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100円ショップのペット用おもちゃは経済的。でも、これを知らないと病気のリスクが?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

100円ショップでは、さまざまな種類のペット用品のおもちゃを売っています。ペットを飼うとフード代や病院代などお金がかかります。それで、100円ショップのおもちゃを選ぶという方もいるかもしれませんね。 一方、100円ショップのおもちゃに限らず、 おもちゃの安全性について知らないと病気のリスクもあります。今日は、ペットのおもちゃの危険性について考えましょう。

なぜ、ペットのおもちゃは、気をつけるべきか?

撮影筆者の知人 犬のおもちゃ
撮影筆者の知人 犬のおもちゃ

人の赤ちゃんは生後1-2歳までは、興味のあるものは、舐めたり、口に入れたりしてします。そのため、赤ちゃんの口に入れても安全で安心なものを選びますね。それと同じようにペットは、手足だけで遊ぶことができないので、口を使います。ですから、口に入れるということは、おもちゃんは食品と同じだと考える必要があるのです。

おもちゃの安全性を意識しない場合のリスクとは?

犬や猫は、いまや長寿になりました。口腔内のメラノーマや扁平上皮がんの子が増えています。私たちの動物病院に来る子たちの中に、ボール遊びが好きだった子で、口腔内がんになった子が多くいます。まずは、人の口腔内がんになる高いリスクを見てみましょう。もうひとつは、誤飲です。そのふたつについて考えましょうね。

人の口腔内がんになるハイリスクとは

・熱い食べ物

・辛い食べ物

・刺激の強い食べ物

・喫煙

・強いアルコール度数の飲酒

これらは、口腔の粘膜細胞を常に傷つけ、細胞の遺伝子(DNA)が、がん化しやすいためです。ペットは、もちろんタバコやお酒、刺激の強いものを食べませんが、口の中に入れるものが関係あるのです。難治性の口内炎やよだれに血が混じるなどの症状があれば、がんの可能性があるので、すぐに動物病院へ行ってくださいね。

ペットの口腔内がんのハイリスクとは

・適切でないおもちゃで遊ぶ

・飼い主の喫煙(犬が受動喫煙する)

・口腔内の衛生状態が悪い

などです。人と全く同じというわけではないですが、やはりよく似ています。

おもちゃによるペットの誤飲の事故

ペットはどうしてもおもちゃで遊ぶ際、口を使うので、噛みきってしまって、誤飲することがあります。症状としては、急に食べなくなる、吐く、または、吐きそうにしているが、吐けないなどがあります。そのような症状があれば、誤飲の可能性があるので、かかりつけ医に相談してくだださいね。胃の中に詰まって、胃切開する場合もありますので、おもちゃんの素材選びには気をつけましょうね。

人のおもちゃの安全性

一般社団法人 日本玩具協会のサイトから
一般社団法人 日本玩具協会のサイトから

人のおもちゃには、一般社団法人 日本玩具協会というものがあり、そこで、玩具安全基準(ST基準)を策定し、玩具安全マーク(STマーク)制度を創設しています。ST基準は、おもちゃの安全基準で、化学的安全性、機械的安全性、可燃安全性からなっています。

・化学的安全性の検査

おもちゃの材料に有害な物質が使われていないかを調べています。

厚生労働省が定める食品衛生法などを基に、鉛などの重金属の検査や、塩化ビニル樹脂でのフタル酸の検査などを行っています。

・ 機械的および物理的安全性の検査

おもちゃの形状や強度に関する検査をします。乳幼児の誤飲防止のための検査などを行っています。    

・可燃安全性の検査

「お面」「着せ替えドレス」「おもちゃのテント・家」「ぬいぐるみ」などについて、燃えやすい材料が使われていないかを調べています。

これらの検査に合格したものが、STマークがつけられています。

ペットのおもちゃの安全性

ペットのおもちゃには、このようなペットの玩具協会などもなく、安全性の基準は残念ながらないです。決して100円ショップのおもちゃだけ気をつけた方がいいというわけではありませんが、低価格のおもちゃは経済性を追求するあまり、その懸念、リスクが高まるというわけなのです。100円シップのおもちゃも安全性の高いものもあると思いますが、安全性に重点を置いて、ペットのおもちゃを選んでくださいね。

飼い主がおもちゃを選ぶときの注意点

・化学的安全性の検査

おもちゃの材料に有害な物質が使われていないか、気をつけましょう。人と同じように厚生労働省が定める食品衛生法などを基に、鉛などの重金属の検査や舐めると口が色をつく塗料などはよくないですね。

・ 機械的および物理的安全性

誤飲をしてしまうことがあるので、飲み込んでしますような小さいおもちゃは避けてくださいね。

・可燃安全性の検査

服などが燃えやすい素材でないか、しっかり見てくださいね。

撮影筆者の知人 おもちゃで遊ぶ犬
撮影筆者の知人 おもちゃで遊ぶ犬

人のおもちゃのような安全基準がないので、飼い主が、適切なおもちゃを選ぶことが大切です。おもちゃも口の中に入るものなので、食品と同じように考えていいのではないでしょうか。おもちゃの安全性に配慮しながら、犬と遊んであげてくださいね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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