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元関脇・琴勇輝の北陣親方、同部屋の琴ノ若に大きな期待「前に出る相撲で大関へ」

飯塚さきスポーツライター
大相撲5月場所2日目の「親方トークイベント」に登壇した北陣親方(写真:筆者撮影)

大相撲5月場所は前半戦の真っ只中。両国国技館内の相撲博物館では、連日親方衆によるトークイベントが開催されている。2日目の同イベントに登壇したのは、元関脇・琴勇輝の北陣親方。高いトーク力を誇り、テレビやラジオの解説でも活躍する親方は、この日も笑いを交えながらファンからの質問にテンポよく回答し、終始会場を沸かせていた。

現役時代の思い出「応援のおかげで強くなれた」

「明日から使えない話」と自虐しながら、ファンの素朴な質問に丁寧に答えていく北陣親方。

「関取が締める締め込みはシルクでできているので洗えません。汚れたらタオルではたく程度。稽古まわしは、自分はいつもガンガン洗っていました。新品のときは柔軟剤を使うと柔らかくなっていいですよ。って言っても誰のためにもならないですね(笑)」

「現役時代の仕切りのルーティン(立ち合い前に「ホウ!」と気合入れの声を出す)は、アマチュアの頃からやっていました。声を出すとお腹に力が入るんです。そういうリズムを大事にしていました」

ファンからの要望で、現役時代のルーティンである気合の声出しを披露(写真:筆者撮影)
ファンからの要望で、現役時代のルーティンである気合の声出しを披露(写真:筆者撮影)

「左膝のケガで一時は本当にもう辞めようと思いました。でも、母が土俵に立つ姿をもう一度見たいと言ったこと、上京するとき故郷の人たちが船で盛大に送り出してくれたことを思い出して、もう一度相撲に向き合い、力士としての第2章を始めることができました。周囲の応援のおかげで強くなれたと思っています」

親方の話術の魔法で、イベントの45分間はあっという間に終了。いつまでも聞いていたかったので、終了後に親方を捕まえてさらに話を伺った。

琴ノ若の武器は「体の柔らかさと気持ちの強さ」

――トークイベントお疲れ様でした!琴ノ若関のことを伺いたいのですが、部屋での稽古の様子や場所前の調子はいかがでしたか。

「部屋の関取3人のなかでは、ケガがないこともあり、若が一番いい稽古ができていました。自分も同世代としてやり合いたかったなと思うくらい。大きいケガさえなければ十分戦っていけるので、次の大関といわれている面々のなかに割って入っていってほしいです」

――いつも冷静なイメージですが、ご本人は「実は内に秘めた闘志がある」とおっしゃっていました。親方から見てもそうお感じになられますか。

「本当にそうですね。稽古場で、自分より後輩の琴勝峰に負けると意地を出してもう一丁やるし、場所中負けると部屋に帰ってきて一人で四股踏んでるんですよ。その姿を見て、若い衆は奮い立たないといけないと思いますね。三役の力士がこれだけやっているんだなって」

――気持ちの強さに加え、体の大きさや柔らかさなども持ち合わせています。

「そうなんです。土俵際も脚の長さと柔らかさで残せる。加えて、いままでは受けるような相撲でしたが、自分から攻める力もついてきました。前に出る力は先代(祖父で元横綱の琴櫻)、体の柔らかさは師匠(父で元関脇の琴ノ若)譲りでしょうね」

――今年中に大関の地位も見えてくるでしょうか。

「それはもちろん。ひとつ懸念しているのが、リサーチ力の高い子だからこそ、考えすぎる節があること。もう終わった負けにとらわれすぎないで、15日間をもっと大きな視野で捉えられるようになれば、負けても切り替えていけると思います。今場所は勝ち続けているので、この流れに乗っていってほしいですね。力を出し切る稽古ができているので、自信をもって臨んでほしいです」

北陣親方もここまで太鼓判を押す琴ノ若は、4日目を終えて好調の3勝1敗。2日目には大関・貴景勝の馬力を止め、我慢して大きな白星をもぎ取った。もって生まれた才能はもちろん、本人が積み重ねてきたここまでの努力と高い思考力も大いに武器にして、今場所の主役になれるか。注目が高まる。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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