Yahoo!ニュース

3学期初日に緊急事態宣言、コロナが不安な子どもへの対応法とは

石井志昂『不登校新聞』代表
教室のイメージ写真(写真:アフロ)

 1月8日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、1都3県に対して新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が実施されました。一方、1月8日はもっとも多くの学校で3学期が始まる日です。感染者数の急増を受けて「コロナが怖いから学校へ行きたくない」と不安を訴える子どもも多くいると予測されます。子どもの気持ちが見すごされないよう、周囲の大人が、どんな対応をすべきなのかをまとめました。

感染リスクが低くてもストレス反応に

 学校は比較的、感染リスクが低く、子どもは重症化しづらいと言われています。一方で、国立成育医療研究センターの調査(※1)によれば、7割以上の子どもが不眠やイラ立ちなどを感じるなどのストレス反応を見せています。子ども自身は感染をしなくても、未曽有の事態は子どもたちの心に負荷をかけているようです。

 WHOの勧告によれば、家庭内でもニュースをずっと流しっぱなしにしないほうがよいとされています。不安を煽るような情報はシャットアウトして、子どもが不安を口にしたら話を聞いてあげてほしいと思います。解決してあげられない悩みを聞くのは大人でも苦しいことなのですが、「誰かに聞いてもらえた」という感覚は心の整理につながります。

「休みたい」ときは休ませて

 「コロナが怖いから学校に行きたくない」と子どもが言ったとき、本当にコロナが怖い場合もありますが、いじめなど人には言えない不安感が募っている場合もあります。20年以上、不登校を取材した経験から言えば、学校を休み始めたときに「すべての事情を言えた」という子どもは少ないです。また、休みたいと言い出したときは、ガマンの限界を超えて言い出す場合が、ほとんどです。「休みボケではないか」「怠けたいだけでは」と周囲は思うかもしれませんが「まずは休んでみる」を認めてほしいと思います。精神的な理由がなければ、数日間、休んだのち、不安感や退屈を感じて学校へ行く子が多いものです。

 また、学校を休んでいる期間も本人が望めば、友だちに会わせてあげるのもよいと思います。学校を休んだらみんなとも遊んではダメでなく、本人と相談しながら不安感を軽減できることはしてあげましょう。

『コロナが不安』なら忌引き扱いが可

 「学校には行きたくない」「感染が怖いからいやだ」と子どもが言った場合、あるいは親としても登校を控えさせたいと思っても出席日数が気になるかもしれません。これに関しては、「指導要録上『出席停止・忌引等の日数』として記録し、欠席とはしない」ということが校長判断で可能です(※2)。ガイドラインでは保護者が不安になった場合のみ、忌引き扱いが可能だとも読めます。しかし、筆者が文科省に確認したところ、子どもだけが不安に感じている場合でも「可能」だとの回答を得ました。

 欠席を忌引き扱いにする場合は、お父さんや祖父母の出番です。こうした学校対応に関しては「ふだん学校へ行かない保護者」が対応したほうがよいからです。特別な忌引き制度があるとは言っても、これは特殊な事務処理です。半分以上の校長先生が、この制度すら知りませんから、まずはこの記事を見せてもらうことから学校対応が始まります。もしも、お母さんがふだんから子どもと関わっていたら、お父さんが学校対応をする。ひとり親世帯の場合は祖父母などが対応することをお願いします。

 というのも、子どもにずっと関わっている親ならば、学校や担任に対して、すくなからず不満や「もっとこうしてほしい」と思うことがあるものです。先生たちもけっして口にはしませんが、親に対して同じ思いを持っています。こうした思いを持つ者どうしが話し合うと、スムーズにいきません。衝突してしまいます。なので欠席の話し合いは「担任とお母さん」よりも、「お父さんと学年主任や副校長が話すとうまくいった」という事例を聞いてきました。

 最後に学校対応をされる保護者にお願いです。学校対応は「子どもの気持ち」を最優先して、子どもの安心を確保するよう交渉をお願いします。緊急事態ですから学校の都合よりも子どもの安心のために尽力をお願いします。

留守番なら小学生でも

 親が働くためには「子どもが学校へ行ってもらわなければ困る」という方も多いでしょう。不登校家庭でも同じ悩みを抱えてきました。不登校家庭で多いケースは、小学校の1年生から2年生ごろまでは、祖父母や会社などの協力を得てやりくりをしています。率直に言って充分な社会環境は揃っていません。目の前にある資源で取り繕うしかないのが現状です。一方、小学校の中学年からは子どもだけで留守番を任せる家庭も多いです。位置情報を確認できるスマホを持たせたり、「困ったときはかならず連絡する練習」などを親子でしていくことで、フォロー体制を整えたりしています。

 付け加えて言うと、子どもは親といる時間がとても好きですが、自分の自由にできる時間も好きです。大人としては心配な面もありますが、学びの一環だと思って留守番を活用されることもご検討ください。

大人自身のケアも大事

 最後になりましたが、子どもを支えるための「大人の心のケア」も重要だということを付け加えたいと思います。遠隔で働けない環境の人もいます。介護をしている方もいます。コロナが怖いと感じているのは子どもだけではありません。

 コロナ禍でのストレス発散も難しいですが、子どものことで悩んできた親たちからは「車のなかで歌いまくって発散した」「趣味に没頭した」など一人の時間をなるべく持つようにしたと聞きます。大事なのは「自分を甘やかすことに躊躇しないこと」なんだそうです。理想的なお母さん像、お父さん像、教育方針、家族のあり方などなどは、いったん脇において親も自分を甘やかす。そのなかでも子どもはすくすくと育っていったそうです。ぜひ子どもの育つ力を信じて子どもを見守っていただければと思います。

※1・第3回コロナ×こどもアンケート調査報告書(国立成育医療研究センター/2020年12月1日発表)

※2・新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドライン(文科省・2020年6月5日公開)

『不登校新聞』代表

1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクールへ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。2020年から『不登校新聞』代表。これまで、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材を行なってきた。また、女優・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者に不登校をテーマに取材を重ねてきた。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)。

石井志昂の最近の記事