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大阪出身、元関脇・勢に聞く土俵人生 6月4日の断髪式では「歌って、髷を楽しく送り出したい」

飯塚さきスポーツライター
6月に断髪式を控える元関脇・勢の春日山親方(写真:日本相撲協会提供)

195cmの高身長を生かし、横綱・白鵬、鶴竜らにも対抗した元関脇・勢。組んでよし離れてよしの器用さと、四股名の通りの「勢い」をもった、華のある力士として人気を博した。土俵を降りれば明るく気さくで、相撲甚句や演歌など、その美声は角界一といえるだろう。2021年5月場所をもって引退し、春日山を襲名。現在は、伊勢ノ海部屋の部屋付き親方として、また社会貢献部の職務をこなしており、いよいよ6月4日(日)に引退相撲を行う。そんな大阪出身の春日山親方に、大阪場所で話を伺った。

悔いのない土俵人生「最後に歌いたい」

――あらためて、およそ17年間の土俵人生お疲れさまでした。引退の際はどんな心境でしたか。

「やり切りましたね、自分なりに。さみしさや悔いはありません。最後にそういう気持ちになれたことは幸せです。師匠にも『もう頑張ったし、休んでいいんじゃないか』と言っていただいたことで、そうか、それだけ一生懸命やってきたんだなと思えました。ここまでやってこられたので、力士の体の一部である髷を、いままでありがとうという気持ちで楽しく送り出したいですね」

――現在大阪場所の真っ最中。大阪出身の親方はどんな思い入れがあるでしょうか。

「現役時代は、大阪のお客さんの声援が特に力になっていましたね。仕切っているときに土俵が揺れるんです。それが大阪の皆さんのパワー。勝ち負けではなく、たくさんの応援をいただいてきたことが何よりの思い出です。辞めてからも、館内を歩いていると声をかけていただけるし、変わらず接していただけることが本当にうれしいです」

――いよいよ6月4日は断髪式です。どんな内容になりそうですか。

「僕は歌おうと思います。ご挨拶をした後、最後に1曲、感謝を込めて歌いたい。曲はまだ決めていませんが、足を運んでいただけるお客さんに喜んでもらえたらと思います」

――髪型は?

「いままで長かったので、短めがいいです。短くおしゃれに、清潔感と色気のある髪型にしたいですね。反町隆史風かな?(笑)」

断髪式は前向きな「次のステージ」

――土俵人生に悔いはないとのこと。髷に対する思いも同じでしょうか。

「本当に、ない!もうやり切ったんでしょうね全部。さみしい気持ちはなく、次のステージに向かう楽しみのほうが大きいんですよ。この髷がまた次に生まれ変わる。すごく前向きな気持ちです」

――現在は親方として、どんな日々を送っていますか。

「うちの部屋(伊勢ノ海部屋)には親方衆が7人いるので、自分の役割は、挨拶することと稽古場でまわしを締めて胸を出すことだと思って、その役割を一生懸命やっています。とにかく、お願いされたことを精一杯やるだけですね。場内警備の仕事もだんだん慣れてきました」

――溜まり席でお相撲さんとぶつかってケガをされたお客さんをひょいと持ち上げて運んだ場面もありましたね。頼もしかったです。

「審判の親方に『勢、いけるか』と言われて、土俵の進行を止めたくなかったので、パッとその場の判断で担ぎました。実は腰をひねって数日痛かったんだけど、いい仕事したかなと思っています。すでに何回かお客さんを運んでいて、迷子の対応もしたし、なかなかうれしいですよ。頭で考えるよりも現場で体を動かしているほうが好きなので、自分に合っているかなと思います」

――これからも、人が好きで明るい親方らしくご活躍されてください。

「ありがとうございます。これからもやれることを精一杯やりたい。挨拶や稽古だけに限らず、ここに行ってくれ、歌ってくれと言われたら、喜んで全力でやっていきたいと思っています」

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スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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