ヤマカガシなど「危険生物」の見分け方

ヤマカガシ(地域や年齢などで色や柄が変化する)(ペイレスイメージズ/アフロ)

 ヒアリやアカカミアリについて、報道で詳細が知らされるようになった。子どもも親御さんも、これらのアリには用心していることだろう。

 だが、夏休みの子どもにとって危険な生物はまだたくさんいる。先日も兵庫県でヤマカガシに咬まれた10歳の少年が一時、意識不明の重体になったことがニュースになった。

ヘビには手を出さない

 日本ではマムシが毒蛇ということはよく知られている。マムシに咬まれる事故は年間3000件ほど発生し、0.1%程度の死亡事例があるようだ。また、ヘビではなんといっても宮古島と石垣島以外の南西諸島に猛毒のハブがいる。沖縄県によれば、2016年のハブに咬まれた人は56人だったそうだ。

 兵庫県で咬まれた少年のようにヤマカガシも毒を持つ。頭の後ろ背側に毒液を出す頸腺があり、この液が目に入れば角膜潰瘍などを引き起こす。また、上顎の奥にも毒液を出す歯がある(※1)。これらのヘビ毒には、輸血や抗毒素血清による治療が必要となる。下のイラストは、島根県庁自然環境課のHPから転載したものだ。ヤマカガシの色や柄は地域差などが大きい。ヘビを見かけたら、捕まえようとしたり手を出すのはやめておいたほうがいいだろう。

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ゴケグモ類は外来種

 厄介なのは、やはり我々の身近にいる昆虫などの節足動物だろう。ヒアリやアカカミアリも危険だが、いわゆるヤブカ、ヒトスジシマカもデング熱やジカ熱(ジカウイルス感染症)などの感染症を媒介する危険な昆虫だ。海岸や川辺を飛んでいるアブもよく人を刺す。

 スズメバチやアシナガバチも危険だが、巣に近づき過ぎたり刺激したりしなければ攻撃してくることは少ない。ムカデも咬まれると激しく痛む。はれもひどい。アナフィラキシーショックを引き起こすこともあるので、これらの昆虫に刺されたり咬まれたら、すぐに病院へ行って医師の診断を受けることが必要だ。

 外来種であるセアカゴケグモは、報道などでも有名だ。1990年代の半ば頃にこれらのゴケグモ類が外来種として日本へ侵入してきた。セアカゴケグモ(メスのみとされる)に咬まれると重症化することもあり、ハイイロゴケグモも同様に咬まれることで痛みや嘔吐などの症状を引き起こす(※2)。

 これらゴケグモ類は全て毒グモで、このほかにクロゴケグモというゴケグモの仲間も岩国などの在日米軍基地から日本に侵入している。セアカゴケグモとクロゴケグモはいかにも毒グモらしい赤い警戒色を持っているが、ハイイロゴケグモは一見すると地味だから注意したい。

 また、毒を持つクモには、カバキコマチグモという在来種もいる。日本におけるクモ被害の多くは、このカバキコマチグモらしい(※3)。下の写真は鹿児島の教育者らによる解説論文(※4)から引用した。先入観から教育者の側が、過度に危険視することを戒めている。

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自然に入るときは肌を露出しない

 マダニは我々の近くでごく普通に見られる節足動物だが、日本紅斑熱やダニ媒介性脳炎などの感染症を媒介することでも知られている。これら感染症の中でもダニ媒介性脳炎やマダニ媒介SFTS(重症熱性血小板減少症候群、Sever fever with thrombocytopenia syndrome)には要注意だ。

 国立感染症研究所によれば、ダニ媒介性脳炎の潜伏期間は7 ~14日で、まずインフルエンザのような発熱、頭痛、筋肉痛が1週間程度続くという第一期の症状が出る。この症状は、1週間より短かったり、症状がない場合もあるようだ。熱がひいてから2~3日間は症状がなくなるが、その後、痙攣、眩暈、知覚異常などの中枢神経系症状を引き起こす第二期となる。脳炎や髄膜脳炎髄膜炎となり、感覚障害などの後遺症が残る場合もあり(35~60%)、致死率は1~5%とされている。

 また、マダニ媒介SFTSの潜伏期間は6日~2週間。その後、発熱や食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器系への悪影響などを引き起こす。頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などが起きることもあり、致死率は6.3~30%だそうだ。これらの感染症はウイルスによるもので、ネズミやネコに感染する場合もある。2016年には、SFTSウイルスに感染した野良ネコに噛まれた50代の女性が、SFTSを発症して亡くなる、という事故もあった。

海や川にも危険生物が

 海にも危険生物はいる。オニダルマオコゼ、ミノカサゴ、ゴンズイといった魚類も恐ろしい。こいつらは、毒性を持ったタンパク質をトゲなどを使って刺すタイプが多く、オニダルマオコゼの場合、死亡するケースもある。

 タコの仲間にも、フグ毒と同じテトロドトキシンを唾液に持つヒョウモンダコがいるし、沖縄にはエラブフミヘビという超強力な毒を持つウミヘビがいる。ただ、エラブウミヘビはおとなしく、素手で捕まえ、燻製にして食べるほどで、咬まれたという被害はほとんどないようだ。

 巻き貝にも、イモガイという刺毒を持つものがいる。これはペプチド毒で毒性の種類は多い。イモガイの仲間で沖縄のアンボイナガイの毒は地球上最凶の強さを持ち、貝殻がきれいなのでうっかり手を出し、刺されてしまう事故も多い(※5)。

 また、同じ猛毒を持つイモガイの仲間に、タガヤサンミナシガイという貝もいて、これは徳島県でも見つかっている。万が一にも刺されたら、すぐに毒を口で吸い出しながら医療機関で医師の診断を受けなければならない。ただし、イモガイ類の毒は口で吸い出してもいいが、口に入れるだけで危険な毒性を持つ生物もいるので注意したい。

 下の図は、イモガイの仲間が持つ捕食器官の図(※6)だが、一見するとタカラガイのような巻き貝で見間違えやすい。口と吻の中から下の図のような毒針(歯舌歯)を出し、獲物に突き刺して殺してから口吻全体で包み込むように捕食する。毒針の先には返しがついていて獲物を逃さない。

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 サンゴを食い荒らすオニヒトデもかなり凶悪で、ダイバーが刺される事故が頻発している。イソギンチャクも毒を持ち、沖縄などにいるウンバチイソギンチャクの毒素も強力だ。またウニも危険で、ウニの棘は刺されると先端が折れ、皮膚の中に残るなどして厄介だ。

 海水浴でよく刺されるのがクラゲ。ハブクラゲ、アンドングラゲ、カツオノエボシなどがいるが、日本沿岸の海水浴場で土用波の後、お盆過ぎぐらいから出現するのがアンドンクラゲだ。筆者もボディボードをやってるとき、刺胞という毒矢のようなもので帯状に刺された経験があるが、3ヶ月ぐらいミミズ腫れのような刺し跡と疼痛が残った。

 淡水魚ではアカザやギギといったナマズ類も毒が仕込まれた棘を持つ。刺されると傷むが、棘を抜いてしばらくすると治まるようだ。これらの淡水魚は環境悪化もあり、個体数は著しく減っている。また両生類には、フグ毒と同じテトロドトキシンを持つアカハライモリがいる。

 こうした水棲の毒生物の多くは、その毒素の研究があまり進んでいない。タンパク質系の毒素というだけでも多種多様なものがあり、治療薬の開発もコスト面などから立ち遅れているからだ。

大人と一緒に正しく触れ合おう

 ただ、これらの危険生物に対し、あまり臆病になる必要はないだろう。むしろ、無闇に恐がり、自然に触れなくなるほうが子どもにとっては好ましくない。

 例えば、毒グモの一種であるカバキコマチグモは、イネ科の植物の葉を丸めて巣を作るので、そうした植物の葉が丸まっていれば、中にカバキコマチグモがいることがわかる。また、マダニに咬まれないために、虫除け剤を衣服に散布したり半ズボンなど肌を露出した服装で野原へ足を踏み入れないようにすれば対処できるだろう。下は東京都健康安全研究センターのマダニよけの服装を示したポスターだ。

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 こうした知識をあらかじめ子どもが持っているはずはない。親御さんや保護者、引率者などが事前に危険生物を含めた天候急変などの対処対応について学んでおき、子どもに付き添いつつ自然に接せられるようにする(※7)。子どもにとっては楽しい夏休みだ。正しい知識を持って、海や山へ出かけてほしい。

※1:小川弘俊、大村豊、大橋大造、入谷勇夫、加藤正隆、待木雄一、「ヤマカガシ咬傷にて死亡した1例および本邦報告例の検討」、日本実用外科学会誌、Vol.47、No.2、1986年

※2:大利昌久、新海栄一、池田博明、「日本へのゴケグモ類の侵入」、日本衛生動物学会「衛生動物」Vol.47、No.2、111-119、1996年

※3:石川博康、熊谷恒良、小川俊一、「クモ刺咬症の3例」、西日本皮膚科、Vol.61、No.2、177-180、1999年

※4:鮫島正道、西涼香、前田亜梨沙、萩原朋美、井出元志織、中村麻理子、「鹿児島に生息する毒蜘蛛コマチグモ類の観察:身近な生きものに強い幼児教育者養成」、鹿児島大学リポジトリ「Nature of Kagoshima」第40巻、263-268、2014年

※5:新城安哲、大嶺稔、吉葉繁雄、「アンボイナ刺症の1症例とイモガイ刺症の問題点」、沖縄県衛生環境研究所報、第30号、1996年

※6:吉葉繁雄、「イモガイ刺症特にアンボイナガイ 刺症対策としての緊縛の効果」、日衛誌(Jpn. J. Hyg.)第39号、第2号、1984年

※7:粕谷英一、「野外調査における事故防止のために」、日本生態学会誌、Vol.51、No.1、2001年