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全日即完売の大相撲春場所 岩手県出身の元栃乃花・二十山親方が語る今場所の見どころと被災地への思い

飯塚さきスポーツライター
今場所新たに作ったパノラマ新聞を手にする二十山親方(写真:筆者撮影)

まだ肌寒い大阪の地に、華やかな春の風が吹く。3月恒例の大相撲春場所が、昨日初日を迎えた。多くのお客さんが足を運び、熱戦を見守る。今回は、昨年の5月頃から準備に取り掛かり運営に携わってきたという、大阪場所担当の二十山親方(元小結・栃乃花)にお会いし、今場所の見どころなどを伺った。

チケットは発売日に完売! 運営担当も笑顔

先場所優勝した横綱・照ノ富士を筆頭に、新大関として場所を迎えた琴ノ若、飛ぶ鳥を落とす勢いの新生・大の里など、注目どころの多い今場所。15日間のチケットは、発売日にあっという間に売れてしまったという。

「初日に売り切れるのは久しぶりでした。稀勢の里が優勝して新横綱だった場所が大阪だったんですが、そのとき以来ですね。ありがたかったです」

それでもなお、場所前には関取との写真撮影会を開催するなど、場所のPRを兼ねてイベントも打った。コロナ禍にはできなかったことが解禁され、大阪の街にも活気が戻る。

また、連日詰めかけるお客さんのために、会場でもさまざまな工夫をしているという。

「大阪の会場は土俵が2階にあって、階段なども少しわかりにくいので、迷わないように張り紙を多く掲示するなど気を配りました。我々も十数年来ていますが、いまだにわからなくなるのでね(笑)。それと、今年初めてパノラマ新聞を作りました。館内マップもありますし、大阪場所担当親方やご当地力士の話などを載せて、地元をアピールしています」

ご当地力士である宇良と豪ノ山のイラストが表紙のパノラマ新聞。広げてみるとその迫力に驚くだろう。会場で配布されているので、ぜひ手に取って見てみてほしい。

被災地への思い 「大相撲は人を元気づけてくれる」

二十山親方が所属する春日野部屋は、関取の碧山をはじめ、多くの有望力士がひしめき合う。今場所の部屋の力士たちの様子も聞いた。

「碧山は先場所ケガで休んでしまいましたが、徐々に稽古もできるようになってきました。幕下以下では、塚原が幕下上位で今場所頑張ってくれれば、部屋全体も盛り上がるでしょう。清見潟親方(元関脇・栃煌山)が、番付発表後から毎日胸を出してくれていて、3~4人転がしては『体痛い』と言っていましたから(笑)、そういった日々の積み重ねの成果を出してほしいですね」

また、本日3月11日は、13年前に東日本大震災が発生した日。岩手県出身の二十山親方も、震災と復興に思いを馳せる。

「東日本大震災当時、私は大阪にいたのでテレビで知ったわけですが、姉も被災し地元は大変でした。そして今年の1月に能登の地震が発生したとき、当時と同じことを思いましたね。避難所で寒い思いをしながらの生活は、体も心も苦しくなってくるものです。そんなときにこそ、地元力士の活躍や、テレビで相撲を見ることで、そのときだけは少しでも元気になってもらいたい。そんな思いで、我々は今場所も頑張っていきたいと思っています」

二十山親方は「昔から、大相撲には見る人を元気にさせる何かがあると思うんです」と、静かに、しかし力強く語ってくださった。今場所はどんなドラマが待っているだろうか。力士たちの奮闘が、被災地に、そして浪速に、大きな春風を起こす。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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