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11月、福島事故後の人権状況調査のため、国連人権調査ミッションが来日。

伊藤和子弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

福島第一原発事故後、一年半以上が経過しましたが、周辺の広範な地域に居住する人々の健康が果たして適切に守られているのか、予想される被ばくリスクに対し、深刻な健康被害を防ぐための政府の措置は講じられているのか、深刻な懸念が表明されています。

私が事務局長をつとめる国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、市民団体等とともに昨年、国連人権高等弁務官事務所と、国連の独立専門家にあてて、この問題に関する事実調査ミッションの派遣を要請する書簡を送りました。

http://hrn.or.jp/eng/activity/area/japan/request-of-a-country-visit-to-japan-by-un-special-rapporteurs/

こうした動きを受けて、今年11月15日から26日まで、国連「健康に対する権利に関する特別報告者」のアナンド・グローバー (Anand Grover) 氏らが来日、原発事故後の放射能影響下にある、子どもをはじめとする周辺住民の「健康に対する権利」の実態調査を行うことになりました。

東京・福島等において様々な聴き取り調査を行う予定です。

国連「健康に対する権利に関する特別報告者」は、2002年の国連決議によって発足した特別手続により、国連人権理事会によって選任される独立専門家であり、世界中の健康に対する権利の侵害や問題状況に関し、事実調査・勧告を行っています。

今回は福島原発事故・東日本大震災以降の健康を取り巻く状況を調査する予定であり、日本に対して勧告を出すことが予想されています。

日程の詳細は公表されていませんが、特別報告者は政府機関、福島県等に対する聴き取りを行う予定であり、併せて、福島在住者、避難者(自主避難者を含む)に対する聴き取りや市民社会との会合も希望されています。

今回の国連調査ミッションは国連による独立・中立のものですが、ヒューマンライツ・ナウは、市民社会、影響を受けている被災者の方々との橋渡しの役割を果たしていく予定です。

国連「健康に対する権利に関する特別報告者」およびアナンド・グローバー氏(Anand Grover)については、以下のウェブサイトをご確認ください。

http://unsrhealth.org/

ヒューマンライツ・ナウは、原発事故後の周辺の住民に対する政府・県の施策が、国際水準からみて著しく不十分かつ問題があり、対応が遅れていること、人々が健康不安に苦しみ、かつ声を上げにくい状況に置かれていることを指摘し、改善を提言してきました。

http://hrn.or.jp/activity/project/cat11/shinsai-pj/fukushima/201111/

しかし、残念ながら、政府・県の対応には大きな問題があり、チェルノブイリ事故当時の対応を大きく下回る状況が続いています。

今回の調査の機会にも、日本における問題点を可能な限り訴えていきたいと考えています。

放射能被害と人々の健康については、IAEAが原発推進の立場にたち、WHOも適切な役割を果たしていないなか、国際機関としては人権関係の機関の動向が注目されます。

今回の調査を通じて、国連から人権の観点に立脚し、国際水準に基づく適切な提言がなされ、現状の改善につながることを期待しています。

弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

1994年に弁護士登録。女性、子どもの権利、えん罪事件など、人権問題に関わって活動。米国留学後の2006年、国境を越えて世界の人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウを立ち上げ、事務局長として国内外で現在進行形の人権侵害の解決を求めて活動中。同時に、弁護士として、女性をはじめ、権利の実現を求める市民の法的問題の解決のために日々活動している。ミモザの森法律事務所(東京)代表。

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