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総選挙・脱原発等の民意は挫折するのか、持続していることを示せるのか

伊藤和子弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

明日の選挙については、もう大方の予想は決まった、という報道が続いている。

しかし、それがこれまでに示されてきた民意とどのような関係があるのかを考えると不思議である。

私には、報道されている選挙結果予測が、結果として民意の挫折・変節を示すもののように映る。

2009年「国民の生活が第一」というスローガンのもと、圧倒的な期待と支持を受けて民主党政権が誕生した。

しかし、その民主党の信頼を失墜し厳しい批判を浴びている。

民主党にはこりごり、という人たちの挙げる理由の代表的なものは、

国民が期待したスローガンも公約も実現しなかったから。

公約は実現しないのに、消費税、TPPをごり押ししたから。

そして、あれだけ深刻な福島第一原発事故を受けたにも関わらず、市民の反対を無視して原発再稼働したから。

パブコメを大々的に実施して原発ゼロ政策をいったん決めたと思われたのに、最後には閣議決定しなかったから、

などである。

いずれももっともで、だから厳しい審判を受けるのは理由があるといえる。

約束したことを実行せず、有権者との約束を破ったからである。

しかし、それが民主党が批判を受ける理由だとすれば、多くの人が自民党に投票するのは不思議である。

自民党は消費税三党合意に加わった一員であり、民主党と同じ役割を果たしている。

脱原発にも明らかに否定的で、民主党よりさらに無理やり再稼働を次々と進める危険性がある。

とすると、人々の怒りはわかるが、その結果示される投票行動は、もともと怒りのもととなった志向性、さらにさかのぼれば2009年に民意として示された志向性の対局に位置することになる。

それでは、有権者は自らのそれまでの期待を自ら裏切ったことになる。

自らの投票やその後の行動で示してきた「自分との約束」を破ることになるのではないだろうか。

有権者は移り気、世論は移ろいゆくものだ、と言われる。

しかし、これでは有権者の有り方として、批判の矛先だった民主党に対するのと同様の批判が値すると思う。

特に原発をめぐる問題は、私たちの民主主義の真価が問われていると思う。

3.11以降私たちが経験したこと、痛感したこと、そして行動を積み重ねてきたこと。

子どもたちを放射能の危険にさらしたくない、原発を再稼働してほしくない、という、

毎週官邸前で繰り広げられた脱原発デモをはじめとする普通の市民たちの行動の広がりが、すべて無駄であり一過性のものだったということになってしまわないように、と思う。

政党は離合集散を繰り返し、ブレまくっている。しかし、主権者も同様にブレてしまってはどうしようもない。

逆に主権者がぶれることがなければ時間はかかるとしても、民主主義は健全に働くであろう。

望む方向性を実現したいのなら、市民サイドが諦めずに民意を持続させることが必要だと思う。

とても難しい政治状況であり、ベストの政党を選ぶのは難しいが、最も近い政策を掲げるところに投票することによってしか、民意を示すことはできない。

少なくとも有権者自身が民意の実現を諦めないように。まだ多数いると言われる投票先を決めていない人たちがどういう投票行動にでるのか注目したい。

弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

1994年に弁護士登録。女性、子どもの権利、えん罪事件など、人権問題に関わって活動。米国留学後の2006年、国境を越えて世界の人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウを立ち上げ、事務局長として国内外で現在進行形の人権侵害の解決を求めて活動中。同時に、弁護士として、女性をはじめ、権利の実現を求める市民の法的問題の解決のために日々活動している。ミモザの森法律事務所(東京)代表。

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