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募集停止・廃校となる大学は何が敗因か~16校の立地・データから分析した・最終章

石渡嶺司大学ジャーナリスト
相次ぐ大学の募集停止、その背景を専門家が解説(提供:イメージマート)

◆廃校・募集停止の16校は何がまずかった?

というわけで後編の続き。廃校分析記事としては第三弾になります。

前編はこちら。

募集停止・廃校となる大学は何が敗因か~16校の立地・データから分析した・前編(2023年3月30日公開)→地方型3校、不祥事型3校の個別解説

中編はこちら。

募集停止・廃校となる大学は何が敗因か~16校の立地・データから分析した・中編(2023年4月4日公開)→都市型7校(他大学競合・3校、専門学校競合4校)の個別解説

後編はこちら

募集停止・廃校となる大学は何が敗因か~16校の立地・データから分析した・後編(2023年4月10日公開)→都市型3校(グレー型)の個別解説、学部名・大学名からの分析

読んでいない方のために、ご説明しますと、2000年以降、廃校・募集停止となった私立大16校についての分析記事です。

規模については、16校全てが小規模校。

募集停止時点での入学定員充足率からは、11校が追い込まれ型、5校が先行損切り型でした。

そして、立地・運営については、地方型(3校)、不祥事型(3校)、都市型(10校)に分かれる、と分析。

前編では、地方型と不祥事型、合計6校の個別解説を掲載しています。

中編では、都市型10校のうち、他大学競合グループ4校、専門学校競合グループ3校、合計7校の個別解説を掲載しています。

後編では、都市型10校のうち、グレーグループ3校の個別解説、それと学部名・大学名・開設期間からの分析について掲載しています。

この最終章では、情報公開からの分析、そして、「私立大約半数が定員割れ」の虚実について、解説していきます。

なお、廃校・募集停止の16校(2023年公表の恵泉女学園大学を含む)についてのデータは前編掲載のものを本稿でも再掲します。

以下の表について

・『蛍雪時代臨時増刊 大学内容案内号』(旺文社)の各年度版から筆者作成

・倍率は一般入試のもの

・偏差値は河合塾データで最高値と最低値の両方を記載。なお、入試形式により異なる場合がある

・偏差値で「BF」はボーダーフリーの状態を指す/「※」は記載なし

・「-」は参考図書に記載なし(大学側が非公表)

・「※」は未開設、偏差値は記載なしを示す

・充足率は入学定員充足率を指す(入学者÷入学定員)

・募集停止公表年の充足率について、太文字表記の大学は新聞等掲載の数値。細文字表記の大学は公表年の前年について参考図書記載の数値。なお、創造学園大学については参考図書とメディアで数値が異なるため、両論併記とした

・2004年と募集停止公表年の倍率で1.5倍以下の大学は、オレンジ表示、2.0倍以上の大学はブルー表示とした

・2004年と募集停止公表年の充足率で80%以上の大学はブルー表示、70%以下の大学はオレンジ表示とした

廃校・募集停止となった私立大学16校一覧・その1

『蛍雪時代臨時増刊 全国大学内容案内号』各年度版から筆者作成
『蛍雪時代臨時増刊 全国大学内容案内号』各年度版から筆者作成

廃校・募集停止となった私立大学16校一覧・その2

『蛍雪時代臨時増刊 全国大学内容案内号』各年度版から筆者作成
『蛍雪時代臨時増刊 全国大学内容案内号』各年度版から筆者作成

◆情報公開からの分析~情報を出したがらない不思議

私が記事や本を書く仕事を始めて21年になります。

ご存じない方にもご説明しますと、私は大学だけでなく、就職活動・キャリアなどもテーマとしており、取材対象は大学だけでなく、民間企業も含みます。

大学業界を取材していると、基本的には教育熱心な方が多くいます。尊敬できる点も多々あるのですが、なぜか、情報公開となると「ジギル博士とハイド氏」のごとく人格が豹変、隠したがる方が一定数います。

そのうえ、「データからは大学の実情が見えない」などのデータ・ランキング批判や、「こんなデータを出されて大学がかわいそう」との批判も飛び出します。

この21年の取材・執筆経験から断言できますが、データを元にした記事を書くと、民間企業からのクレーム・批判はほぼありません。せいぜい、広報担当者から「あんまり、いじめないでくださいよ」と言われる程度。

ところが、大学だと、データ・ランキング批判や「学生かわいそう」論が一定数出てきます。

批判を受けつつ、民間企業と大学でこの落差はどこからくるのか、私は興味深く感じつつ、21年、この仕事を続けています。

付言しますと、民間企業でもブラック企業ですとか、反社会的組織だと、情報を隠したがる傾向にあります。

え?大学業界はブラック企業とか、反社会的組織と同じ?いえいえ、そんなことはないでしょう。ないですよね?

◆2000年代は東大・早慶すら非公開

私がこの仕事を始めた直後の2000年代、情報を隠したがるのは偏差値の高低は無関係でした。

私が当時、スタッフライターとして出入りしていた週刊誌AERAで大学特集を担当した時のことです。

当時のデスクの方針により、ストーリーとデータの両輪、ということで、大学は就職率・現役卒業率をアンケート調査の上、掲載することになりました。

ところが、このアンケート調査が難航します。

東大、早稲田大、千葉大など6校は就職率・現役卒業率、両方とも回答拒否。

現役卒業率は名古屋大、大阪大、東海大など9校、就職率は九州大など2校が回答拒否。

そして、慶応義塾大と津田塾大は、編集側が提示した就職率以外に「自校のものを掲載しろ」と言い張り、結果、その通り掲載しました。

表の注釈はやたらと長いものになっています。

就職率は大学院進学者を除いた卒業者に占める就職者の割合を示す。改組した学部は前身学部のものを掲載、2つ併記してある大学は下側が就職希望者に占める割合(津田塾大)または卒業者から大学院進学者・進路未届者を引いて分母にした割合(慶応義塾大)を示す。医・歯・獣医学部は表示しない。

※AERA2006年2月13日号「センター試験後の最新データでみる 併願大学が激変」より

このとき、慶応義塾大学の担当者からは「うちの出した数字で掲載を。いやなら、掲載しなくていいです」と冷たく言われ、別の国立大学からは「数字で学生が誤解するといけないので」という学生かわいそう論で拒否されました。

国公立・私立問わず、2000年代以前は、情報を出したがらないのが大学業界でした。

◆2008年「情報非公開ランキング」で騒然

ただし、当時から情報を出したがらない体質については批判も根強くありました。

当然でしょう。大学に不都合なデータは就職率や入学状況など、受験生には知る権利があります。

もし、酷い就職状況、酷い入学状況だった場合、知らずに入学した受験生こそ、かわいそうなはず。「学生かわいそう」論は身内である学生を守ろうとするあまり、学外者にその不誠実さがばれるだけです。そして、その不誠実さは結果として学生集めに悪影響を与えます。この、民間企業では当たり前の理屈(ブラック企業・反社会的組織は除く)を大学業界も段々と理解するようになっていったのが2000年代後半です。

私が東大や早慶から情報提供を拒否されたのは、ちょうど端境期でした。その翌年、2007年に刊行された『大学ランキング 2008年版』(朝日新聞社/現在は朝日新聞出版)に掲載されたのが「情報非公開ランキング」です。

『大学ランキング』2008年版(左)と2023年版(右)(筆者撮影)。4月20日に2024年版刊行予定
『大学ランキング』2008年版(左)と2023年版(右)(筆者撮影)。4月20日に2024年版刊行予定

同書は1995年から刊行されている大学受験ガイドです。大学のアンケート回答を掲載、半分はランキング形式でまとめた本です。

2007年当時は初年度版刊行から12年、大学業界では有名な大学受験ガイドとして定着していました。2007年当時も現在も、上位に掲載されると宣伝に使われる、下位だとランキング批判の標的とされる本としても有名です。

この『大学ランキング』で「情報非公開ランキング」が掲載されたので、「朝日はここまでやるのか」と、話題になりました。

記事を担当したのは、清水建宇・『大学ランキング』編集長(当時)。

「このようなランキングを作成し、掲載するべきかどうか。編集部では最後まで迷いました」

との書き出しから始まる記事は、情報非公開が受験生に不利益をもたらすことを訴えます。

入試データについて、

「これらのデータをすべて公表しているのは4年制大学の中で8割ほどにとどまっています」

と、指摘したうえで、次のように、情報非公開の大学を批判します。

「では、教育環境の重要な指標や入試データを、なぜ公表しないのでしょうか。いくら考えても、大学にとって『不都合な真実』だから隠しているとしか思えないのです」

私も全くの同感です。

この「情報非公開ランキング」は2008年版だけで終わりました。

しかし、掲載の反響が強かったのか、文部科学省は2010年に学校教育法施行規則を改正、2011年から、入学・就職状況など大学の基本情報をサイト等で公開するように定めました。

◆「情報非公開ランキング」のその後を検証

この情報公開の義務化で、各大学はサイト等で公開するようになりました。

それでも、水面下では面白からぬ経営幹部や教職員も一定数いるようです。

受験生の利益を考えられないのは、残念でなりません。ところで、この情報非公開の問題に接して21年。

実はある仮説がありました。すなわち、「情報を隠したがる、あるいは、『学生かわいそう』論やデータ・ランキング批判をする教職員の大学は、要するに志願状況が厳しいなど、実績が悪いか、それに近い状態なのではないか?だから、自分の大学でなくても、変に逆ギレするのでは?」というものです。

そこで、『大学ランキング』2008年版の「情報非公開ランキング」掲載の23校について、2007年・2022年の志願状況データを合わせて検証しました。

その結果がこちら。

情報非公開大学の志願状況・1

『大学ランキング』2008年版・『蛍雪時代臨時増刊 全国大学内容案内号』各年度版から筆者作成
『大学ランキング』2008年版・『蛍雪時代臨時増刊 全国大学内容案内号』各年度版から筆者作成

情報非公開大学の志願状況・その2

『大学ランキング2008年版』・『蛍雪時代臨時増刊 全国大学内容案内号』各年度版から筆者作成
『大学ランキング2008年版』・『蛍雪時代臨時増刊 全国大学内容案内号』各年度版から筆者作成

「志願状況が悪いからキレる」説、ほぼ合っていることが判明しました。

志願倍率が2倍超・充足率が80%超(2項目ともブルー表示)となっている大学は23校中、日本医科と東京医療保健の2校のみ。

23校中16校は、志願倍率が1.5倍以下・充足率が60%以下(2項目ともオレンジ表示)でした。

河合塾偏差値も、最高値が40.0以上だった大学は3校。35.0またはBFだった大学は19校で、受験生からの支持がきわめて低かったことが明らかとなりました。

※『全国大学内容案内号』2022年版は河合塾偏差値について、BF表示と空欄表示の両パターンがあります。これに対して、2007年版は空欄表示のみです。本稿では2007年について、空欄表示はBFと表記。2022年は空欄表示については「※」と表記しています。

そして、2023年現在は、と言えば、23校中3校が廃校(第一福祉、神戸ファッション造形、創造学園)。

2項目オレンジ表示となっている大学は2校。志願倍率が1.5倍以下、かつ、充足率が60%台となった大学も3校ありました。

そして、都築学園グループの2校(第一工科、日本経済)は相変わらず、一般入試倍率を『蛍雪時代臨時増刊 全国大学内容案内号』には出していません。

※なお、都築学園グループ2校と募集停止・廃校となった3校を除く18校は、2023年現在は大学サイト等で情報公開をしています。

この情報公開の観点からは、隠したがる大学ほど学生集めに苦戦しているか、大幅超過の疑いがあることが明らかとなりました。

◆定員割れの虚実~「定員割れ=危険水域」の誤解

さて、ここからは、今後の大学がどうなっていくのか、見ていきます。

恵泉女学園大学の募集停止以降、メディアでよく登場するのが「私立大学の約半数が定員割れ」です。

正確には、日本私立学校振興・共済事業団(以降、「私学事業団」と略)の出している私立大学の志願動向データで、2022年は47.5%が定員割れでした。

この「47.5%」と少子化を結び付けて、「今後も募集停止に追い込まれる大学は続出するだろう」との論もあります。

私学事業団のデータ、少子化傾向はそれぞれ事実です。ただし、この二つを結び付けて「大学が大量に潰れる」との結論を出すのは、はなはだ疑問です。

少子化傾向にあっても、大学進学率は1990年の24.6%から2022年は56.6%に上昇。その結果、18歳人口は1990年の約200万人から2022年は112.1万人と約88万人減だったにもかかわらず、大学進学者は14.3万人増となっています(1990年・49.2万人、2022年・63.5万人)。

少子化の影響を強く受けて減少していったのは短大進学と高卒就職です。

この点は、3月1日記事に詳しく出しました。

出生者80万人割れでも大学が潰れないカラクリ~2040年には大学進学率80%超えも(2023年3月1日公開)

そして、私学事業団の47.5%定員割れですが、「定員割れ=赤字=危険」ではありません。

この数字のトリックを勘違いした、ビジネス週刊誌が、創価大学、玉川大学など絶対に潰れなさそうな大学まで「危ない私大」ランキングに入れてしまい、大学業界内で信頼を失ったこともあります。

なぜ、大学は定員割れであっても「赤字=募集停止となるほど危険」にならないのでしょうか。その理由は、大学を運営するのは学校法人だからです。

ざっくりまとめると、学校法人は民間企業でいうところのホールディングス・大企業のようなものです。

大半の学校法人は、大学だけでなく、小中高など他の学校も合わせて運営しています。

その大学単体では赤字でも、小中高など他の学校が黒字なら、学校法人全体は黒字であって存続可能です。

民間企業だと、黒字で優良とされるホールディングス・大企業でも、赤字企業や赤字部門を抱えることはそれなりにあります。

そのごくわずかな赤字企業・赤字部門だけに焦点を当てて、「トヨタは赤字だ、もう先がない」との記事を書く経済記者がいたらどうでしょうか?おそらくは、大炎上した挙げ句、経済記者としての仕事ができなくなるはず。

大学が定員割れ、かつ、赤字だったとしても、あの赤字幅が学校法人にとって許容範囲であれば、大学は存続します。

さて、私学事業団のデータ、実は細かく出ています。それを私の方で集計したのがこちらの表になります。

私立大学の充足率・経年変化

日本私立学校振興・共済事業団サイト掲載のデータを筆者が集計・作成
日本私立学校振興・共済事業団サイト掲載のデータを筆者が集計・作成

私が目安としているのは、定員充足率60%未満です。これまでの廃校・募集停止となった16校のうち、10校が60%未満でした(不明の福岡医療福祉大学を含む)。さらに1校は東京女学館大学の61.1%でした。

定員充足率60%未満となると、他の学校が黒字でも学校法人としては許容できない赤字幅を抱えることになります。

小中高など他の学校が順調であれば、そちらを守るためにも、大学は募集停止に踏み切る、その目安が定員充足率60%未満ではないでしょうか。

そこで、この60%未満となった私立大学はどれくらいあるのか、私学事業団のデータを再集計しました。

すると、5%・30校存在しました。

私はこの30校が、いつ募集停止を判断してもおかしくない、危険水域にある、と見ています。

◆大学以上に危ない短大

では、大学が今後、この30校を軸にどんどん募集停止に追い込まれる、とまでは断言できません。

まず、学校法人にとって、許容できる赤字幅が違います。特に宗教研究や牧師養成に力を入れている私立大学は、宗派・教団からの莫大な寄付により、支えています。

一方で、廃校・募集停止16校のうち、5校は定員充足率が70%以上でした。過去の事例から、今後も、学校法人が傷の浅いうちに見切りをつけることもあり得ます。

大学以上に危ないのが、短大です。

私学事業団データによると、2022年に定員割れとなった短大は85.7%と大学の倍。要するに充足率100%以上の短大は14.3%(40校)しかありません。

私立短期大学の充足率・経年変化

日本私立学校振興・共済事業団サイト掲載のデータを筆者が再集計・作成
日本私立学校振興・共済事業団サイト掲載のデータを筆者が再集計・作成

危険水域でもある充足率60%未満となった短大は20.1%(56校)もあります。

今後は、大学以上に短大の募集停止が進んでいくでしょう。

その際、短大は募集停止・廃校とするのではなく、4年制大学への昇格を目指すところも一定数出る見込みです。

そして、今後も医療・看護系を中心とした大学の新設は続きます。そうしなければ、医療人材は地方を中心に不足しているからです。

仮にですが、2022年時点で危険水域にあった30校全てが募集停止になっても、新設校を考えれば、私立大学数は今後も微増を続けるもの、と見ています。

◆新設抑制~民間企業ではやって当たり前のリサーチ

さて、私立大学については大学・学部等の新設抑制(大学の設置等に係る学校法人の寄附行為及び寄附行為の変更の認可に関する審査基準の改正)が2023年3月1日に公布・施行されました。これは、2025年度開設の大学、学部等の設置審査から適用されます。

大学・学部の新設はこれまでも、学生確保の見通しのために、審査基準の一つに「入学定員が合理的に算定されていること」が求められていました。

ただし、この「合理的に算定」は具体的に提示されておらず、はっきり言えば、大学次第でした。

今回の新設抑制では、

1:入学希望者数に関する長期的な動向と人材需要の動向

2:競合となる大学の定員充足状況

3:学生募集活動の効果

この3点で細かく問われることになります。

特に、高校生対象のアンケートでは、従来は単に高校生対象のアンケートであり、募集地域ではなく全国のものでも問題ありませんでした。

それが今回の新設抑制により、「学部開設時期や学生募集地域とアンケート対象者の進学時期、居住地域を合致させる」「回答者に対し、学部・学科名、養成する人材像やアドミッション・ポリシー、設置場所・アクセス、学生納付金、競合する大学やその学部・学科名などの情報を明示する」など、かなり細かくなっています。

こんなに細かいアンケート、高校生が答えるのは大変そうですが、それはさておき、これは要するに、マーケティングリサーチをちゃんとやれ、ということでしょう。

民間企業であれば、どんな事業・ビジネスでも、事前にマーケティングリサーチをやって、どれくらいの見込みがあるか、検討します。

この民間企業の当たり前をこれまで、大学業界では大学・学部新設とも、いい加減でした。

率直に言って、マーケティングリサーチよりも開設側の都合を優先させたとしか思えない事例がこの廃校分析シリーズ記事から明らかになりました。

地方立地でそもそも学生集めに無理があった…立志舘、愛知新城大谷、三重中京

都市部立地で他大学と競合…福岡国際、東京女学館、広島国際学院、恵泉女学園

都市部立地で専門学校と競合…神戸ファッション造形、上野学園、保健医療経営

学部名が分かりづらい・微妙…創造学園、三重中京、聖トマスなど

仮にですが、2000年代の早いうちに私立大学新設抑制(マーケティングリサーチ)を実施していれば、大学業界は現状以上に健全な発展をしていたはずです。

その点から、私は今回の新設抑制(マーケティングリサーチ)は、やって当然、と考えます。

◆新設抑制と合わせて撤退策の整備も

ただし、この新設抑制策は、あくまでも大学・学部の新設抑制にすぎません。

現在の私立大学の問題点は新設抑制だけでなく、問題ある私立大をどのようにして撤退させるか、リストラ策の整備が必要です。

現状のままだと、補助金(私学助成金)カットに学部新設抑制(定員50%未満の学部がある大学は学部新設を認めない)だけで、あとは大学任せ。

廃校となった東和大学や、都築学園グループ(旧・第一経済大学など)などの事例から、補助金カットだけだと、大幅な定員超過によって、「座る椅子がなく立ったまま授業を受ける」(東和大学)など、学生が不利益を受けることになります。

しかも、募集停止を決めてから廃校となるまでには時間もお金もかかります。

その予算すらない学校法人からすれば、潰すに潰せない、いうなれば「ゾンビ大学」として維持し続けるしかないことにもなります。

そして、実際にすでにそうした大学が5~10校程度、存在します。

こうした「ゾンビ大学」に入ってしまった学生は、10代・20代の貴重な時間を浪費することになります。

こうした事態を避けるためにも、今後、文部科学省は現状以上に、私立大学の撤退策についても整備すべきでしょう。

◆新設抑制策が地方の邪魔をする

それと、新設抑制策は今後、二転三転する可能性があります。

理由は、地方を滅ぼす…とまでは言いませんが、地方の発展を邪魔する存在になりかねないからです。

この問題点をきちんと認識したうえで制度を変えていかないと、場当たり的な変更で無意味になる、あるいは、「ゾンビ大学」を増やしかねません。

ただし、この問題点については、本稿のシリーズテーマである「廃校・募集停止16校の分析」からは大きく外れているように思います。

そのため、この問題については別記事にて、改めて解説したく思います。

本稿の関連記事

募集停止・廃校となる大学は何が敗因か~16校の立地・データから分析した・前編(2023年3月30日公開)

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大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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