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【獣医師が解説】ペットショップで購入した犬が瀕死状態。店長は「治療費は払えない、交換ならする」

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

全国に200店舗以上を展開するペットショップ大手「Coo&RIKU」(クーアンドリク)で、今年6月に木更津店(千葉県・木更津市)で子犬を購入した女性(20代)が、購入した当日から子犬は体調を崩し、獣医師から「寄生虫に蝕まれていて瀕死の状態」と宣告されました。それで、女性は動物病院に子犬を入院させました。女性が店にクレームを入れると、「治療費は払えない。犬の交換ならできます」と突っぱねられたとデイリー新潮は伝えています。

ペットの命を交換するという考え

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イメージ写真写真:アフロ

ペットショップで、犬や猫を購入したことがない人は、何が問題なのか?理解できない人もいるかもしれません。

たとえば、洋服を購入してボタンの縫い付けが悪いとします。そういう場合は、新しい洋服に交換するということは、よくあります。メーカーに不良品として返品などをすればいいのでしょう。

しかし、この場合は、命のあるペットなので交換したとは言っても、そのペットがどうなるか、心配になります。それにくわえて、一日でも新しいペットを飼い始めると、家族の一員になっているので、家族を交換できるのか、という問題もあります。

クーアンドリクの治療費は払えないけれど、犬と交換するという対応は特別なの?

ペットショップで犬や猫を購入したときに具合が悪くなったら、「すぐに連れてきてほしい」「専属の動物病院(系列の動物病院)で治療します」などと言われることは割合に耳にすることです。

筆者の動物病院であった話ですが、飼い主のOさんは、チェーン店のペットショップで子犬を購入しましが、激しい下痢になりました。そこのペットショップには、動物病院が併設されていたので、そこで治療でしていますたが、あまり改善されず入院になりました。

Oさんは、以前に飼っていた犬ががんで闘病の末に亡くなったので、いわゆるペットロス状態でした。少し落ちついてきたのでペットショップに犬を見て行っていると、なんとも言えない親近感があるチワワの子犬がいました。それで、その子を購入したのでした。

その子は、ひどい下痢で併設されている動物病院で治療をすればよくなるけれど、t治療を止めるとすぐに下痢が始まり、やがてぐったりしたのでそこで入院させようとしました。

併設の動物病院の獣医師は「ちゃんと診て、治療しますので」と笑顔でOさんに答えたそうです。しかし、Oさんは不安がよぎったので「夜中は、この子、ひとりになるのですか?」と尋ねると、その獣医師が口ごもったそうです。

Oさんは、前の犬の子を亡くして喪失感もまだ癒えていないのに、このうえ、チワワの子犬になにかあることを考えると怖くなり、筆者の動物病院に来られたのでした。

Oさんは開口一番に「水鉄砲のような下痢をします」と言われました。以前、がんの子を治療していたので、筆者はOさんの性格を知っています。そんなにオーバーにものごとを表現する人ではなかったので、ひどい下痢だな、と考えました。

ウンチを「下痢パネル」という検査に出すと、ウイルス感染や細菌感染がわかります。

それで、このチワワの子犬のウンチを「下痢パネル」に出すと、「犬腸管コロナウイルス(CECoV)」(コロナ禍の前の話)「クリプトスポリジウム」が陽性という結果が出ました。

犬腸管コロナウイルスは、犬の排泄物から感染します。つまりウンチが衛生的に処理されていない環境にいたことが疑われます。

筆者は、この2種類の結果に合う治療をして、胃腸疾患を治しました。

そこで問題になるのが、治療費です。併設の動物病院があるので、他の動物病院で治療したことで、支払いについて揉めたそうです。

しかし、チワワの子犬の胃腸疾患の原因がわかっているので、ペットショップはしぶしぶ支払いをしたということでした(この子は、いまは胃腸疾患のトラブルもなく6歳を迎えています)。

なぜペットショップは「犬を交換する」「併設の動物病院で治す」というのか?

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犬を交換するというのは、治療費が高騰すると困るからです。これは、筆者の推測ですが、病気で戻ってきた犬や猫は、下痢止めなどの最小限の治療はするけれど、それほど積極的な治療はしないのでは、と思っています。虚弱体質の子は、ひょっとしたらバッグヤードで命の危険にさらされているかもしれません。

ペットショップに併設されている動物病院で治療をすると、治療費などが安くすむので、関連の動物病院で治療をしたがります。

飼い主にからすれば、一度、家に来た子犬や子猫をもののように扱われるとたまったものでなない気持ちがよくわかります。

その一方で、犬や猫を販売しているペットショップは、命を売っているという意識があまり強くなると、経済的に成り立たなくなるので、このようなことが起こるのです。

子犬、子猫のときから虚弱体質の子はどうすればいいのか?

全ての子犬や子猫が、元気で病気知らずなら、こういう問題は起こりにくいです。ブリーダー、ペットショップ、そして飼い主の元と環境の変化で具合を悪くする程度なら、治療をすれば治ることが多いです。

その一方で、生まれたときから虚弱体質の子はいます。

食が細い、なかなか体重が増えない子は、精密検査をすれば、心臓や脳などに疾患を持っている子もいます。

そういう子は、一生、完治しなくてずっと薬を飲む、高額の手術の必要が出てくることもります。

購入したばかりの子犬や子猫が弱いということは、そのような場合もあるのです。

ペットショップで購入して具合が悪くなったとき、どうするか?を確かめる

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動物愛護管理法で、ペットショップなどでの犬や猫の販売は、生後56日(8週間)まで原則禁止されています。つまり8週間を過ぎた子犬や子猫が、ペットショップに並んでいます。

子犬や子猫は、生後8週ぐらいから母体免疫がだんだん切れ始めます。人でいうところの生後6カ月で母体免疫が切れ始めて感染症にかかりやすい時期にあたります。

そのため、家に来たときに子犬や子猫は、病気になりやすいのです。ペットショップはどう対処してくれるか確かめましょう。

・具合が悪くなったら、別の子と交換する

・具合が悪くなったら、併設された動物病院で治療する

・保険に加入して、1カ月は治療費を全額保証する

・具合が悪くなってもペットショップでは元気だったので、責任は持てない

などあります。

しっかり確認しておかないとトラブルのもとです。

まとめ

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子犬や子猫を飼うということは、命を預かることです。彼らは、ペットフードと水を置いておくだけで、すくすくと成長しないこともあります。病気になることもあるのです。

そのためには、犬や猫の種類によっては、なりやい疾患があることを勉強してから、家族に迎えましょう。終生飼養は基本です。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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