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「禁煙」はいつからがいいの? 新たな研究で「喫煙者の寿命は12年以上短くなる」ことがわかる

石田雅彦科学ジャーナリスト、編集者
(写真:イメージマート)

 タバコを吸うと病気になって死ぬこともあるが、どれくらいのリスクがあるのだろうか。そして、禁煙するとそのリスクはどれくらい少なくなるのだろうか。

禁煙を始めるのはどんな年齢からでも

 喫煙により世界では年間約870万人が死んでいるが、カナダやノルウェーの研究グループが新たに発表した論文によると、現在の喫煙者は非喫煙者に比べ、40歳から79歳までの生存期間が男性で13年、女性で12年短くなることがわかった(※)。また、40歳未満から始めた3年以上の禁煙は明らかに死亡リスクの低減に効果があるという。

 同研究グループは、1974年から2018年までの間に、20歳から79歳までを対象にした米国、英国、ノルウェー、カナダで行われた集団(コホート)調査を元に、非喫煙者と喫煙者、禁煙した喫煙者(禁煙期間は3年未満、3年から9年、10年以上)の死亡リスクについて比較した。対象期間は15年間、対象者は148万人となり、その期間の間に12万2697人が死亡した。

 年齢、学歴、飲酒、肥満などの変数を調整して解析したところ、現在の喫煙者は非喫煙者に比べ、死亡リスクは男性で2.7倍、女性で2.8倍高く(ハザード比)、前述した通り、喫煙者の生存期間が短くなっていることがわかった。

 また、禁煙した過去喫煙者は、男女ともに死亡リスクが低くなり(マイナス1.3倍)、3年未満の禁煙期間でも40歳未満の場合には明らかなリスク低下(女性で95%、男性で90%)があり、特に40歳以上でも40歳から49歳では男性で61%、女性で81%、50歳から59歳では男性で54%、女性で63%、リスクが低下することがわかった。

 同研究グループは、特に40歳までに禁煙すると循環器疾患、呼吸器疾患、がんなどによる死亡リスクを下げる効果があるが、3年未満の禁煙でも約5年、10年以上の禁煙では10年も寿命が延びて非喫煙者と同じくらいになるので、どんな年齢でも禁煙を始めることが重要と述べている。

※:Eo Rin Cho, et al., "Smoking Cessation and Short- and Longer-Term Mortality" NEJM Evidence, DOI: 10.1056/EVIDoa2300272, 8, February, 2024

科学ジャーナリスト、編集者

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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