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炎天下、ウサギをダンボール箱に入れて遺棄。ウサギは【飼いやすい】のか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

来年2023年は、ウサギ年です。

そのため、メディアでは、年末年始にかけてウサギの特集が増えていくでしょう。それを見た人は、「あまり鳴かない」「散歩もいらない」「小さい」ので『飼いやすい』と思われがちです。

本当にそうなのでしょうか。今日は、ウサギを飼うということと現実に起きていることを見ていきましょう。

「ウサギが入っています」とダンボール箱に書いて遺棄

友希(ゆき)さん@craftrosebear

4万件(10月2日時点で)の「いいね」をもらっているSNS上で話題の投稿です。それでは、上記の投稿を詳しく見ていきましょう。

まだ、1歳にならない子ウサギ(動物病院で年齢を推測してもらったそうです)が、炎天下にダンボール箱に入れられて、空気穴もない状態で遺棄されていたそうです。

そのダンボール箱の上に以下の文字(子どものような字)が書かれていました。

「うさぎが入っています

 どなたかお願いします

 この中にうさぎがいます

 うちでは飼えなくなりました

 よろしくお願いします

 横にあるのが食べていたフードです

 どなたか、よろしくお願いします」

これを見つけた投稿者の友希さんが保護して「ゆんゆん」と名付けて育て、1歳(推定)の誕生日を迎えたというものです。2枚目の写真のリンゴの1は1歳という意味です。

友希さんによりますと、保護したときは暑い日だったのに、ダンボール箱に水も入っていなかったそうです。保護が少しでも遅れていたら、ゆんゆんちゃんは命の危険があったかもしれません。

ウサギを飼って、このように飼えなくなり遺棄する人がいるのです。ゆんゆんちゃんは、友希さんにすぐに保護されたからよかったですが、少しでも遅れていたら

どうなっていたか、と考えるととても残酷な話ですね。

ウサギは飼いやすいのか?

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

ウサギは、イヌやネコに比べると本当に飼いやすいのでしょうか。

確かに、眺めているだけでモフモフしてかわいいですが、楽しいことばかりではないです。大変なこともあることを知ってから、飼うか考えましょう。

「こんなはずではなかった...」と思わないために。

□抱っこは基本的に苦手

イヌやネコのように、「抱っこすること」や「一緒に寝ること」を嫌がる子が多いです。基本的に、肉食動物に捕食される動物なので、触られることを好みません。

診察でも、ウサギはしっかり保定をしないと診察台から飛び降りて骨折などすることがあります。そのため、筆者がウサギの治療をするときは、床に座って治療します。

モフモフしたいと思っている人は、がっかりするかもしれません。もちろん、丁寧に飼っていれば、懐いて膝に乗ってくれる子もいますが、それはまれです。

□なんでも齧る

室内で放していると、なんでも齧ります。

スマホのコード、壁紙、鞄なども歯で齧ってしまうことがあります。ウサギを放すときは、齧られて困るものは、そこに置かないようにします。ほったらかしにしないで、よく観察しておきましょう。

□トイレのしつけが難しい

イヌやネコは、トイレのしつけができる子がほとんどです。ウサギは、オシッコをトイレでする子もいますが、ウンチを動いたところにまき散らすことが多いです。ウサギは、草食動物なので、ウンチも体の割には多くしますので、ちゃんと世話をする必要があります。

□お金がかかる

イヌやネコは、飼うと病気やワクチン注射などがあり、ある程度、お金がかかることは理解していると思います。

ウサギも病気になるので、そのときは治療費がかかります。

□病気がわかりにくい。

イヌなら散歩に行きたがらない、ネコなら暗いところに隠れているなど、今日は具合が悪そうと比較的推測できます。

ウサギは、ほとんど鳴かないので、具合が悪いのがわかりにくいのです。今日は食べていないな、と思うと命にかかわることもあります。

□専門的に見られる獣医師が少ない

いまでは、ウサギ専門の動物病院もありますが、まだまだ数は少ないです。そのため、ウサギを飼いはじめたら、ウサギを専門的に見てくれる動物病院を探しておきましょう。

□10年以上生きる場合も

ウサギの寿命は、平均すると8年ぐらいあります。長生きする子は、10年ぐらい生きてくれます。その間は、旅行するときは、誰かに面倒を見てもらう必要があります。暑さには弱い動物なので、夏に高温になる日本では、エアコンをつけて温度管理をしっかりしてあげる必要があります。

10年間、ウサギの面倒を見ることができるか考えてから、飼いましょうね。

ペットを遺棄することは犯罪

「環境省 動物の愛護と適切な管理」のページより
「環境省 動物の愛護と適切な管理」のページより

愛護動物※を虐待したり捨てたりする(遺棄する)ことは犯罪です。違反すると、懲役や罰金に処せられます。

イヌやネコだけを遺棄したら犯罪と思っているかもしれませんが、愛護動物が全て、その適用です。

※愛護動物とは

1 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる

2 その他、人が占有している動物で哺乳類、鳥類または爬虫類に属するもの

ゆんゆんちゃんは保護されて、いまは幸せに暮らしていますが、遺棄は、犯罪行為なのです。

このようなケースは、警察にしっかり届けて犯人を捜してもらいましょう。近隣の防犯ビデオに犯人が映っているかもしれないので、警察だとそれを調べることができます。

遺棄してもだれか優しい人が拾ってくれると思う社会にならないように。動物を飼うことは、責任を持って命を預かることです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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