日米首脳会談 世界が憂慮するトランプ政治に安倍首相はどう対処するか、安倍外交へのメディア監視はどうか

■ 安倍首相の訪米と気になる報道の在り方

安倍首相が訪米し、トランプ大統領と初の首脳会談に臨むという。

朝日新聞1月20日付には、「ゴルフ外交 狙う好発進」「批判避け、親密さ演出へ」などと、紹介されている。

この関連でヤフーのトップをみると、

日米首脳会談 3つのポイント

という記事が紹介され、

「3つのポイントについて政治部・西垣記者の解説です」と示されている3つのポイントとは、

個人的関係の構築

日米同盟の強化

ウィンウィンの経済関係

だという。

読んであきれ果てた。この三つのポイントは狭い国益のみ。官邸のレクによりこのようなフレームで報道されているのだろうが、世界が深刻に憂慮する今のトランプ政治へのアプローチとして完全にずれている。

トランプ政権が世界にもたらしている深刻な問題に日本は一切関係ない、世界の関心事に対して、自分たちは何の意見もない、かのような態度だ。とにかく、トランプ政権に気に入られ実利をとれば、それでいいのか。

■ 国際的な批判に素知らぬ顔

「対米追従」という言葉をよく聞くが、日本政府は米国政権がオレンジ色の政権であろうが黒い色の政権であろうが、そんなことはおかまいなしにとにかく追従するのか、と、トランプ政権に対する安倍政権の外交を見て、改めてあきれる。

オバマ政権でも対米追従、トランプ政権でも対米追従というのはすごいことである。

トランプ政権とオバマ政権の違いは単に共和党か民主党かという違いではない。

トランプ政権は、歴代政権とは明らかに異質であり、ポリティカル・コレクトネスに挑戦し、従来曲がりなりにも米国が大切にしてきたはずの、多様性と自由の尊重、マイノリティの尊重、世界中から移民・難民の受け入れ、言論の自由の尊重などの価値を否定する発言や大統領令とその執行を進めている。

■ 人権無視、差別排外的なトランプ政権の政策

世界はなぜトランプ政権に深刻に憂慮しているのか、毎日のように日本でも報道されているとおりだ。

トランプ政権が現在直面している最大の問題はなんといっても、中東アフリカ7か国の国民の入国を一時禁止する大統領命令。突然の命令はあまりに人種差別的で、非人道的な結果をもたらしている。

こんな閉鎖的な国でいいのか、出身国で人を差別することが公然とまかり通っていいのか、が議論になり、市民の間だけでなく、著名大企業のなかに反旗を翻す企業が続々と登場する事態となっている。

司法は大統領令に「待った」をかけ、論争は最高裁に移る。

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アメリカで7か国の人の入国を一時的に禁止する大統領令の即時停止を命じた仮処分の決定について、連邦控訴裁判所は9日、トランプ政権側の不服申し立てを退ける決定を出しました。今回の判断で、大統領令の一時停止の措置は継続されることになり、7か国の人たちの入国は引き続き認められることになります。

出典:NHKニュース(2月10日)

控訴審の決定文を見る限り、連邦控訴審の判断が覆される余地は少なそうだ。

また、入国禁止令に比べて報道は少ないものの、中絶に関する支援をする組織への支援を打ち切る「グローバル・ギャグ・オーダー」と呼ばれる大統領令も出されている。

女性の中絶の権利~をサポートする団体には、国際機関だろうと一切補助金を出さないというもので、このルールは、たとえジカ熱のような病気であろうが、レイプによる妊娠であろうが、中絶を支援するところには補助金を打ち切るというものである。

参考記事トランプ大統領、中絶に反対する大統領令に署名 そこに女性の姿はなかった

妊産婦や女性を支援する国際機関やNGOが深刻な打撃を受け、多くの女性に深刻な影響を受けることは想像に難くない。国際会議でも確認されてきた、生む生まないは女性の権利=リプロダクティブヘルスライツの考え方を著しく後退させることになる(詳しくはヒューマンライツ・ナウの声明参照)。

さらに、トランプ大統領は、「拷問は間違いなく効果的で有用だと考えている」と語り、水攻めの拷問や、CIAのブラックサイトと言われるテロ容疑者に拷問を加える秘密収容所(いずれもオバマ政権下で問題視され、中止となった)を復活する危険がある。

ワシントンポスト紙にリークされた大統領令のドラフトにはこうした恐ろしいことが書かれていたのだ。

今のところ、まだこの大統領令は発効していないが、今後現実化する危険性があり、余談を許さない。

参考トランプ大統領の政策に対する反対声明

もし、トランプ政権に批判的な米国メディアから共同会見の際に質問されたら、安倍首相はどうこたえるのであろうか。

■ 極めて残念な安倍首相のアプローチ

安倍首相はこうしたトランプ流の独裁的手法についても、人権や多様性を否定する、差別・排外的な方向性についても、特にコメントしたり異論を唱えることなく、ひたすら機嫌をとって親密になろうという姿勢のようである。

トランプ政権が引き起こし、欧州の極右政党を勢いづかせそうな、差別と排外主義の流れに対して、国際社会の一員として、独立した立場からブレーキをかける役割を果たそうなどという思いや責任感、気概といったことは表明されていない。察するに、実は考え方が近いのかもしれない。

この点、米政権と友好関係と保つ必要がありながらも、中東からの難民に対し「Welcome to Canada」というTwitterメッセージを流したカナダの首相とは違いすぎる。

日本の国益さえ守れれば、安倍首相さえトランプの寵愛を受ける存在になれれば、トランプ政権の仕打ちで泣いている人たちなんてどうでもいいというようにみえる。

そうだとすればそれは、国益を重視して実利をとる、したたかな外交なのだろうか、いや私はとても恥ずかしいと思う。

友好国である以上、最初から批判ばかりとはいかず、やり方はあるだろう。

しかし、明らかに国際法に違反し、人権を侵害する政策については、明確なスタンスを表明して、違うことは違うというべきではないのか。

■ 報道は、これでいいのか。

残念なのは、こうした外交姿勢に日本のメディアも特に疑問もなく、無批判なところである。

翻って、最初のYahooトップ「日米首脳会談 3つのポイント」であるが、官邸のこのような獲得目標について、唯々諾々と、嬉々として報じているメディアに大変寒いものを感じる。

トランプ大統領が最初に会談をしたのは英国のメイ首相。トランプ氏の渡航禁止令や拷問に関するコメントに対して、批判的なことを語らなかったメイ首相は帰国後、「トランプのプードルのようにふるまう」と国内でメディアや議員から厳しい非難を浴びせられた。

急いでトランプ政権の難民政策に賛同しない声明を出すに至ったが、トランプ氏の訪英に反対する請願署名は190万人以上にまでなっている。

メディアと世論は厳しく、英国首相がトランプ氏の人権に関わる政策に対して、追従、黙認しないかを監視している。

これに対し日本では、トランプに無批判に追従する首相、そしてそれに無批判な日本メディア、となってしまうのではないか?

考えるだけで、大変情けない。

それぞれの国の政治の質は、市民とメディアの質によって規定されてしまうところがある。

メディアには「安倍首相はトランプに気に入られたか」というあまりに狭い視点に陥らず、公益を代表する広い視野に立った、仮借なきジャーナリズム精神を発揮して報道してほしい。