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猫の顔に毛がない衝撃写真 人にも感染し治りにくく、野良猫の命を危険に晒す疾患とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

病院に来た飼い主から「外の子なので、連れて来られないので、写真を見てもらえますか?」といわれました。この写真の野良猫は疥癬です。痒くて自分で引っ掻いてしまい、顔や頭に毛がない皮膚病になっていました。疥癬は人にも感染します。感染すると激しい痒みを伴うので、このような猫を見たら、お世話の仕方を注意して治してあげましょう。

撮影筆者の知人 疥癬の猫 顔からなることが多い。
撮影筆者の知人 疥癬の猫 顔からなることが多い。

なぜ、野良猫が疥癬にかかると命を危険に晒すのか?

・激しい痒みで食欲が落ちます。

・激しく掻くので、傷ができて化膿して感染症を起こします。

・飼い猫なら、治療をしてもらえるが、治療をしないと上記のようになり、食べなくなり、命の危険が高まります。

飼い猫、飼い犬は大丈夫なの?

猫も犬も疥癬になります。

激しい痒みなので、動物病院に連れて行き適切な治療をすれば完治します。

動物の治療法

・イベルメクチン

・外用薬はイオウ剤

・痒みの強いときは、抗ヒスタミン剤

病原体

・イヌセンコウヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)は犬です。

・ネショウセンコウヒゼンダニ(Notoedres cati)は猫です。

これらのヒゼンダニは、人にも寄生することがあります。

感染経路

・直接感染

・抱っこしたりするときに、患部に触れると人に感染しています。

動物の症状

・イヌセンコウヒゼンダニの寄生部位は犬の場合は、全身に及びます。

・ネコショウセンコウヒゼンダニは猫の顔面や耳介に多数が寄生します 犬より初めは顔に限定して現れます。

・皮膚の肥厚や脱毛などもみられます。

・痂皮の形成、皺襞(ひだ状になった皮膚)の形成などの皮膚病変を起こします。

人の症状

・激しい痒みです。

・不眠になるほどの痒みです。

・皮膚を掻くことによって、外傷が生じて化膿します。

・疥癬の動物に接触したことを医師に伝えましょう。

疥癬の子の世話の仕方

・感染動物を隔離しましょう。

・感染動物に触れたら速やかに手洗いを行いましょう。

・動物のケージなどは常に清潔を保つことが必要です。

撮影筆者の知人 疥癬の猫
撮影筆者の知人 疥癬の猫

野良猫をお世話している人へ

野良猫は、なかなか触ることができないので、写真を撮ってかかりつけ医に見せて相談してください。野良猫をお世話している人は、この写真をしっかり覚えておいてくださいね。

正しい科学的知識がないと、野良猫を保護している人が、疥癬に感染します。一度、感染すると、難治性ですので気をつけていかないといけません。私たちは、猫も人も健康で過ごしてもらうことを願っています。初期に正しい病名がわかれば完治する病気です。知識をバージョンアップしながら、野良猫のお世話をしてあげてくださいね。

人と動物の共通感染症に関するガイドライン

疥癬とは 国立感染症研究所

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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