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【獣医師の訴え】犬や猫の命ははかない...「ペットとあなたの10の約束」とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るっています。

外出自粛のため自宅で過ごす時間が長くなり、ペットでも飼ってみようか、といって安易に子犬や子猫などを飼い始める人も増えています。いわゆるペットブームです。一般社団法人ペットフード協会によりますと、2020年の犬猫新規飼育者は2019年より推計で6万匹以上も増加しています。ペットを飼育するのはいいのですが、その中には、飼育放棄する人もいる現実があります。

筆者は、先日、18年8カ月の愛犬・ラッキーを亡くしました。

ラッキーは、認知症、僧帽弁閉鎖不全症、肝炎、慢性腎不全を患っていました。そのため最後の数日間は、獣医師という仕事にもかかわらずラッキーを撫でることぐらいしか、できなくなっていました。

飼育放棄の記事を目にするたびに、胸が痛くなります。ペットを飼う前に「ペットとあなたの10の約束」を知っていただきたく、そのことを解説します。

コロナ禍でペットブームになり なぜ飼育放棄するのか?

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

いまやSNSの時代で、犬や猫の動画や写真が溢れています。子どもと一緒に遊んでいるスタンダード・プードルやドミノ倒しをする猫などを見ると、私も飼ってみようかな、と思いペットショップに足を運びます。ペットの価格は高騰していますが、それでもローンを組むと購入できます。それで、憧れの子犬や子猫がきました。実際、飼ってみると以下のことが我慢できず手放すのです。

トイレのトレーニングが難しい

思っていたよりしつけが難しい

こんなに吠えるとは思っていなかった

などです。

飼ってはみたものの、世話に負担を感じるなどで、わずか数日で飼育を放棄する例も起きています。19年近くラッキーと暮らした筆者には、上記のことは当然のことで、そんなことが理解できてない人は飼わないほうがいいと考えています。

そして、以下の10個の約束ができるのなら、ペットを飼ってもいいと考えています。

「ペットとあなたの10の約束」

写真:アフロ

1、ペットはひとりで生きていけません。

ペットはフードを買いにいくことさえもできないのです。もちろん、水をくむこともできません。

2、ペットはお腹が空きフードを食べます。当然、ウンチもオシッコもしますので、その処置をよろしくお願いいたします。

ペットは、ウンチやオシッコをするので、飼い主はその処理をしないといけません。

3、ペットが吠えているときは、原因があります。

むやみに吠えたりしません。さみしいなどの理由があるのです。

4、ペットは病気もします。

生きているので、病気もします。がん、心臓病、慢性腎不全などになることは、珍しくありません。そのときは、治療費もかかります。

5、ペットにも老いがあります。それでも愛おしいと思ってください。

シニアになり、白髪が生えて白内障になるかもしれません。そんな老いた姿でも愛おしいと思ってください。

6、ペットがオムツ生活になっても見守ってください。

ペットが自分でトイレに行けなくなり、そこここで排泄するので、オムツ生活になるかもしれませんが、そのときも衛生的にお世話してください。

7、ペットが、夜鳴きをしても叩かないでください。

昼夜逆転になり、昼間は寝ていて、晩に何度も鳴いて起こすかもしれません。それは認知症などの病気なので、晩に起こされてたからといって叩かないでください。

8、ペットを撫でてください。それだけで嬉しいです。

ペットに愛情を伝えたいときは、撫でてくれるだけでいいのです。

9、ペットと飼い主の時間は有限です。だから傍らにいてください。

ペットは、ずっと一緒にいてくれると思いがちですが、長くても20年間しか一緒にいられないです。だからなるべく、時間を共有しましょう。

10、愛犬や愛猫が亡くなるとき、ハグして泣いてください。

ペットが亡くなるとき、なにもできません。でも、ハグして泣いてくれるだけで十分です。

ペットを飼いたいあなたは、上記のことを約束できますか。できない人は、ペットを飼わない方がいいですね。上記を読んで、ペットと暮らすことは、そんなにたいへんなのと思う人も、犬や猫と一緒に暮らすことは、やめた方がいいですね。

筆者は、夜中に何度もラッキーに起こされていました。そして、夜中にウンチをして何度も処理しました。オムツからオシッコが漏れて、夜中にラッキーを洗ったこともあります。そんなこともしてもラッキーとの生活はキラキラした思い出です。それでもかわいいラッキーでした。

ペットは、どんなときでも飼い主を裏切りません。嘘をつくこともありません。傍らにい来て飼い主のことを信じてくれるのです。

まとめ

亡くなる2カ月前のラッキー くまのぬいぐるみは湯たんぽ 撮影筆者
亡くなる2カ月前のラッキー くまのぬいぐるみは湯たんぽ 撮影筆者

部屋を掃除していて、ラッキーの毛が舞っているのを見つけるだけで、涙する日々を送っています。

いま、一緒に暮らしている犬や猫をどうぞ撫でてあげてください。そして、愛情を込めてハグしてあげてください。

その関係が永遠に続くように思っているかもしれませんが、残念ながら終わりは必ずきます。考えているより、意外に早いのです。

筆者は、ただたださみしいですが、それでもラッキーとの時間は筆者にとって宝物といえます。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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