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若隆景・若元春の師匠、荒汐親方が語る初場所の見どころと注目力士 トークイベントに登壇

飯塚さきスポーツライター
イベント終了後、インタビューに応えていただいた荒汐親方(写真:日本相撲協会提供)

両国国技館に声援が戻り、連日盛況の大相撲初場所。館内の相撲博物館では、「親方トークイベント」が毎日行われている(観覧募集はすでに終了)。初日を担当したのは、初場所で兄弟同時三役となった若隆景・若元春兄弟らを率いる荒汐親方(元幕内・蒼国来)。いま最も勢いのある部屋と言っても過言ではない荒汐部屋の師匠として、角界をどう見ているのか。指導方針や弟子への期待、そして今場所の展望について親方に伺った。

弟子へのエールと角界発展への尽力

大相撲初場所初日の親方トークイベントに登場した荒汐親方。いつもの柔和な笑顔で終始和やかに進行したこの日、自身のこれまでの歩みや弟子たちへの期待を口にした。部屋頭の関脇・若隆景について、「大関というのは大変な地位」と慮りながらも「小さな体で周囲に研究もされてきている。おっつけも前に出る力も十分にあるので、それ以外のことにも取り組んで、大関を目指してほしい」とエールを送った。

また、自身が外国出身であることを強みに、今後は海外に向けても相撲の魅力をアピールしていきたいと語る。荒汐部屋は稽古場がガラス張りになっており、通りがかりの人が稽古の様子を外から見られるため、時には外国人観光客が40~50人集まるという。

そんな親方の考える相撲の魅力は、いくら勉強しても終わりがないこと。体重制限がなく、番付社会でありながらも下の力士がいい相撲を取ることもある。「今場所は特にみんなにチャンスがある。ワクワクして見ています」と、笑顔で話した。

にこやかにトークイベントに登壇する荒汐親方(写真:筆者撮影)
にこやかにトークイベントに登壇する荒汐親方(写真:筆者撮影)

注目力士はずばり誰?

イベント終了後、親方に話を伺った。

――2回目のトークイベントはいかがでしたか。

「こんなに人が集まってくれるとは思っていなかったので、ありがたかったですね。やっと規制が緩和されてきたので、こういう機会がもっと増えてきたらいいと思います」

――若隆景関・若元春関の昨年1年間はいかがでしたか。

「よく頑張ったと思います。でも去年は去年。今年はできれば去年より頑張ってほしいなと思っています」

――親方はどんな指導をされていますか。

「ただ稽古をやらせるだけじゃなくて、筋トレや休養を含め試しながら取り組んでいるところです。これからはもっと細かく、この力士はどこを鍛えたらいいかと、考えながら変えていこうと思っています。力士たちには、できるだけ事前に稽古やトレーニングスケジュールを伝えて、それを頭に入れて行動してもらっています」

――内モンゴルではボクシングやレスリングのトップ選手として活躍していた親方。スポーツ科学の知見も取り入れているのですね。

「もちろん稽古は大事だけど、それ以外のこともしないといけないというモードにさせることも必要なのかなと。内モンゴルの先輩やクラスメイトもいるので、他競技の経験者の話を聞いたり、普段からスポーツニュースをよく見たりしているんです。トレーニング方法が違っても、精神面の話はどの競技も同じかなと思うので、勉強になります」

――トークイベントでは明言されませんでしたが、あえて挙げるなら注目力士はいますか。

「今場所は、上位の若手のなかで誰が一歩リードするか。それが今年の角界を変えていくでしょう。霧馬山はうちに出稽古によく来たし、前向きに稽古していますね。化ける可能性があるんじゃないかと思う瞬間があるんです。いままでは少し波があったけど、最近は真剣な顔をしているので」

――昨年末、高安関も霧馬山関の名前を挙げていました。

「そうですか。いや~私もね、霧馬山は…って、もう言っちゃってるじゃないですか(笑)。さっき記者に聞かれても絶対言わなかったのに。まあでも、現役で戦っている人が言うならきっとそうなんじゃないですか。上位は結構うちに出稽古に来ていたけど、そのなかでも霧馬山は違うなと感じた瞬間があったんです。この世界は、(高い番付や優勝が)近づいてくると、だんだんオーラが出てきます。うちの若隆景もそうなんだけど、霧馬山もかなりそのオーラが出ていると思います」

――Yahoo!ニュース独占コメント、ありがとうございます(笑)。最後にずばり、今場所の見どころを教えてください。

「強い気持ちをもった力士が優勝します。だからこそ一瞬の迷いが命取りになる。弟子たちには、毎日稽古をして物事を前向きに考えてと伝えています。どの力士も、気持ちを強くもってほしいですね」

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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