愛知県岡崎市の男性ブリーダー(37)が少なくとも250匹の猫を大量繁殖させ、十分な飼育ができない「多頭飼育崩壊」の状態になっているというニュースが流れていました。こんなに多頭の猫の飼育崩壊は、わが国で最大規模だそうです。

多頭飼育崩壊といえば、ブリーダーが多いイメージですが、実はそうでもないのです。その辺りのことを見ていきましょう。

多頭飼育崩壊は女性が6割でその過半数は60代以上

写真:PantherMedia/イメージマート

現在、多頭飼育が問題になっています。

環境省が、2021年3月に「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」を作りました。環境省「令和元年度 社会福祉施策と連携した多頭飼育対策推進事業アンケート調査結果」によりますと、多頭飼育崩壊になりやすいのは、女性が約6割と男性より割合が高く、60 代以上の高齢世代が過半数を占めます。

もちろん今回のブリーダーのように男性や若年層の飼い主もいます。しかし、やはり女性の高齢者が多い傾向があります。

多頭飼育問題を引き起こす人の傾向

だれでも多頭飼育崩壊を起こす可能性があるのですが、分析によると以下の問題を抱えている人が多いといわれています。

□精神的な問題

うつ状態や認知症などになり的確な判断ができない。コミュニケーションをするのが苦手。

□身体的な問題

脳血管障害などで、体が思うように動かない。段差のあるところにあがることが難しい。

□経済的な問題

就労環境などにより、収入が不安定。年金受給者であるが、その中で適切な使い方ができていない。

上述の問題が重なって多頭飼育問題に発展するケースが多いのです。

以前は、猫好きだった飼い主が、多頭飼育問題になってしまったケースを次に見ていきましょう。

ニオイから始まった

イメー
イメー写真:アフロ

私たちの動物病院は、スタッフも全員が女性なので、世間話をしながら治療をしています。Kさんは、猫好きのおばさんという感じの人で、庭にやってくる猫の様子が気になり弱っていそうな子がいると捕まえ来院していました。

いまから10年以上も前なので、完全室内飼いというわけではなく庭で餌をあげているような飼い方をしていました。

Kさんは、その頃は猫のために生きているようで、連日のように子猫を連れて、いわゆる猫風邪(主に猫伝染性鼻気管炎)の治療をされている飼い主でした。

最近、診察室でKさんを見ないと思い返していると、数年ぶりにKさんが猫を連れて来院しました。

はじめに異変に気がついたのは、なんともいえない悪臭でした。以前は、ざっくりしたワンピースを着ていても洗濯されていたので、嫌なニオイがする人ではありませんでした。

いまから、思い返してみれば、猫の世話がちゃんとできずに、猫がKさんの服にオシッコをしたのと、もしかしたら、Kさん自身が排尿のコントロールがうまくできなくなっていたのかもしれません。多様なニオイの中にアンモニア臭も混じっていました。そのニオイにびっくりしました。

次はKさんの表情でした。以前は、お上品にユーモアを交えながら、鼻水や目ヤニが出ている猫の顔を何度拭いても、すぐに汚れると話されていました。久しぶりに見たKさんは、表情が乏しく、下を向いて「この子の様子がおかしい」と小さい声で何度も話されてました。

筆者は人の医療の専門家ではありませんが、以前のKさんを知っているだけに明らかになにかが起こっていることがわかりました。

どうしたものか、と気をもんでいるとKさんの連れ合いが来て「お世話になりました。家内が猫を拾ってきて困っていたんです。自分のこともできなくなってね。それで、介護施設に入れました」といわれました。

猫のために生まれてきたような人が、加齢のためにそれもできなくなり、筆者はとてもショックでした。

どんな人でも、なにかがあれば多頭飼育問題に陥ることはあるのです。女性は、子どもの手も離れて、孤独感が増してなにか世話をしたいので、ついつい猫を拾ってくる傾向があるのかもしれません。

次に、どのような状態になれば、多頭飼育問題になるかを見ていきましょう。

多頭飼育崩壊のフローチャート

こうが人福祉・動物福祉協働会議より

上の図を見ていただければ、猫を飼っていても不妊去勢手術さえしていれば、多頭飼崩壊になるリスクはかなり少なくなります。

たとえば、雨の中でずぶ濡れになっている子猫を保護して、家に入れてそのうち不妊去勢手術をしようと思ってしないと、あっという間に雌猫は発情期を迎えます。そして雄猫がいれば交配をして数匹の子猫を産みます。かわいいなと思っているうちにまたその子猫も発情期が来るのです。基本ですが、やはり不妊去勢手術は大切です。

これを読んでいるあなたは、猫や犬を飼っていないかもしれません。でも、隣の人が多頭飼育崩壊を起こすと関係あることになってしまいます。ニオイなどでおかしいな、と思ったら、このような例もあることを知識として持っておいてくださいね。