「小池百合子版」東京都受動喫煙防止条例とは

五輪まで3年のイベントでインタビューを受ける小池都知事(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 東京都の小池百合子知事が9月8日の定例会見で、東京都の受動喫煙防止条例案を発表した。年度内に都議会へ提出して成立を目指す。2019年のラグビーW杯の開催までに施行するつもりだ、と言う。

 2019年のラグビーW杯や2020年の東京五輪に向け、IOC(国際オリンピック委員会)など国際的にもタバコ対策の強化が求められている中、なかなか前進しない国の態度に業を煮やした形だ。この9月下旬とされる臨時国会で厚生労働省と政府が目指す「受動喫煙防止強化(健康増進法の改正)」は、法整備を優先させて飲食店の面積などを盛り込まない「政令」にする案が濃厚になっている。

 ようするに、細かい規制基準は先送りにしよう、というわけだ。こうなった理由は、アルコールを提供するバーやスナック以外で30平方メートル以上の飲食店を原則禁煙とする厚労省案と150平方メートル以下の飲食店は「努力義務」にしようとする自民党案がどうしてもまとまりそうにないからだ。

30平方メートル以下のバーやスナックは特例

 今回発表された都の条例案によれば、敷地内全面禁煙(医療施設、小中高校など)、屋内完全禁煙(官公庁、老人福祉施設、大学、バス、タクシーなど)、原則屋内禁煙(飲食店や宿泊施設など。喫煙室を設置すれば可、30平方メートル以下の飲食店を除く)という区分けになり、先行して受動喫煙防止条例を策定している神奈川県や兵庫県と比べると、特例とする飲食店の面積や喫煙室を設置可能とする部分などでより厳しくなっている。

 また、面積を問わず全ての飲食店で喫煙室を設置しての禁煙規制とした厚生労働省の「叩き台」(2016年10月)とも少し異なった内容だ。罰則は、違反した喫煙者本人や施設管理者に5万円以下の過料となっており、神奈川県より厳しく兵庫県よりも緩やかなものとなっている。さらに条例の対象は、紙巻きタバコ、葉巻、そして加熱式電気タバコも含む。

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東京都の受動喫煙防止条例案とほかの条例(案)との比較。敷地内屋内全面禁煙の範囲、面積、罰則などに違いがあるが、先行自治体の事例を参考にしたことがわかる。おそらく小池都知事のブレーンには、前神奈川県知事の松沢しげふみ参議院議員や国立がん研究センター出身のタバコ問題研究者らがいるのだろう。記事の最後に詳しい違いの表を掲載している。

分煙設備費用をどうするか

 筆者に言わせれば、飲食店や宿泊施設、パチンコ店を含めた娯楽施設などは全面禁煙でいいと思う。その理由は、そもそも分煙では受動喫煙は防げないし、喫煙室などの分煙設備設置に費用もかかるからだ。2018年の平昌五輪に向けて受動喫煙防止条例を策定した韓国では、こうした設備費用の補助は一切ない。そのため飲食店などは仕方なく屋内完全禁煙になっていて、喫煙者はいちいち店の外へ出てタバコを吸っている。

 日本には分煙設備設置に事業主が申請できる上限200万円までの厚生労働省の助成金制度がある。また、東京都にも似たような補助金制度(上限300万円)があるが、こちらは「外国人旅行者の受け入れ」をする宿泊施設や飲食店が対象だ。飲食コンサルタントや設置業者などがこのビジネスに参入しているケースも多く、JTもこれら分煙事業を支援している。喫煙室を設置する分煙を許容する条例案を出した東京都は、これまでの補助金制度を外国人旅行者対象事業主から広げるのだろうか。

 小池都知事の「与党」である都民ファーストの会と公明党は、先に「子どもを受動喫煙から守る条例(案)」を発表し、9月20日から予定されている都議会へ提出する。こちらのほうは子どもを中心に考えた規制案だが、家庭内や自動車内を対象にした内容になっている。今回の都の条例案では家庭は規制対象から除かれているが、このあたりの整合性はどうするのだろうか。

 また、都条例案にはパチンコ店やマージャン店といった娯楽施設に関する記述がない。神奈川県の条例では、パチンコ店などの風営法の対象施設は特例で努力義務になっている。このあたりも議論が出てくるところだろう。

 東京都は、この条例案に対するパブリックコメントを募集している。期間は2017年10月6日までだ。

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