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予想は「朝乃山の復活優勝!」 元横綱・白鵬の宮城野親方に聞く大相撲5月場所の展望

飯塚さきスポーツライター
優勝予想はずばり「朝乃山」と言う宮城野親方(写真:日本相撲協会提供)

大盛況の5月場所初日 チケットは完売

大相撲5月場所がいよいよ幕を開けた。日本相撲協会広報部によると、初日の時点で全日程のチケットは完売。この日も「満員御礼」の垂れ幕が下がり、館内は活気にあふれていた。コロナ禍で横綱に昇進し、4場所ぶりに出場した横綱・照ノ富士は、本場所の土俵入りで初めて観客から「よいしょ!」の掛け声をかけられており、その光景だけで筆者は感涙したほどだ。ほかにも、先場所優勝し大関昇進がかかる霧馬山や、再入幕で土俵に臨む元大関の朝乃山など、見どころは多い。そんな5月場所の行方を、元横綱・白鵬の宮城野親方に占っていただいた。

幕内・北青鵬をはじめ、小兵で人気力士の炎鵬、1場所で関取昇進を果たした19歳の落合など、話題の多い宮城野部屋。部屋の力士たちの調子を伺うと、「非常にいい稽古ができています」と親方も胸を張る。

「場所前は、九重、大島、高砂、鳴戸、押尾川、時津風部屋が出稽古に来てくれました。特に、川副、向中野の幕下上位2人が非常にいい稽古をしていました。川副は今場所勝ち越せば関取。向中野も大勝ちすればチャンスがあるので、そうしたら関取は5人になりますから、楽しみですね」

部屋の若い力も、今場所の土俵を彩る。

横綱・照ノ富士の復活 霧馬山は大関昇進か

幕内の展望はどうだろうか。大関昇進がかかる霧馬山にエールを送りつつ、4場所ぶりに出場の照ノ富士については同じ横綱として高い共感を得ながら、次のように話した。

「やっぱり今場所一番の注目は霧馬山。ここまで11番(1月場所)、12番(3月場所)と勢いがついてきていますからね。大関昇進のためには今場所10番勝つことが必要です。今回は横綱(照ノ富士)が出るので、横綱を倒して優勝しようという気持ちでいるでしょう。ひとつ心配なのは、まだこれといって自分の型がないこと。まわしを取っていきたいのか、突き離していきたいのか。逆に言えば何でもできる器用な力士ではあるんですが、そうすると怖いのが朝乃山なんです。身長・体重もあるし、いま幕の内で一番しっかりした型があると、自分が対戦したなかでも思います。元大関とはいえ、幕内に戻って来るまでに1~2年間のブランクがあったわけですから、霧馬山にはここで強い気持ちをもって臨んでほしい。照ノ富士も、4場所ぶりの出場ですからね。なかなか難しい部分はあります。1、2場所の休場明けなら場所の途中で休む選択肢もあるけれど、今場所中は厳しい。休むなら進退の話になってしまいます。これが横綱の宿命です。でも、今回出稽古や巡業でしっかり稽古したと聞いていますから、感覚をつかんだのかなと思いますね。勝負は前半でしょう。最初は地に足がつかない感覚があると思いますが、そこでひとつひとつ勝っていけば感覚は戻っていくだろうし、白星はいい薬ですから」

では、こうしたことを踏まえて、親方の優勝予想はどうだろうか。尋ねると、即答でこう返ってきた。

「朝乃山ですよ。なんといっても型がある。自分の形になったら絶対勝つからね。自分の型に持ち込むためには圧力やスピードが必要なんだけど、朝乃山は体が大きくて自分の形になるのが早いから、勝ち星につながるんです。しかも、いまは番付が幕の内下位なので、前半戦特に勝っていくでしょう」

併せて、「霧馬山も、きっと10番勝って大関になります」ときっぱり。元横綱の言葉は重く、信ぴょう性も高い。朝乃山は初日に万全の寄りでしっかり白星発進を決め、霧馬山も翠富士に攻め込まれながらもうまくいなして白星をつかんでいる。

打ち出し後に花道で再会した際、宮城野親方は「朝乃山、やっぱりよかったでしょ」としたり顔を見せた。まだまだ場所は始まったばかりだが、ここまで読んだ読者の皆さんも、筆者と同様、朝乃山の復活優勝が見えてきてしまったのではないだろうか。それを阻止する力士は果たして――?

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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