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募集停止・廃校となる大学は何が敗因か~16校の立地・データから分析した・中編

石渡嶺司大学ジャーナリスト
募集停止・廃校となった大学の敗因を専門家が解説(提供:イメージマート)

◆廃校・募集停止の16校は何がまずかった?

というわけで前編の続き。

読んでいない方のために、ご説明しますと、2000年以降、廃校・募集停止となった私立大16校についての分析記事です。

前編では、規模、志願倍率・偏差値・入学定員充足率の変遷データ、立地・運営面による分類、地方型3校・不祥事型3校の個別事例についてまとめました。

規模については、16校全てが小規模校。

募集停止時点での入学定員充足率からは、11校が追い込まれ型、5校が先行損切り型でした。

そして、立地・運営については、地方型(3校)、不祥事型(3校)、都市型(10校)に分かれる、と分析。このうち、地方型と不祥事型、合計6校については個別の解説を前編に掲載しています。

なお、廃校・募集停止の16校(2023年公表の恵泉女学園大学を含む)についてのデータは前編掲載のものを本稿でも再掲します。

以下の表について

・『蛍雪時代臨時増刊 大学内容案内号』(旺文社)の各年度版から筆者作成

・倍率は一般入試のもの

・偏差値は河合塾データで最高値と最低値の両方を記載。なお、入試形式により異なる場合がある

・偏差値で「BF」はボーダーフリーの状態を指す/「※」は記載なし

・「-」は参考図書に記載なし(大学側が非公表)

・「※」は未開設、偏差値は記載なしを示す

・充足率は入学定員充足率を指す(入学者÷入学定員)

・募集停止公表年の充足率について、太文字表記の大学は新聞等掲載の数値。細文字表記の大学は公表年の前年について参考図書記載の数値。なお、創造学園大学については参考図書とメディアで数値が異なるため、両論併記とした

・2004年と募集停止公表年の倍率で1.5倍以下の大学は、オレンジ表示、2.0倍以上の大学はブルー表示とした

・2004年と募集停止公表年の充足率で80%以上の大学はブルー表示、70%以下の大学はオレンジ表示とした

廃校・募集停止となった私立大学16校一覧・その1

『蛍雪時代臨時増刊 大学内容案内号』各年度版を元に筆者作成
『蛍雪時代臨時増刊 大学内容案内号』各年度版を元に筆者作成

廃校・募集停止となった私立大学16校一覧・その2

『蛍雪時代臨時増刊 大学内容案内号』各年度版を元に筆者作成
『蛍雪時代臨時増刊 大学内容案内号』各年度版を元に筆者作成

◆都市部立地でも競争激化で敗北

廃校・募集停止となった大学については、地方の立地が特徴とする記事がありました。

私も当初はそう考えていたのです。しかし、改めて分析すると、入学が期待できる高校生の数そのものが少ない、という意味での地方立地が敗因だった大学は前記の通り、3校のみ。

そして、運営のまずさが大きかった不祥事型が3校。残り、10校は東京都3校、兵庫県2校、広島県1校、福岡県4校で、いずれも、都市部にあります。

この10校は地方の立地が敗因というよりも、都市部の立地、競争の厳しさが敗因です。

さらに、都市部だからこそ、ちょっとした立地の違いが受験生に敬遠されることになりました。

都市型10校を分析していったところ、さらに3グループに分けることができます。

都市型・他大学競合グループ

福岡国際大学

東京女学館大学

広島国際学院大学

恵泉女学園大学

都市部に立地。他大学との競合が厳しく募集停止に追い込まれたグループ。

上記4校が該当します。

都市型・専門学校競合グループ

神戸ファッション造形大学

保健医療経営大学

上野学園大学

同じ都市型でも他大学競合グループと異なり、専門学校との競合で募集停止に追い込まれたグループです。上記3校が該当します。

都市型・グレーグループ

東和大学

福岡医療福祉大学

聖トマス大学

不祥事型とまでは言えなくても、募集停止前後のトラブルが目立ったグループです。上記3校が該当します。

本稿では、都市型・他大学競合グループ4校、同・専門学校競合グループ3校の7校の個別事例について解説していきます。

◆APUより先でAPUに負ける…福岡国際大学

●福岡国際大学

開設:1998年

募集停止:2015年

廃校:2019年

学部:国際コミュニケーション学部

立地:西鉄福岡駅(天神)から30分圏内(天神大牟田線特急で16分、西鉄二日市駅で乗り換え、太宰府線普通で2分、西鉄五条駅下車、徒歩10分)

解説:

福岡国際大学は系列の福岡女子短大の一部が昇格する形で1998年に開設となりました。

100万人都市・福岡で30分圏内。これだけなら十分に戦えそうです。

それが、学生集めで苦戦したのは都市型の典型、すなわち、競合校の多さです。

福岡県は私大激戦区であり、国際系・外国語系の学部・学科も多数あります。

福岡市内だと、九州産業大学国際文化学部、西南学院大学文学部国際文化学科、同・外国語学科、福岡大学人文学部英語学科などがあります。

福岡国際大学近辺には大規模校の久留米大学に文学部国際文化学科が存在。小規模校でも筑紫女学園大学文学部英語学科と競合します。

これだけ競合校が多かったところ、もっと強力なライバルが開設2年後の2000年に登場します。それが立命館アジア太平洋大学、通称APUです。

APUサイト。日本人学生は国内学生、留学生は国際学生と表現
APUサイト。日本人学生は国内学生、留学生は国際学生と表現

大分県別府市に立地、アクセスはJR大分駅・大分空港、いずれも直通バスが存在せず、約1時間かかります。

便利なのが意外にも隣県・福岡県からの高速バスでバス乗車は2時間以上(博多駅からは140分、福岡空港からは100分)、「高速別府湾・APU」バス停で下車すると、徒歩数分圏内。

このように立地では福岡国際大学が圧勝だったはず。ところが、実際にはAPUは順調に伸びていきます。2010年代には、福岡県内の公立高校でも「国際系・外国語系なら西南・福岡・APUの3択」との評価が定着しました。

しかも、学生は福岡県や九州圏だけでなく、全国からも集まります。

この背景には、設置者である学校法人立命館の情熱も資金投入もけた違いだった点が挙げられます。立命館大学を運営する学校法人立命館は1995年に新大学設置準備委員会を開設します。

1988年に立命館大学は国際関係学部を設置しており、国際系の系列校を新設すれば競合は必至でした。実際に、APU開設前後にはそうした指摘から、APUではなく立命館大学国際関係学部を選択する高校生もいました。

しかし、関係者は本気です。福岡国際大学が開設した1998年には韓国・ソウルとインドネシアに事務所を開設。中国やインド、タイなどでも現地の高校などを訪問し大学を宣伝します。それ以外の国に対しても、駐日大使館を訪問していきました。

そこまでしたのは、開設時の3つの50(国際学生50%、外国籍教員50%、50カ国以上から国際学生を迎える/国際学生はAPUの表現で留学生を指す)実現のためです。

開設時の定員は800人。その半分が留学生とは、当時、前例がなく、文部省(現・文部科学省)の担当者は絶句します。

「今どき純増で八〇〇人、しかも留学生四〇〇人とは何を考えているんですか。今、東大の留学生が一六〇〇人です。この新設大学が一学年四〇〇人の留学生を受け入れるということであれば、四年間で東大と同じ数になるということですね」と言われた。

※『立命館アジア太平洋大学誕生物語 世界協学の大学づくり』(APU誕生物語編集委員会、中央公論新社、2009年)より

要するに、短大の一部学科を昇格させただけの福岡国際大学とは、情熱も、そのための資金投入や施設・設備設置も、桁が違っていたのです。

APUが2000年に開学すると、福岡県だけでなく、全国から注目されメディア取材も相次ぎます。学生も留学生、国内とも順調に集めていきました。

2018年にはライフネット生命保険創業者の出口治明氏が4代目学長に就任。2023年にはサステイナビリティ観光学部を開設しました。

一方、福岡国際大学は開学後から低迷します。2004年にはデジタルメディアコミュニケーション学科を開設も、状況は好転しません。2010年にはこの学科を募集停止、2014年には大学も募集停止となり、2019年に廃校となりました。

大学キャンパスは系列の福岡女子短大と同じだったため、現存しています。ただし、福岡女子短大は2022年の収容定員充足率が55.4%と苦戦しています。

◆国際系の偏差値比例説

福岡国際大学のケースは国際系学部という点では後述する、東京女学館大学、恵泉女学園大学と似ています。

私は、各大学の志願状況データなどから、国際系学部は偏差値比例がある、と見ています。

すなわち、国公立大学と私立大の中堅以上であれば、勝ち組となり、学生を順調に集められます。なお、この勝ち組内での偏差値の差は誤差の範囲。それどころか、大学・学部の教育内容や立地などで大きく変動します。

ところが、中堅より下の私立大だと、偏差値が下がるほど学生集めに苦戦する、これが偏差値比例説です。

中堅より下、とは、具体的には、首都圏だと大東亜帝国クラス、関西圏だと摂神追桃クラスです。

この偏差値比例説、根拠は受験生の学力と心理から来ています。

偏差値は受験生の志願動向や過去データなどから作成される数値です。当てにならない、単なる人気投票、などの批判もありますが、受験生の学力を示す指標としては今後もある程度、使われていくでしょう。

さて、偏差値は受験生の学力が高ければそれに比例して高くなる、学力が低ければ偏差値も低くなります。

何を当たり前のことを、とお考えの読者の方、ではその学力とは?もちろん、英語、国語、数学、理科、社会の5教科です。そして、現在の大学入試では文系、理系問わず、英語が重視されます。

ということは英語の成績が高ければ、偏差値もある程度、高い水準になります。

そして、成績上位の受験生は上位校を中心に受験するため、下位校の国際系学部は志願しません。

では、成績が中・下位の受験生は国際系学部を志望するでしょうか。

成績が中・下位の受験生はその多くが英語で得点できていません。要するに苦手科目です。しかも、地方の受験生だと、地元志向が強く、海外どころか、県外にすら就職する意欲がありません。

こうした受験生の心理としては、大学入学後は英語など勉強したくない、この一点にあります。当然ながら、国際系学部や外国語系学部などは敬遠する心理が強く働きます。

もちろん、こうした心理や学部選択の是非はあります。ただし、それは国・文部科学省が政策として展開する(たとえば、卒業要件にTOEICのスコアを求める、など)話でしょう。あるいは、学生個人の努力で変える、など。

良し悪しは別として、こうした受験生の学力と心理から、中堅より下の国際系学部は志願されにくいのです。

この国際系学部偏差値比例説、例外は草創期のAPU、現在だと共愛学園前橋国際大学、宮崎国際大学、この3校くらいです。

APUは前記の通りですし、現在は首都圏・関西圏の難関大学と同じくらい(河合塾偏差値52.5~57.5/立命館大学国際関係学部は55.0~70.0)。

共愛学園前橋国際大学国際社会学部は本稿・前編や2017年の記事にも出したので省略します。

Fランク寸前大学が全国5位大学に成長した理由~共愛学園前橋国際大学・学長インタビュー(2017年9月11日記事)

宮崎国際大学は比較文化学部の単科大学として1994年開学。2004年に国際教養学部に改称、2014年に教育学部を新設しました。

宮崎駅からバスないしJR・徒歩で30分圏内の郊外にあり、立地がいいとは言えません。そのため、学生集めも苦戦が続いています。ただ、そこまでひどいわけではなく、2022年の入学定員充足率は2学部合計で94.7%でした。

河合塾偏差値では国際教養学部はBFとなっています。しかし、この大学が国際系学部偏差値比例説の例外となるのは、教育内容が評価され就職実績も堅調に推移しているからです。

外国人教員を多数そろえ(2022年は1000人未満規模大学で全国2位)、TOEICスコアも入学時333点を卒業時には642点と全国平均よりも70点も高くなる伸び率を出しています。

宮崎国際大学サイトより。ここまでTOEICスコアを伸ばす大学は全国的にも稀
宮崎国際大学サイトより。ここまでTOEICスコアを伸ばす大学は全国的にも稀

国際系学部偏差値比例説の例外となる、APUの草創期、現在の共愛学園前に、橋国際大学、宮崎国際大学、この3校に共通するのは、経営努力と教育内容の充実です。

残念ながら、福岡国際大学や、後述する東京女学館大学、恵泉女学園大学は例外となった3校ほどではありませんでした。それが募集停止に追い込まれた要因の一つ、と私は考えます。

◆系列校スルーと国際系の見込み違い…東京女学館大学

●東京女学館大学

開設:2002年

募集停止:2013年

廃校:2017年

学部:国際教養学部

立地:JR・小田急町田駅から40分圏内(横浜線で14分・長津田駅で乗り換え、東急田園都市線で6分・南町田駅下車、徒歩12分)

解説:

東京郊外とは言え、周囲の人口の多さ(町田市は2022年現在で43.4万人)、立地の良さだけを考えれば、生き残りは十分に可能だった、と言えるでしょう。

敗因は都市型の大きな特徴である競合相手の多さ、国際系学部偏差値比例説、系列校スルー現象の3点です。

競合相手は町田駅から電車で1時間圏内だと、MARCH・日東駒専クラスのほとんどが入ります。30分圏内でも、玉川大学、和光大学、桜美林大学、青山学院大学、国士舘大学、神奈川大学などの大規模校から東洋英和女学院大学、恵泉女学園大学(2023年募集停止を公表)など競合相手が多すぎる、レッドオーシャン状態。

国際系学部偏差値比例説については前記の通りです。

◆首都圏・関西圏ほど強く出る系列校スルー現象

3点目の系列校スルー現象、これは恵泉女学園大学にも共通しているので解説します。

大学を運営する学校法人は傘下に小学校・中学校・高校など他の学校を擁することが多くあります。

系列校なので、高校からは一定数、内部推薦で進学していく。これが、学校経営モデルとしてありました。

現在も存続しているのですが、都市部では、系列大学への内部推薦が激減する高校が出てきました。

理由は都市部での高校間競争の激化です。

私立中受験は東京や首都圏、関西圏で盛んとなり、2023年の首都圏受験者は過去最高の5.2万人となりました。

この私立中受験で保護者から重要視されるのが、教育内容と並び進学実績です。

進学実績とは言うまでもなく、国公立大や難関私立大への合格実績です。

グローバル化社会において、日本における偏差値の高低など小さな話です。しかし、その小さな話を気にする、というよりも大きな話と考える保護者が多いのも事実。

しかも、1990年代以前と異なり、2000年代以降は女子が高学歴化。特に、東京都では顕著であり、2022年の大学進学率(文部科学省・学校基本調査)では平均56.6%を大きく上回る76.8%で全国1位。女子だけでも同じで75.8%(全国平均53.4%)でこちらも全国1位に。

この大学進学志向が強いので、いくら系列に大学を擁していても、内部進学を敬遠するようになります。

これが系列校スルー現象です。

東京女学館中・高サイトより。国公立・難関私大への合格実績をアピール。2023年は東大合格者も1人、出した。
東京女学館中・高サイトより。国公立・難関私大への合格実績をアピール。2023年は東大合格者も1人、出した。

系列校スルー現象は都市部、特に首都圏や関西圏で顕著です。

首都圏・関西圏ほど中学受験が盛んではない中京圏やその他地方だと、高校から系列大学への内部進学クラスと難関大進学クラスが並立することが可能です。

首都圏・関西圏以外だと、そこまで大学進学熱が強くありません。一方で、高卒就職や短大・専門学校進学は首都圏・関西圏よりも高い水準にあります。そのため、系列大学の有無に関係なく、同じ高校の中で国公立・難関私大志望の特進クラスから、短大・専門学校志望者向けのクラス、就職希望者向けのクラスが並立することもよくある話です。

東京女学館大学と恵泉女学園大学は、東京都内にあるため、この系列校スルー現象がより強く出ました。

系列校からの内部進学が減っていくと、その分だけ、大学は学生集めで苦戦することになります。

系列校スルー現象は廃校・募集停止となった16校では東京女学館大学・恵泉女学園大学の2校に出ています。

そして、現在、学生集めに苦戦している私立大でも、10校程度は系列校スルー現象が強く出ています。

話を東京女学館大学に戻すと、競合相手の多さ、国際系学部の見込み違い、系列校スルー現象の3点が重なり、廃校となりました。

大学はその後、解体され、跡地には大型マンション「パークビレッジ南町田」が2022年に完成しました。

◆学部改組の迷走で失敗…広島国際学院大学

●広島国際学院大学

開設:1967年(当時は広島電機大学)

募集停止:2019年

廃校:2023年

学部:工学部、情報文化学部

立地:JR広島駅から30分圏内(JR山陽本線で5駅・15分の中野東駅が最寄り、同駅から徒歩15分)

解説:

広島県は自動車メーカー・マツダを擁するなど工業が盛んな県です。そのため、県内には、広島工業大学(広島市佐伯区、1963年開設)、福山大学工学部(福山市、1975年開設)、近畿大学工学部(東広島市、1959年開設)と私立大だけでも4校が競合していました。それでも、広島電機大学は工学部の単科大学として1990年代前半までは堅調に推移します。

「県内四つの工学系大学と競合しながら、三年前(※1995年)までは三千人以上の志願者を獲得していた」

※中国新聞1998年6月22日朝刊「核心 私立大・短大に少子化の波 中国地方 高等教育 原点に戻る時 まずカリキュラム充実 安易な改組は逆効果も」

しかし、志願者が減っていき、1998年度は「千六〇〇人」(中国新聞記事)まで落ち込みます。振り返れば、これでも十分な水準ですが、将来を危惧した広島電機大学は1999年に広島国際学院大学に改称。文系学部として現代社会学部を開設します。

私はこの校名変更と学部開設がターニングポイントだった、と見ています。

まず、大学名ですが、改称前の1998年、広島国際大学が東広島市に開学しています。大阪工業大学や摂南大学を運営する学校法人大阪工大摂南大学(現・学校法人常翔学園)が開設しました。

もちろん、広島国際大学と広島国際学院大学は無関係です。

とは言え、事情を知らない受験生や保護者からすれば「広島国際学院?広島国際大学と何が違うの?」となります。

なぜ、紛らわしい大学名としたかは不明。

広島国際大学の新設計画は1996年1月には地元紙・中国新聞で報じられているため、別の校名・法人名にしようと思えば、できたはず。

理工系大学が拡大を図るために、文系学部を設置するのは定石です。

ただし、東京理科大学(経営学部1993年開設)や東京農業大学(国際食糧情報学部/1998年開設)など、校名を変更せずに文系学部を開設するケースも複数あります。

変更するとしても、北海道科学大学(旧・北海道工業大学/2008年に未来デザイン学部開設、2014年に改称)は、理系カラーを多少残しました。

東京都市大学(旧・武蔵工業大学/2009年に都市生活学部、人間科学部開設)は文系・理系どちらにも取れる校名にしています。

その点、「国際学院」だと、文系のイメージが強すぎ、広島電機大学ブランドはどこへやら。しかも、別大学である広島国際大学と重複してしまいます。

地域事情としては、広島女学院中・高が名門として存在し、広島県民からすれば「学院」=広島女学院です。あえて、それを狙ったかもしれませんが、広島電機大ブランドがさらに薄れてしまいました。なお、広島女学院は2012年に大学を開設しています。

広島国際学院大学は、この校名変更が敗着の一手となってしまいました。

「文系志望の女子学生も獲得できる」(前記・中国新聞記事)と期待された現代社会学部でしたが、結果は低迷。

同じキャンパスか、広島市中心部ならまだしも、本キャンパス(中野キャンパス)と同じくらいの郊外(上瀬野キャンパス)に開設。これでは単科大開設と変わりません。しかも、2010年には中野キャンパスに移転となっています。

期待していたほど学生が集まらないこともあり、2000年代に入り、学部編成が迷走します。

2004年に、工学部を改組、電気電子工学科とバイオ・リサイクル学科の2学科体制に。情報工学科は情報学部に昇格となったのは先見の明がありました。

いや、10年早すぎたというべきでしょうか。こちらも、低迷し、2008年に情報学部は情報デザイン学部に改称します。

しかし、情報学部ならともかく、情報デザイン学部だと理系学部なのか、芸術系学部なのか、分かりづらいものがあります。とは言え、一時的に3学部体制となりました。

2008年には工学部機械工学科など3学科を統合して総合工学科とします。こちらも、部外者には分かりづらい学科名に。

不評だったのか、2013年には工学部総合工学科を改組、食農バイオ・リサイクル学科、生産工学科の2学科とします。同年には情報デザイン学部と現代社会学部を改組、情報文化学部とします。

わずか10年ちょっとで、工学部情報工学科(1994年~2003年)→情報学部(2004年~2007年)→情報デザイン学部(2008年~2012年)→情報文化学部(2013年~)と目まぐるしく変わったことになります。

特に、最後の情報文化学部については現代社会学部の統合とは言え、部外者には何が学べるのか、理解しがたい学部名です。

同じ情報系学部で明暗が分かれたのが、広島工業大学(2006年・情報学部)と近隣県の福岡工業大学(1997年・情報工学部)です。

両校は開設後に学部名称を変えていません。その後、2010年代半ばからIT人材が不足するようになった結果、就職実績が上昇し、受験生人気も上がる好循環に。

・広島工業大学情報学部

2007年:1.4倍・35.0~37.5→2022年:1.8倍・42.5

・福岡工業大学情報工学部

2007年:1.2倍・35.0→2022年:3.2倍:40.0~45.0

※一般入試志願倍率・偏差値については「廃校・募集停止となった私立大学16校一覧」注記を参照

結果、広島工業大学、福岡工業大学とも、情報系学部は地方私大としては安全水域にある、と言えます。

広島国際学院大学も両校のようになる可能性があったわけで、明暗が分かれてしまいました。

大学は2023年現在、まだ在籍学生がいるため、中野キャンパスは存続。上瀬野キャンパスは併設の広島国際学院大学自動車短期大学部が2019年、大学と同時に募集停止。2020年に広島国際学院専門学校(自動車整備科など2学科)に衣替えし、同校が利用しています。

◆平和学と園芸学の看板、活かせずに終わる…恵泉女学園大学

●恵泉女学園大学

開設:1988年

募集停止:2023年

学部:人文学部、人間社会学部

立地:町田駅から40分圏内(小田急小田原線で新百合ヶ丘乗り換え、多摩線で12分の多摩センター駅下車、バスで10分)

解説:

敗因は、都市型立地による他大学との競合、系列校スルー現象、宝の持ち腐れの3点です。

他大学との競合、系列校スルー現象の2点は東京女学館大学とほぼ同じなので省略します。

宝の持ち腐れとは、看板が活かせなかったことを意味します。

恵泉女学園大学の看板とは、平和学と園芸学の研究・教育です。

平和学は、開学の目的、「世界平和の構築に尽くす自立した女性を育成する」から来ており、園芸についても開学以来、文系大学ながら研究を続けてきました。

平和学と園芸学の両方が1年生の全学共通科目となっているのは、ほとんど例がありません。

問題はこうした看板を活かせなかった点にあります。メディアへのアピールはほぼなく、それでは競争相手の多い都市部では埋没してしまいます。

学部も、看板の平和学と園芸学をひとまとめにした人間社会学部ではアピール不足。看板というのであれば、なぜ、国際社会学科(平和学)と社会園芸学科(園芸学)としたのか、疑問です。

それぞれ、学部にして、国際学部・農学部(または園芸学部)としておけば、まだ学生が集まったはず。

特に、農学部新設は、岸田内閣の理工系学部新設支援策につながります。あと数年、持ちこたえていれば、国からの支援を受けて農学部を新設することができました。

現在の学長である大日向雅美氏は、少子化問題の専門家として、国会に専門委員として出席しています。メディア露出がそれなりにあったわけで、なぜ、こういう人材を大学広報に活かさなかったのかも疑問です。

募集停止後に、大日向学長は大学サイト内の「学長の部屋」で「在学生・新入生・ご家族保証人の皆様への説明会報告」との記事を掲載。

これは、募集停止後の学生等説明会での挨拶をまとめたものです。

この中で、大日向学長は謝罪しつつ、

「この信念はけっして私どもの内々の思いだけではなく、各方面から支持と評価をいただいております」

として、大学が評価された内容が挨拶の6割を占めます。

その一つとして、2023年3月9日の参議院予算委員会公聴会で公述人の一人として出席したことにも触れています。

「委員会終了後も十数名の議員が私を囲んでくださり、“恵泉女学園大学は本当にすばらしい教育をしている。今、これからの時代・社会に本当に必要な教育をしておられるのですね”と評価の言葉をたくさんいただきました」

3月9日と言えば、募集停止を決めた理事会が20日ですから、学長含む経営幹部の間ではほぼ募集停止で固まっていたはず。

その時点で「すばらしい教育をしている」と言われても、複雑な心境だったはず。

しかも、それを募集停止公表後の説明会で、わざわざ話す内容か、疑問です。

大学サイトを見ても、この予算委員会出席の話は、募集停止前には出ていませんでした。

そういうところじゃないでしょうか。

いい教育を展開していたことは私も何度か取材に行き、知っていました。それだけに募集停止となったことは残念ですし、歯がゆい思いです。

都市型・専門学校競合グループ

神戸ファッション造形大学

保健医療経営大学

上野学園大学

同じ都市型でも他大学競合グループと異なり、専門学校との競合で募集停止に追い込まれたグループです。上記3校が該当します。

◆系列・系列外の専門学校に負ける…神戸ファッション造形大学

●神戸ファッション造形大学

開設:2005年

募集停止:2009年

廃校:2013年

学部:ファッション造形学部

立地:JR西明石駅から徒歩15分

解説:

山陽新幹線のぞみもさくら・みずほもほとんどが停車せず高速で駆け抜ける西明石駅。

同駅から徒歩15分の距離で、開学後5年という高速で募集停止が決まった大学がありました。それが神戸ファッション造形大学です。

明石市は人口30万人の中核市で神戸市と接しています。大学を設置すれば、学生獲得が期待できる都市部にある、と言えるでしょう。

神戸ファッション造形大学は関西初のファッションを冠する大学として開学しました。

1937年創立の神戸ドレスメーカー女学院(1988年・神戸ファッション専門学校に名称変更)を運営する学校法人福冨学園が開設。

1967年に明石女子短期大学(服飾科)を開設、1969年に共学化、1990年に神戸文化短期大学となり、この短大敷地内に大学が開設されました。

神戸を冠しつつ、立地は明石という時点でモヤモヤ感がありますが、それ以上に強い疑問を感じるのが競合相手を系列校に残している点です。

短大や専門学校を前身・母体とする場合、そちらは募集停止にして大学に集中させるのがよくあるパターンです。

しかし、神戸ファッション造形大学は、系列校として短大も専門学校も存続しました。しかも、専門学校は大学よりも立地のいい、三ノ宮(駅から徒歩12分)にあります。

「既存の大きな大学の間で埋没しないため、生き残りには専門分野への特化、創意工夫を凝らしたユニークな教育が必要」

※神戸新聞2005年2月6日朝刊「<人>明石に開学する神戸ファッション造形大学長 福冨昌佑さん」より

当時の学長は地元紙のインタビューにこのように答えています。後半の「専門分野への特化」はその通りなのですが、前半の「大きな大学の間で埋没しないため」は明らかな見込み違いです。

大学間の競合もありますが、ファッション系は2020年代現在も専門学校卒が一定数を占めています。2000年代ならなおさらであり、大学以上に神戸や大阪の専門学校との競合を検討すべきでした。

当時、神戸には、神戸文化服装学院(1941年創立・2023年現在も存続)、神戸カレッジ・オブ・ファッション(1976年開設・2019年廃止)の2校がありました。

大学も、神戸芸術工科大学デザイン学部ファッションデザイン学科、武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科生活デザインコース、神戸女子大学家政学部家政学科、宝塚造形芸術大学造形学部産業デザイン学科ファッションデザインコース(現・宝塚大学/2015年・同学部は募集停止)など、強力なライバルが多数、しかも、立地のいい神戸市や宝塚市内にあります。

関西圏のアクセスの良さを考えれば、大阪の大学・専門学校とも競合します。

この厳しい競争に勝つには、系列の短大・専門学校を廃止するか、神戸市内に開設するか、少なくともどちらかが必要でした。

結果は、どちらもないまま。その結果、開設1年目から定員割れとなり、2年目には入学定員充足率が70%(定員100人・入学70人)、2009年は35%。その結果、同年に短大と同時に募集停止が決定、2013年に廃止となりました。

大学跡地はその後、解体され住宅地となっています。

◆病院事務養成のユニークさもメリット不明で廃校…保健医療経営大学

●保健医療経営大学

開設:2008年

募集停止:2019年

廃校:2023年

学部:保健医療経営学部

立地:JR博多駅から90分圏内(鹿児島本線・特急で鳥栖駅まで、同駅で普通列車に乗り換え・南瀬高駅下車、徒歩20分)

解説:

神戸ファッション造形大学も都市型というより地方型に入れる人も多そう。さらに、地方型の方が合っていそうなのが、この保健医療経営大学です。

音楽マンガの名作『のだめカンタービレ』で、主人公が福岡県出身の女子を追いかけて、博多駅まで移動。大川市がどこか、分からずにタクシーに乗ったところ、「大川って佐賀だから」とタクシー運転手が答えるシーンがあります(コミックス9巻)。

保健医療経営大学があった、みやま市はこの大川市の近く、というよりも、博多駅からはさらに遠く、九州新幹線筑後船小屋駅の方がむしろ最寄り駅。

それでも、地方型ではなく都市型に分類したのは、神戸ファッション造形大学・上野学園大学と同様、都市部の専門学校と競合したからです。

保健医療経営大学は、聖マリア病院を運営する聖マリアグループが中心となり、2008年に開設しました。

なお、開学前の瀬高町は2007年に私有地の無償譲渡を議決。ところが、その瀬高町が合併でみやま市となり、無償貸与を公約とした候補が新市長となります。結果、新市長の主張が通り、無償貸与となりました。

開設前にごたつき、ケチが付きましたが、同大の悲劇は初年度から続きます。

入学式直前の入学希望者はわずか20人。4月に入っても、追加募集をかけて、結果、27人が1期生となりました。多少増えても、入学定員充足率は18.0%で惨敗です。

理由は立地の悪さと、学部の専門性にありました。

大学名・学部名が示す通り、同大は病院等の医療経営を学ぶ大学です。

開設時の学長はインタビューで、

「約四十兆円と言われる保健医療福祉分野の経営学に注目する人はほとんどいなかった。一方で、今月スタートした後期高齢者医療制度や都道府県に任された医療費適正化計画など、医療を取り巻く情勢は劇的に変化している。医師の高い技術を患者に還元できるように、経営面を任せられるプロが必要とされている」

※西日本新聞2008年4月8日朝刊「『日本の最先端になる』教育内容浸透へ積極PR方針 橋爪・保健医療経営大学長に聞く/ありあけ」より

と、回答。「特色ある大学なので、絶対に生き残れると確信している」との強気な姿勢も。

しかし、この強気な姿勢も、結果として実らず、募集停止を公表した2019年まで、定員割れ状態が続きます。

敗因は、立地の悪さもありますが、一番大きいのは、専門学校との競合です。

保健医療経営大学は、要するに病院の医療事務従事者の養成校でした。医療事務が高度化・複雑化していくので、その専門大学を、との趣旨は理解できます。

しかし、現在でも、「病院事務なら専門学校では?」と考える人が多いでしょう。実際に、病院事務職養成の学科を持った専門学校は日本全国、主要都市に存在します。

開設時の2008年ならなおさらで、いくら大学としてユニークでも、専門学校との競合を慎重に検討すべきでした。

たとえば、ですが、母体となった聖マリア病院に就職でき、専門学校卒に比べて給料は2倍、昇進も早い、などのキャリアを提示していれば、違ったはず。

しかし、医療事務職を採用したい病院からすれば、人件費を抑えたいのが本音でしょう。

実際に、保健医療経営大学卒業者は病院事務職として就職していくものの、専門学校卒に比べて条件が良かった形跡はありません。

医療事務で給料が変わらないなら、福岡市内の専門学校(2年)と、福岡市内から90分もかかり、その上、4年制の保健医療経営大学、どちらのコスパがいいか、言うまでもありません。

2011年に九州新幹線が開業すると、新幹線定期代の一部補助を打ち出しますが、焼け石に水。

結果、2009年・24人、2010年・41人、2011年・44人、2012年・27人、2013年・52人(同年以降の定員80人)、2014年・45人、2015年・47人、2016年・33人、2017年・37人、2018年・22人、2019年・41人と低迷。

12年間、一度も充足率100%超えとならず、2013年の定員減でも充足率は最高で65%。これでは、低迷というよりも、壊滅状態だった、と言った方が正しいでしょう。

医療経営分野は大学教育では絶対に無理、というわけではありません。

2023年現在だと、新潟医療福祉大学医療経営管理学部医療情報管理学科、日本福祉大学経済学部経済学科医療・福祉経営コース、川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療福祉経営学科、広島国際大学健康科学部医療経営学科などがあります。

いずれも、医療系学部で他の医療職養成学科も擁している、中規模以上の大学です。

それと、医療経営の大学院だと、九州大学大学院医学系学府医療経営・管理専攻(2001年開設・日本初の医療経営・管理学に特化した専門職大学院)や東大、慶応義塾大など約50校あります。

こうした設置状況は単科大学としては無理があったことを示している、と言えるでしょう。

大学跡地は、県保健環境研究所(現・太宰府市)の建て替え地となり、人獣共通感染症に備える研究拠点「ワンヘルスセンター」も同時に整備される予定です。

◆辻井伸行らを輩出も音楽系苦戦で勝てず…上野学園大学

●上野学園大学

開設:1958年

募集停止:2020年

学部:音楽学部

立地:JR上野駅から10分圏内(徒歩10分)

解説:

東京の北の玄関口・上野駅。上野公園の反対側にある入谷口を出たオフィス街の一角にあるのが上野学園大学です。

日本でも有数のターミナル駅から徒歩10分ですから、立地の良さは抜群です。廃校・募集停止となった16校の中でも一番ではないでしょうか。

世界的なピアニストとして活躍する辻井伸行氏は演奏家コースに入学し、2011年卒業。

他にも、音楽業界に多数の人材を輩出しています。

1958年の開設当時は女子大で、2007年に共学化となっています。

1995年には、低迷していた草加キャンパスの短期大学人文科を国際文化学部に改組。しかし、これが低迷し、2000年には収容定員充足率50%割れで私学補助金のカット対象となってしまいました。

2004年には、2学部を統合し、音楽・文化学部になり、2010年には音楽学部に再改称しました。

上野学園大学が募集停止となったのは、大学内部の対立と音楽系専門学校との競合・キャリアの変化の3点です。

前者については、グレーグループに入れてもいいくらいで、2016年に経営陣と教職員の内紛が朝日新聞で報じられます(2016年7月13日朝刊)。

上野学園大学は長らく、石橋家による同族経営が続いていました。ところが経営難となった2000年代以降も、不適切な報酬支給があったことが2017年、文部科学省に提出した報告書で判明します。

前学園理事長などに報酬返還を求めることで収まるか、と思いきや、同族経営は継続。2017年3月には経営健全化を訴えていた横山幸雄教授を解雇。4月には前学部長の村上曜子教授を解雇、と教職員と石橋家の対立が続きます。

内紛続きの大学に無理に進学したい志願者は多くありません。首都圏だと、音楽系学部は国立音楽大学、東京音楽大学、桐朋学園大学、武蔵野音楽大学、日本大学芸術学部、東京藝術大学音楽学部、玉川大学芸術学部、洗足学園音楽大学など、多数。

2020年3月には、日本高等教育評価機構の大学認定評価で不適合評価となり、万事休す。

2020年7月に募集停止を発表しました。なお、内紛は収まらず、募集停止となった経緯説明と経営責任を求めた上尾信也教授について、同大は2021年3月、論文盗用を理由に解雇。上尾教授側は事実無根として、2021年12月に解雇無効を求め提訴し、現在も係争中です。

◆専門学校と競合、キャリアの多様化も悪影響

上野学園大学が募集停止に追い込まれたのは、学内対立だけではありません。

私は音楽系専門学校との競合やキャリアの多様化、この2点の方が大きい、と見ています。

2019年時点で、上野学園大学の初年度納付金は演奏家コースで229.4万円。グローバル教養コースでも148.1万円です。

私大の芸術系学部(音楽学部を含む)は医歯薬系に次いで学費が高くなっています。そこまで高い学費を払って、音楽家になれるか、と言えば狭き門。

その点、専門学校だと、音楽系大学ほど学費は高くありません。

さらに、2000年代以降、音楽関連のキャリアが大きく変化していきました。まず、バブル崩壊前にあった一般職採用が2000年代以降、激減します。

音楽大学が相手にされなくなった、というよりも、一般職採用自体が減ったのです。企業からすれば、一般職の仕事は、派遣社員に任せるか、総合職にも割り振るか、どちらか。特に経費精算ソフトなどの発達で、男女問わず、総合職で各自が分担できるようになりました。

一方、2010年代からYouTube、ニコニコ動画、TikTokなどの動画メディアが成長していきます。以前は、音楽家を目指すための表現の場は限られていました。

それが動画メディアだと、簡単に参入できるうえ、視聴回数によって収入が発生します。

実際に、歌手のAdo、ウォルピスカーター、まふまふ、Chinozo。演奏系ユーチューバーのよみぃ、826aska、かてぃん、など、音楽系大学出身でなくても、プロとして活躍できる人が多数出るようになりました。

もちろん、こうした動画メディアを活用する歌手・音楽家の中には、音楽系大学出身者もいます。ハラミちゃん(大学名不明)、菊池亮太(日本大学芸術学部音楽学科卒業・同大学院修了)、近藤由貴(東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻・パリ市立音楽院卒業)などが、該当します。

とは言え、動画メディアが登場する以前の、絶対的優位を音楽系大学は失った、と言えるでしょう。

一方、音楽業界以外への民間企業就職は総合職としてであれば可能です。

ただ、こちらも、高い学費を払ってまで、高い優位性があるか、と言えば、そこまでではありません。そうなると、中程度の一般家庭であれば「学費の高い音楽学部よりも、総合大学に進学して、音楽はサークルでやればいいじゃないか」となります。

上野学園大学は、学内の対立、専門学校との競合、キャリアの多様化と悪条件が重なり、募集停止に追い込まれました。

他の音楽系大学も今後は、他大学との統合を含め、厳しいかじ取りが求められます。

都市型・グレーグループの3校(東和大学、福岡保健医療福祉大学、聖トマス大学)の個別事例解説、学部名からの分析、情報公開からの分析、大学・短大の現状分析については、後編に続きます。

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追記(加筆修正/2023年4月4日18時15分)

Yahoo!ニュース個人編集部の指摘により、一部表現・誤字を修正しました。

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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