

  (To2Bagプロジェクト メンバー)

 大人には、是非ブースに立ち寄り、「買って応援」「聞いて応援」してほしいですね。

■ 誰も取り残さないエシカルファッションショー

 企画のなかで桁違いの盛り上がりを見せているのが、大学生サークルとNPOのコラボ企画、エシカルファッションショー(2018年11月17日(土) 13:30~14:00 聖心女子大学 4号館ブリットホール)です。

 ファストファッションの陰で起きている環境破壊や人権侵害、搾取等への影響から、エシカル(倫理的)な消費を目指す指向が欧米を中心に広がり、日本も若い世代の間では、例外ではありません。

 そして、エシカル・・倫理的な商品、フェアトレードであったり、服の製造過程で人権侵害や環境破壊をしないことについて熱くこだわっているブランド。日本にいながらにしてそんなブランドの服を選択することができる時代になりつつあります。

 そこで、もっと知ってもらおうということで、そうした服をきて颯爽とランウェイをモデルさんたちが歩くエシカルファッションショーを開催します。そして今回は「誰も取り残さない」ファッションショー(「誰も取り残さない」は国連が定めたSDGs 持続可能な開発目標のキャッチフレーズです)。

 出展ブランドはこちらです。是非、これを機会に知ってほしいと思います。

・アトリエふわり ・SkinAware・パタゴニア・itobanashi・Cherie COCO ・ Alizeti・A Scenery Beyond.・World Theater Project・MUKU ・Du’Anyam

 今回、様々な多様な立場の人たちがランウェイを歩きます。障害のある人、女性を追い続ける映画監督、LGBT当事者の方。。

その人たちの在り方を含めて、是非見ていただきたいです。

 その後のファッショントークでは、ファッション界のインフルエンサーがトークをします。

■Runway for HopeのSena Vafaさん 

   イランから難民として来日され、東北の被災した子どもたちの教育支援に取り組む。

■Tenboの鶴田能史さん       

   障害者やハンセン病の方々のための服を製作し、ファッションショーを開催するなど人権の視点に立って活動を続ける注目のブランド

■エシカルペイフォワードの稲葉哲治さん 

   エシカルブランドの普及・促進・販売を進める。

このインフルエンサーたちが今回一堂に会して「ファッションで世界を変える」というテーマで語り合います。

 この取り組みを通して思うのは、これまでの世代が、例えば途上国の貧困や労働問題等について勉強するだけ、嘆いたり非難したり、「どうしたらいいのかわからない」と無力に感じるだけでありがちだったのが、現実にその先に進んでいる、ファッションショーをやって外にアピールしたり、エシカル商品を販売する、と言った次のステップに進み、小さくても自分から変えようと動き出している、ということがいえるでしょう。ミレ二アル世代など、上の世代が少しずつ始めたことをさらに具体的に進めているのだと感じます。

■ 声をあげる中高生たち・多様性を大切に

 今回のイベントには、スーパー・グローバル・ハイスクールと言われる学校の生徒たちによる発表が予定されていて、遠く他県からもたくさんきていただき、地元の課題や、LGBTの問題、海外での国際貢献について訴えます。

 また、ヒューマンライツ・ナウが開催した中高生スピーチコンテストの入賞者もユースフェスティバルで発表の機会があったりスピーチビデオが紹介されたりします。

 入賞者のスピーチはいずれも本当に素晴らしい内容で、多くを考えさせられる内容でした。

■フィリピンにルーツを持つ男の子。兄弟はフィリピンにいて、自分は日本語、兄弟はタガログ語しか話せないが、それでも垣根を越えて交流しあうことに大きな意味があると訴える。

■ネパールから2年前に来日した女子生徒。故国ネパールで性的暴力の被害にあって殺害されてしまった少女について語り、そんな悲劇をなくしたいという思いを伝える。

■日本の女子中学3年生。小学校一年生の時に東日本大震災をテレビ等で目の当たりして大きなショックを受け、被災地のために何かしたいと思い、二年生の時から新聞のスクラップブックを始め、彼女はそれを今も続けている。現場にも足を運び、被災地ボランティアをするなど、自分なりに行動してきたことを紹介する。

■日本の女子中学生。途上国と比較した教育を受ける権利の重要性を訴える。

 入賞された子たちの中に、海外のバックグラウンドを持つ子が多いのが特徴です。

 今、海外にルーツを持つ子たちが増えています。しかし、社会の受け入れは十分ではありません。故国の現状を知って憂うこともあれば、自分を取り巻く、理解が十分でない環境に対する思いもある、それでも必死に前向きに生きよう、とする子たちが発信する姿勢は素晴らしいものであり、私たちの社会にあり方を再度考えさせられます。

 声をあげにくい社会、もっと子どもたちの「声をあげる」ことを応援していきたいですね。

  

堀潤さんのスピーチ指導を受けるコンテスト入賞者
堀潤さんのスピーチ指導を受けるコンテスト入賞者

  

■ 「誰も取り残さない」 多くの子どもたちにこそ来てほしい。

 それでも、このイベントに出展したり応募する子どもたちは一握りかもしれません。多くの子どもたちが「Z世代」と光があたる子どもたちとは異なる生活を送っているのではないか。退屈な子ども時代を送った私は想像します。

 日本では子どもの貧困、いじめを苦にした自殺等、子どもをめぐる課題はとても深刻です。フェスティバルでは、子どもの権利に関する弁護士によるワークショップ、「生きづらさ」をテーマにした、雨宮処凛さん等によるトーク等を予定していて、生きづらさや困難を抱える子どもたちに是非参加してほしい、と願っています。

 そして、プレナリートークに女優のサヘル・ローズさんをお迎えします。

  

画像

  

 今回ゲストにお呼びしたサヘルさんの生き方は、本当に壮絶です。イランの施設での苦しい生活、日本に来てからはひどいいじめを体験する、その様子は、

 「ばい菌と呼ばれ…サヘル・ローズさん「心の傷」との向き合い方」

 という記事に紹介されています。

  壮絶なイジメを耐え抜いてこられたサヘルさん。そして女優として普通なら隠したいかもしれないそんな過去をさらけ出して子どもたちに伝えようとするサヘルさんの勇気と思いに感動しました。

 今はこんなに活躍している女優さんもいじめを受け、それを乗り越えてきた事実。

 いじめを受けていることはあなたの価値をひとつも低下させることではない。未来は必ずある、と知ってもらうきっかけになればと思います。

 興味を持った方は大人でも子どもでも、足を運んでほしいし、特に「取り残されている」と感じるあなたにこそ、是非足を運んでほしい、そこから新たに交流し、出会い、新しい世代をつくっていきたい、それがZ世代の実行委員たちの願いです。

世界子どもの日ユース・フェスティバル

  2018年11月17日(土) 11:00~18:00 聖心女子大学 4号館。

  入場無料 一部トークイベントは大人のみ有料

☆オプショナルなウォークイベントは9:00スタート

弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

1994年に弁護士登録。女性、子どもの権利、えん罪事件など、人権問題に関わって活動。米国留学後の2006年、国境を越えて世界の人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウを立ち上げ、事務局長として国内外で現在進行形の人権侵害の解決を求めて活動中。同時に、弁護士として、女性をはじめ、権利の実現を求める市民の法的問題の解決のために日々活動している。ミモザの森法律事務所(東京)代表。

伊藤和子の最近の記事